東京地判令和3年7月9日・ウェストロー掲載(文献番号2021WLJPCA07098009)は、ハイパーリンクそれ自体によるプライバシー権侵害を肯定しました。また、発信者情報開示を命じる仮処分命令にしたがわず発信者情報を開示しなかったとしても不法行為に当たらないと判示しTwitter社の責任を否定した点も注目されます。

事案の概要

本件は,女性である原告が,被告ツイッター社に対し,①ツイッター上の投稿により,プライバシー権を侵害されたとして,プロバイダ責任制限法4条に基づき情報の開示を求めるとともに,②被告が,発信者情報開示に係る開示を命じる旨の仮処分決定がなされた後も,同決定に従った開示をしなかったことが故意又は重大な過失による不法行為であるとして,慰謝料及び同仮処分決定の日以降の遅延損害金の支払を求めた事案です。

プライバシー権侵害の点について

ツイッターアカウントを有する氏名不詳者(本件発信者)」は,平成31年1月16日午後9時34分から42分にかけて,原告の顔見知りの知人ら4名に対し,リプライ機能を用いて,本件ブログ記事へのハイパーリンクを貼付した4件のツイート投稿を行ない、本件各ツイートは,投稿先の知人4名のツイッター上の各通知タブに表示されました。

原告は,勤務していた風俗店が顧客向けに作成したウェブサイト上に,ブログを作成しており,原告の顔写真を表示するなどしていました。また、本件ブログ記事はのちに削除されたものの、上記発信者のツイート投稿時においてブログは公開されていました。

裁判所は、「原告が…風俗店で勤務している事実は,私生活上の秘密であって,原告において公開を欲しない事項といえるところ,本件各投稿は,原告の顔見知りの知人らに向けて,本件ブログに対するリンクを張る内容のものであり,ツイッターの返信機能を用いてなされたことで,原告の顔見知りの知人らに本件各投稿の通知がなされるのであるから(前提事実),本件各投稿は,原告の顔見知りの知人らに対して,原告が性風俗店で勤務している事実を暴露するに等しい行為と評価できる」と判示しています。

そして裁判所は「本件各投稿の態様を踏まえると,本件発信者は,原告が公開を望まない情報を,それと認識しつつ,あえて原告の顔見知りの知人らに暴露したものと推認されるのであり,被告が指摘するような,本件ブログに原告の顔写真が表示されていることを発見した本件発信者が,驚きをもって,原告の知人らにそのことを知らせようとしたものであるなど,単にインターネット上の情報を紹介,引用する趣旨で本件各投稿を行ったなどとはいえない」と断じた上で、「そして,原告の顔見知りの知人らは,現に本件各投稿を介して,本件ブログを閲覧し,原告が…風俗店で勤務している事実を知ったのであるから(甲16),本件各投稿は,原告のプライバシー権を侵害する違法なものであり,その不法行為性を阻却するような事情は見当たらない」と判示しています。

コメント

原告自らが投稿したブログへのハイパーリンクを投稿する行為がプライバシー権侵害に当たると判示されました。リツイート(インラインリンク)による名誉毀損や氏名表示権侵害などの人格権侵害を肯定する判例は複数存在しますが、ハイパーリンクによる権利侵害を認めた例はまだ珍しいのではないかと思います。

本件リンク情報によるプライバシー権侵害は侵害情報流通要件を満たすか  

「本件各投稿は,原告が性風俗店で勤務している旨の事実を暴露するものに等しく,本件各投稿がなされれば,これを受けた原告の顔見知りの知人らにおいて,本件各投稿に張られたリンク先をクリックするだけで,容易に本件ブログにアクセスすることができる」と指摘しています。その上で、本件ブログにアクセスした原告の知人らは本件ブログを閲覧し,原告が風俗店で勤務している事実を知ったのであるから,少なくとも,本件各投稿により,原告のプライバシー権が直接に侵害されたといえる程度の関連性が肯定できると結論づけています。  

その上で、裁判所は、「本件各投稿に係る侵害情報の流通によって,原告のプライバシー権は侵害されたものであるから,侵害情報流通要件は満たされる」と判示しています。

コメント

リンク情報は侵害情報そのものではなく、リンクによる権利侵害が認められたとしても侵害情報の流通がないため発信者情報開示請求が認められないという議論があります。この点、本件はブログ記事自体は原告自身ないし原告の許諾を得た者が発信したものであり侵害情報たり得ません。本件はリンク情報そのものが侵害情報と評価できる例外的な事案だったから侵害情報そのものと評価されたのか、検討の余地があります。

仮処分命令に従わず発信者情報を開示しなかったTwitter社の責任が否定された点

東京地方裁判所は,令和元年5月21日,債権者を原告,債務者を被告として,被告に対し,本件発信者が自身のアカウントにログインした年月日,時刻等のうち,仮処分決定が送達された日の正午時点で最も新しいログインに関するものを,仮に開示するよう命じる旨の仮処分決定をしました。しかし、被告Twitter社は情報の開示に応じませんでした。

裁判所において、「本件仮処分決定は,本案訴訟前の暫定的な処分にすぎず,被告が,これに基づく任意開示に応じなかったことが,故意または重大な過失によるものとは認められないから,原告の損害賠償請求には理由がない」として損害賠償請求を棄却しています。

コメント

発信者情報開示の仮処分について、命令に従わなかった場合、プロバイダ側にどのようなサンクションがあるのか、問題になります。しかし、本判例は発信者情報開示自体は一部認容しながら、仮処分に従わなかったこと自体は不法行為にならないとあっさりと結論づけています。しかし、発信者情報開示の仮処分については、開示を認めないことで時間が経過しISP(インターネット・サービス・プロバイダ)においてアクセスログが喪失してしまいます。このような点から、アクセスログの喪失を招いた点に不法行為の成立を認める余地はあるように思われます。

仮処分に従わなかったからといって何らのサンクションが課されないのであれば発信者情報開示仮処分が有名無実化する恐れがあります。

ツイッターなどSNS上の権利侵害については弁護士齋藤理央 iC法務(iC Law)までご相談ください。

弁護士齋藤理央 iC法務(iC Law)は、ツイッターインクに対する最高裁判決をはじめとした幅広い対応実績など、SNS運営者に対する発信者情報開示請求の経験が豊富です。SNS上の権利侵害でお困りの際はお気軽にお問い合わせください。

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