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死者に対する名誉毀損については、遺族の敬愛追慕の情が侵害されているか否かが問題となります。

敬愛追慕の情の法的保護

例えば、平成25年 6月21日東京地裁判決(平24(ワ)7739号 損害賠償等請求事件)で、裁判所は、「遺族が故人に対し有している敬愛追慕の情は,一種の人格的利益として保護に値するから,これを故人の社会的評価を低下させる言動によって違法に侵害する行為は,不法行為を構成するものというべきである」と述べて、敬愛追慕の情が法的保護に値することを確認しています。

敬愛追慕の情の侵害判断

上記裁判例は、下記のとおり述べて、「当該故人の遺族の人格的利益の侵害が受忍限度を超えるものか否かの観点から判断する」と判断基準を示しています。

また、その際に判断するポイントとして総合考慮されるのは、下記判示が述べるとおり、①当該故人の死亡時から名誉毀損行為時までに経過した時間の長短,②摘示された事実が虚偽であるか否か,③行為者が虚偽であることの確定的認識を有していたか否か,④摘示された事実の重大性,⑤名誉毀損行為の目的,態様,必要性,⑥当該故人の社会的地位及び遺族と当該故人との関係など、です。

「死者に対する名誉毀損行為によって遺族の敬愛追慕の情が侵害されたと認められる場合でも,その全てが違法な侵害と評価され,不法行為となるわけではない。 上記不法行為が成立するか否かについては,遺族の故人に対する敬愛追慕の情が時の経過とともに軽減し,故人に関する事実も死の直後から時の経過とともに歴史的事実へと移行してゆくものであること,死者に対する名誉毀損行為は表現の自由との関係で適法な表現行為として許される場合があること(刑法では,死者に対する名誉毀損行為は,行為者が虚偽の事実と確定的に認識してこれを摘示しない限り罰せられないとされている。)などに照らし,当該故人の死亡時から名誉毀損行為時までに経過した時間の長短,摘示された事実が虚偽であるか否か,行為者が虚偽であることの確定的認識を有していたか否か,摘示された事実の重大性,名誉毀損行為の目的,態様,必要性,当該故人の社会的地位及び遺族と当該故人との関係などを総合考慮し,当該故人の遺族の人格的利益の侵害が受忍限度を超えるものか否かの観点から判断するのが相当である」。

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