民法改正と損害賠償
令和2年民法の改正法が施行されました。では、損害賠償請求の際、改正後の民法においてどのような点に留意すればいいのでしょうか。
目次
時効期間
不法行為の時効期間については、改正により人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効について、5年と延長されています。
民法附則(平成二九年六月二日法律第四四号)第三十五条2項により、2020年4月1日おいて時効が完成していなかった人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効については、5年に延長されます。
不法行為による損害賠償請求権の消滅時効
不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
民法第七百二十四条
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。
人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効
人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。
民法第七百二十四条の二
不法行為等に関する経過措置
1 旧法第七百二十四条後段(旧法第九百三十四条第三項(旧法第九百三十六条第三項、第九百四十七条第三項、第九百五十条第二項及び第九百五十七条第二項において準用する場合を含む。)において準用する場合を含む。)に規定する期間がこの法律の施行の際既に経過していた場合におけるその期間の制限については、なお従前の例による。
民法附則(平成二九年六月二日法律第四四号)第三十五条
2 新法第七百二十四条の二の規定は、不法行為による損害賠償請求権の旧法第七百二十四条前段に規定する時効がこの法律の施行の際既に完成していた場合については、適用しない。
ライプニッツ係数の計算
民法の定める法定利率が変更されたことから、損害賠償に適用される中間利息控除の計算式であるライプニッツ係数も変更されます。2020年4月1日より以前に発生した不法行為については、旧来の計数が適用され、同日以降に発生した不法行為については、新しい法定利率に基づいた係数が適用されると解されています。
中間利息の控除
1 将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする。
民法第四百十七条の二
2 将来において負担すべき費用についての損害賠償の額を定める場合において、その費用を負担すべき時までの利息相当額を控除するときも、前項と同様とする。
損害賠償の方法、中間利息の控除及び過失相殺
1 第四百十七条及び第四百十七条の二の規定は、不法行為による損害賠償について準用する。
民法第七百二十二条
2 被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。
債務不履行の責任等に関する経過措置
1 施行日前に債務が生じた場合(施行日以後に債務が生じた場合であって、その原因である法律行為が施行日前にされたときを含む。附則第二十五条第一項において同じ。)におけるその債務不履行の責任等については、新法第四百十二条第二項、第四百十二条の二から第四百十三条の二まで、第四百十五条、第四百十六条第二項、第四百十八条及び第四百二十二条の二の規定にかかわらず、なお従前の例による。
民法附則(平成二九年六月二日法律第四四号)第十七条
2 新法第四百十七条の二(新法第七百二十二条第一項において準用する場合を含む。)の規定は、施行日前に生じた将来において取得すべき利益又は負担すべき費用についての損害賠償請求権については、適用しない。
3 施行日前に債務者が遅滞の責任を負った場合における遅延損害金を生ずべき債権に係る法定利率については、新法第四百十九条第一項の規定にかかわらず、なお従前の例による。
4 施行日前にされた旧法第四百二十条第一項に規定する損害賠償の額の予定に係る合意及び旧法第四百二十一条に規定する金銭でないものを損害の賠償に充てるべき旨の予定に係る合意については、なお従前の例による。
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