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刑法は、侮辱罪について、下記のとおり定めています。

事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。

刑法231条

侮辱罪の構成要件

「公然と人を侮辱」とは、他人の人格を貶めるような価値判断を、公然と表明することを言います。口頭でも、インターネットなどの投稿などでも成立します。

例えば、公道上で大声で「くそばばあが。死ね。」と言ったり、 インターネットサイトの口コミ掲示板に, 「詐欺不動産」,「対応が最悪の不動産屋。頭の悪い詐欺師みたいな人。」などと投稿する行為を言います(法制審議会刑事法(侮辱罪の法定刑関係)部会 第1回会議配布資料 侮辱罪の事例集)。

事実の摘示

平成 9年 9月25日東京地裁判決・判タ 984号288頁は、概要『Aが、左翼運動家や共産党を手先に使い、地方の中小零細企業の財産を根こそぎ奪い取り、これを男妾に貢いでいること』、『右のとおりのスキャンダルがありながら、Aが日本貿易会会長にいられるのは、日本貿易会を所管する通産省とX商事が癒着しているからであること』を街宣車で喧伝したという事案について、事実の摘示に当たらないと判示しています。

その理由として、裁判所は、『表示された内容は抽象的であり、そこにはX商事のどのような具体的活動を指すかを暗示するものすら含まれていない。同社は日本有数の総合商社であり、その事業活動は極めて多岐にわたっており、その個々の活動内容は、不特定多数の者には知られていないのが一般的である』ことや『本件の表示が、X商事本社ビル前に街頭宣伝車を停止させ、あるいは同ビル周辺を街頭宣伝車で走行しながら、いずれも概ね一〇分間程度の比較的短時間に、判示のとおり、拡声器を通して大声で怒鳴り、あるいは録音テープを流すなどの態様でなされているので、新聞や雑誌に記事を掲載するというような態様の表示とは異なり、その内容が抽象的に了知され易い面がある』ことから、『不特定多数の者がX商事の具体的な活動を想起するとは認められず、右表示は同社の社会的評価を害するに足るべき具体的事実を摘示したものとはいえない』と判示しています。

侮辱罪の法定刑 

侮辱罪の法定刑は、拘留又は科料とされています(令和4年6月現在)。

拘留と科料とは

刑法は、侮辱罪の法定刑である拘留と科料について次のとおり定めています。

拘留

拘留は、最長30日間、刑事施設に拘置されることを定めています。

拘留は、一日以上三十日未満とし、刑事施設に拘置する。

刑法16条

科料

科料は、最大1万円と定められています。

科料は、千円以上一万円未満とする。

刑法17条

侮辱罪厳罰化

侮辱罪の法定刑を引き上げる法案が衆議院を通過し、現在参議院で審議中です。

令和4年6月13日、改正法案が参議院で可決され、成立しました。弊所弁護士齋藤理央が、改正法案成立に伴って実施された記者会見に出席しました。

施行は公布から20日以内とされていますが、公布日は今の所明らかではありません。

法案提出までの経緯

令和2年頃から、インターネット上の誹謗中傷に注目が集まり、社会問題化しました。令和2年には誹謗中傷等に対する法務省プロジェクトチームが発足しています。

こうした流れを受けて、令和3年9月16日,法務大臣から,「侮辱罪の法定刑に関する諮問」(諮問第118号)がなされ,同日開催された法制審議会第191回会議において,この諮問についての部会審議が決定されました。

近年における侮辱の罪の実情等に鑑み、早急にその法定刑を改正する必要があると思われるので、別紙 要綱(骨子)について御意見を承りたい。

別紙 要綱(骨子)

侮辱の罪(刑法第二百三十一条)の法定刑を一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金又 は拘留若しくは科料とすること。

「侮辱罪の法定刑に関する諮問」(諮問第118号)

近時,インターネット上において,誹謗中傷を内容とする書き込みを行う事案が少なか らず見受けられます。このような誹謗中傷は,容易に拡散する一方で,インターネット上 から完全に削除することが極めて困難であるといった特徴を有することから,他者の名誉 を侵害する程度が大きいなどとして,重大な社会問題となっています。 他方で,他者に対する誹謗中傷は,インターネット以外の方法によるものも散見される ところであり,これらによる名誉侵害の程度にも大きいものがあります。

こうした誹謗中傷が行われた場合,刑法の名誉毀損罪又は侮辱罪に該当し得ることとな りますが,侮辱罪の法定刑は,刑法の罪の中で最も軽い「拘留又は科料」とされています。 こうした現状を受け,インターネット上の誹謗中傷が特に社会問題化していることを契 機として,誹謗中傷全般に対する非難が高まるとともに,こうした誹謗中傷を抑止すべき – 17 – との国民の意識も高まっていることに鑑みると,公然と人を侮辱する侮辱罪について,厳 正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示し,これを抑止することが必要であると考 えられます。 そこで,早急に,侮辱罪の法定刑を改正する必要があると思われることから,今回の諮 問に至ったものです。

法制審議会第191回会議 議事録 川原幹事発言

これを受け法務省法制審議会-刑事法(侮辱罪の法定刑関係)部会が、令和3年9月22日、同年10月6日に開催されました。

同部会は、令和3年10月22日の第2回会議で、「要綱(骨子)」を「 侮辱の罪(刑法第二百三十一条)の法定刑を一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料とすること」と定めた要項について賛成多数(賛成8名、反対1名)で承認しました。

侮辱罪厳罰化法案

このように侮辱罪の法定刑は、インターネット上の侮辱行為が社会問題化した昨今、軽すぎることが指摘されていました。

こうした流れを経て、侮辱罪厳罰化法案が衆院で可決、現在参院で審議されています。

具体的には、現在の拘留、科料に加えて、「一年以下の懲役」「一年以下の禁錮」「三十万円以下の罰金」が法定刑に加えられようとしています。

侮辱罪厳罰化と民事手続

法制審議会部会議事録から、民事と刑事厳罰化の関係について関係性を理解することができます。

例えば、第2回会議議事録で日本とは対照的に侮辱罪が廃止されたイギリスの状況について言及があります。

イギリスではなぜ侮辱罪等が廃止されたかということですが,2009年から廃止され ているのですけれども,その前提として,イギリスでは,名誉毀損・侮辱に係る民事訴訟 の件数が非常に多く,その結果でしょうか,ある研究によると,EU諸国と比べてもイギ リスにおける弁護士手数料は相当高額に至っているということです。そうしますと,イギ リスでは,侮辱的行為に対する民事訴訟の提起が,その行為を抑止する効果を相応に果た しており,刑罰を使うまでもないというお国柄であった,と言えるのかもしれません。

今井委員発言
法制審議会刑事法(侮辱罪の法定刑関係)部会
第2回会議 議事録
日 時 令和3年10月6日(水)

今回の改正をこれで終わりにしていただきたくなくて,やはり前回申し上げた とおり,損害賠償命令の対象に加えるですとか,より実効性のある被害者の救済というか, 被害回復ですとか被害の防止を考えていただきたいと思っています。 イギリスは民事訴訟で対応しているというお話がありましたけれども,日本の場合は, 慰謝料額が本当に低くて,もし民事で引き受けるとしても,単なる慰謝料という形であれ ば,ほとんど弁護士が手弁当覚悟でやるという形でしか,多分対応ができないのではない かと思っています。ですから,民事でやればいいではないかという意見もあると思います が,民事の手間を多少減らしたからといって,民事でどんどん解決できるという形には, 日本では想定しにくいので,是非引き続き,インターネット上の名誉毀損や侮辱による被 害については,検討していっていただきたいと思っております。

柴田幹事発言
法制審議会刑事法(侮辱罪の法定刑関係)部会
第2回会議 議事録
日 時 令和3年10月6日(水)

やはり、日本では発信者情報開示の使い勝手の悪さ、低額な慰謝料などが民事での責任追求が進まず、侮辱罪の厳罰化で対処せざるを得ないことが指摘されています。このように、民事手続きの拡充が被害者保護のためには重要と考えられます。

インターネットで侮辱された場合

侮辱罪厳罰化の契機となったのは、インターネットでの誹謗中傷が蔓延している昨今の社会情勢でした。現代では誰もがインターネット上で誹謗中傷被害に遭う可能性があります。

インターネットで侮辱された場合など、誹謗中傷を受けた場合、まずは発信者を特定し、責任追求の準備をする必要があります。

インターネットでの侮辱の嫌疑を受けた場合などサイバー犯罪のご相談

弁護士齋藤理央 iC法務(iC Law)は、サイバー犯罪の弁護に力を入れています。

お問い合わせについて

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