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名誉毀損は、第一次的に刑法によって定められています。すなわち、刑法230条は、以下の条文をおいて名誉を毀損する行為を禁圧しています。

 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀き損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。

刑法第三十四章 名誉に対する罪
(名誉毀き損) 第二百三十条

この章の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

2 告訴をすることができる者が天皇、皇后、太皇太后、皇太后又は皇嗣であるときは内閣総理大臣が、外国の君主又は大統領であるときはその国の代表者がそれぞれ代わって告訴を行う。

刑法第三十四章 名誉に対する罪
(親告罪) 第二百三十二条

名誉毀損の性質と判断基準

最高裁判所は、「名誉を毀損するとは、人の社会的評価を傷つけることに外ならない」(最高裁昭和31年7月20日第二小法廷判決・民集10巻8号1059頁)と判示しています。

最高裁判所は、「本件各記事の投稿が債権者の名誉を毀損し,その社会的評価を低下させたといえるかどうかは,一般の閲覧者の普通の注意と読み方を基準として判断すべきである」旨判示しています(最高裁昭和31年7月20日第二小法廷判決・民集10巻8号1059頁,最高裁平成24年3月23日第二小法廷判決・裁判集民事240号149頁参照)。

公共性、公益性、真実性による違法性阻却

 前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。

2 前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。

3 前条第一項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。

刑法第三十四章 名誉に対する罪
(公共の利害に関する場合の特例) 第二百三十条の二

もっとも,刑法は名誉毀損について違法性阻却事由を定めています。そして、当該規定は民事上も適用されると考えられています。

すなわち、他人の社会的評価を低下させる記事の投稿であっても,その行為が公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら公益を図ることにあった場合に,摘示された事実の重要な部分が真実であるときには,行為は違法性が阻却されることになります(最高裁昭和41年6月23日第一小法廷判決・民集20巻5号1118頁,最高裁昭和58年10月20日第一小法廷判決・裁判集民事140号117頁参照)。

論評の違法性阻却事由

また,摘示事実を前提とする意見ないし論評の表明としてされた記事の投稿についても,その行為が公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら公益を図ることにあった場合に,意見ないし論評の前提としている事実の重要な部分が真実であり,人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評の域を逸脱したものでないときはその違法性が阻却されるものというべきである(最高裁平成9年9月9日第三小法廷判決・民集51巻8号3804頁参照)。

法的見解の表明は事実の摘示であるのか論評であるのか

平成15年7月31日最高裁判所判決・民集第58巻5号1615頁は、名誉毀損の成否が問題となっている法的な見解の表明は,判決等により裁判所が判断を示すことができる事項に係るものであっても,事実を摘示するものとはいえず,意見ないし論評の表明に当たると判断しています。

…証拠等による証明になじまない物事の価値,善悪,優劣についての批評や論議などは,意見ないし論評
の表明に属するというべきである。…

…上記の見地に立って検討するに,法的な見解の正当性それ自体は,証明の対象とはなり得ないものであり,法的な見解の表明が証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項ということができないことは明らかであるから,法的な見解の表明は,事実を摘示するものではなく,意見ないし論評の表明の範ちゅうに属するものというべきである。

また,前述のとおり,事実を摘示しての名誉毀損と意見ないし論評による名誉毀損とで不法行為責任の成否に関する要件を異にし,意見ないし論評については,その内容の正当性や合理性を特に問うことなく,人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限り,名誉毀損の不法行為が成立しないものとされているのは,意見ないし論評を表明する自由が民主主義社会に不可欠な表現の自由の根幹を構成するものであることを考慮し,これを手厚く保障する趣旨によるものである。

そして,裁判所が判決等により判断を示すことができる事項であるかどうかは,上記の判別に関係しないから,裁判所が具体的な紛争の解決のために当該法的な見解の正当性について公権的判断を示すことがあるからといって,そのことを理由に,法的な見解の表明が事実の摘示ないしそれに類するものに当たると解することはできない。

したがって,一般的に,法的な見解の表明には,その前提として,上記特定の事項を明示的又は黙示的に主張するものと解されるため事実の摘示を含むものというべき場合があることは否定し得ないが,【要旨】法的な見解の表明それ自体は,それが判決等により裁判所が判断を示すことができる事項に係るものであっても,そのことを理由に事実を摘示するものとはいえず,意見ないし論評の表明に当たるものというべきである。

平成15年7月31日最高裁判所判決・民集第58巻5号1615頁

名誉毀損に関する記事

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