I2練馬斉藤法律事務所

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死者に対する名誉毀損については、遺族の死者に対する敬愛追慕の情ないし、敬愛追慕の念が侵害されているか否かが問題となります。

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    遺族の死者に対する敬愛追慕の情は法的に保護されるのでしょうか

    裁判例上、遺族の使者に対する敬愛追慕の情は法的に保護されると判断されています。

    昭和54年3月14日東京高等裁判所判決判時 918号21頁他裁判所ウェブサイト掲載は、以下の通りのべて、遺族の敬愛追慕の情を保護することを宣明しました。

    「故人に対する遺族の敬愛追慕の情も一種の人格的法益としてこれを保護すべきものであるから、これを違法に侵害する行為は不法行為を構成するものといえよう。もつと も、死者に対する遺族の敬愛追慕の情は死の直後に最も強く、その後時の経過とともに軽減して行くものであることも一般に認めうるところであり、他面死者に関する事実も時の経過とともにいわば歴史的事実へと移行して行くものということができるので、年月を経るに従い、歴史的事実探求の自由あるいは表現の自由への配慮が優位に立つに至ると考えるべきである。
     本件のような場合、行為の違法性の判断にあたり考慮されるべき事項は必ずしも単純でなく、被侵害法益と侵害行為の両面からその態様を較量してこれを決せざるを得ないが、その判断にあたつては、当然に時の経過に伴う前判示の事情を斟酌すべきてある。
     ところでDは昭和四年一一月二九日に死亡しているところ、本件文章はその死後四四年余を経た昭和四九年一月に発表されたものである。かような年月の経過のある場合、右行為の違法性を肯定するためには、前説示に照らし、少なくとも摘示された事実が虚偽であることを要するものと解すべく、かつその事実が重大で、その時間的経過にかかわらず、控訴人の故人に対する敬愛追慕の情を受認し難い程度に害したといいうる場合に不法行為の成立を肯定すべきものとするのが相当である」。

    同時に、同高裁判決は、個人に対する敬愛追慕の情は受忍限度内の侵襲かどうかによって侵害の成否を決するべきとしつつ、時間とともに受忍限度は引き上がることを示しているように思われます。

    以後、裁判実務上、遺族の敬愛追慕の情は法的保護に値するものと捉えられています。

    他にも遺族の敬愛追慕の上の保護を判断した裁判例はありますか?

    例えば、平成25年 6月21日東京地裁判決(平24(ワ)7739号 損害賠償等請求事件)で、裁判所は、「遺族が故人に対し有している敬愛追慕の情は,一種の人格的利益として保護に値するから,これを故人の社会的評価を低下させる言動によって違法に侵害する行為は,不法行為を構成するものというべきである」と述べて、敬愛追慕の情が法的保護に値することを確認しています。

    敬愛追慕の情の侵害はどのような基準で判断されますか?

    上記裁判例は、下記のとおり述べて、「当該故人の遺族の人格的利益の侵害が受忍限度を超えるものか否かの観点から判断する」という、前記の高裁判例を踏襲した判断基準を示しています。

    また、その際に判断するポイントとして総合考慮されるのは、下記判示が述べるとおり、①当該故人の死亡時から名誉毀損行為時までに経過した時間の長短,②摘示された事実が虚偽であるか否か,③行為者が虚偽であることの確定的認識を有していたか否か,④摘示された事実の重大性,⑤名誉毀損行為の目的,態様,必要性,⑥当該故人の社会的地位及び遺族と当該故人との関係など、です。

    「死者に対する名誉毀損行為によって遺族の敬愛追慕の情が侵害されたと認められる場合でも,その全てが違法な侵害と評価され,不法行為となるわけではない。 上記不法行為が成立するか否かについては,遺族の故人に対する敬愛追慕の情が時の経過とともに軽減し,故人に関する事実も死の直後から時の経過とともに歴史的事実へと移行してゆくものであること,死者に対する名誉毀損行為は表現の自由との関係で適法な表現行為として許される場合があること(刑法では,死者に対する名誉毀損行為は,行為者が虚偽の事実と確定的に認識してこれを摘示しない限り罰せられないとされている。)などに照らし,当該故人の死亡時から名誉毀損行為時までに経過した時間の長短,摘示された事実が虚偽であるか否か,行為者が虚偽であることの確定的認識を有していたか否か,摘示された事実の重大性,名誉毀損行為の目的,態様,必要性,当該故人の社会的地位及び遺族と当該故人との関係などを総合考慮し,当該故人の遺族の人格的利益の侵害が受忍限度を超えるものか否かの観点から判断するのが相当である」。

    侵害の否定例はありますか?

    平成29年 2月 1日東京高裁判決( 平成28年(ネ)4293号)は、下記のとおり敬愛追慕の念の侵害を認めませんでした。

    ア 1審原告は,記述①,⑦,⑩及び⑫は,亡Bが生前にテレビや著作で述べていた話とはレベルが異なり,亡Bが性愛異常者であるかのような事実の摘示がされており,亡Bに対する名誉毀損を構成し,遺族である1審原告の敬愛追慕の念を侵害する不法行為である旨主張する。  しかし,これらの記述が,亡Bが生前に自らテレビや著作で明らかにしていた女性関係の話とはその性質や程度が大きく異なるとまではいえず,そのような事実の公表が,1審原告の亡Bに対する敬愛追慕の念を違法に侵害するものであるとはいえないことは原判決の説示のとおりである。したがって,1審原告の主張は採用することができない。    

    イ また,1審原告は,記述⑤,⑥,⑨,⑫-2,⑬,⑬-2,⑭及び⑰は,1審原告が亡Bから嫌われていたという虚偽の事実の摘示であり,1審原告の敬愛追慕の念を侵害するし,また,敬愛し追慕していた親から忌み嫌われていたという虚偽の事実を広く公表されたときに感じる痛みは一般化類型化できるものであり,不法行為の保護法益たり得るから,敬愛する故人から忌み嫌われていたという虚偽の事実を伝播されない権利を侵害した不法行為である旨主張する。  しかし,上記各記述が公表されたからといって,それだけで1審原告が亡Bを敬愛追慕することが妨げられるものではないから,敬愛追慕の念を違法に侵害するものとはいえないことは原判決の説示のとおりである。また,子が敬愛追慕していた親から忌み嫌われていたという虚偽の事実が広く公表されたときの不快感や心痛については,それぞれの親子のその時どきの在りようにおいて様々であり,主観的な感情の域を超えて一般化類型化できるものとまでは言い難く,本件において,上記各記述の表現・内容等に照らし,直ちに不法行為の保護法益になるとは解されない。したがって,1審原告の主張は採用することができない。

    敬愛追慕の念の侵害を主張できる当事者について

    平成28年 7月29日東京地裁判決 (平成26年(ワ)30951号) は、敬愛追慕の念の侵害を主張できる当事者について、下記のとおり述べて、著作権法116条の類推適用を否定しました。

    (1) 遺族が故人に対して有している敬愛追慕の念は,一種の人格的利益として保護に値するというべきであり,これを故人の社会的評価を低下させる言動によって,遺族が社会通念上受忍すべき限度を超えて,違法に侵害する行為は,不法行為を構成するものというべきである。  

    (2) 被告は,著作権法116条の類推適用により,亡Bの妻であるCが本件書籍の出版に同意し,敬愛追慕の念の侵害を主張しない以上,原告が敬愛追慕の念の侵害を主張することはできないと主張する。  

    しかしながら,故人に対する敬愛追慕の念は,各遺族が固有に有する人格的利益であり,著作権法116条に定める者以外の遺族が,同条の類推適用により,そのような固有の利益の侵害を主張することが許されなくなると解すべき理由はない。

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