平成 2年 2月28日東京地裁判決 (昭61(ワ)5911号 損害賠償請求事件 〔ディズニーキャラクター事件〕)
原告主張(著作権侵害)
本件は、原告が「本件著作物に登場する「ミッキーマウス」、「ミニーマウス」、「ドナルド・ダック」、「グーフィー」の各キャラクター(以下「本件キャラクター」という。)は、それぞれ本件著作物の中においてさまざまな姿態で表現されているが、いずれも共通した独自の性格及び特徴をもって表現されているため、その性格及び特徴が特定の表現を越えた視覚的表現を有するに至っており、そこに著作者の思想や意図が具現されているものと解される」として、「したがって、本件キャラクターと同一又は類似の図柄をティシャツ等に表現する行為は、本件著作物の複製に当たるものというべきである」として、著作権侵害を主張した事案です。
原告主張(不正競争防止法)
また、原告は、「本件キャラクター及び「MICKEY MOUSE」の表示(以下「原告表示」という。)は、昭和五八年当時、既に、原告…の商品表示及び営業表示として周知のものとなっていた」として、「衣類八万二二五〇枚に、一枚につき七〇円の加工代金で本件キャラクターの視覚的表現又はその名称である別紙標章目録(1)ないし(14)記載の標章(以下「本件標章」という。)をプリント加工し、また…本件標章を付した衣類一万五七七九枚を一枚につき五二〇円で販売した」ため、「本件標章は、原告表示に類似し、被告らの右行為は、原告らの商品及び営業上の活動と混同せしめるものであって、原告らの営業上の利益を害している」として、不正競争防止法1条1項1号及び同2号に該当する行為によって、原告らの営業上の利益を害していると主張した事案です。
裁判所の判断
裁判所は、「〈証拠〉により認められる原告表示と本件標章とを対比すると、本件標章の「ミッキーマウス」、「ミニーマウス」、「ドナルド・ダック」、「グーフィー」のキャラクター及び「MICKEY MOUSE」の表示は、それぞれ原告表示の各キャラクター及び「MICKEY MOUSE」の表示に類似することが明らかである。また、右認定の事実及び前三1認定の事実を総合すれば、被告…の本件行為は、少なくとも右被告らと原告らとの間に同一の商品化事業を営むグループに属する関係が存するものと誤信されるものであることが認められる。そして、右混同の事実が認められる以上、特段の事情がない限り、原告らは、その営業上の利益を害されたものというべきところ、右特段の事情を認めるに足りる証拠はない」としました。
そして、「以上の認定判断によれば…本件行為…は、不正競争防止法一条一項一号に該当するものというべきところ、前認定の事実を総合すれば、同被告らは、少なくとも過失により本件行為をしたものと認定することができる。したがって、被告…は…連帯して、原告らに対し、その損害を賠償すべき義務があるものというべきである」として、不正競争防止法1条1項1号にいう周知表示混同惹起行為の成立を認めました。
審理の対象となったのは、「MICKEY MOUSE」の文字表示に加えて、キャラクターです。裁判所は、本件標章の「ミッキーマウス」、「ミニーマウス」、「ドナルド・ダック」、「グーフィー」のキャラクターの表示は、それぞれ原告表示の各キャラクターの表示に類似することから、被告の本件行為は、被告らと原告らとの間に同一の商品化事業を営むグループに属する関係が存するものと誤信されるものであることから、不正競争防止法1条1項1号にいう周知表示混同惹起行為と判断しています。
著作権侵害については、不正競争防止法違反と選択的併合の関係にあったものと理解され、損害賠償請求認容の根拠とはされていません。この点は、著作権侵害と不正競争防止法違反が選択的併合にあるため、著作権侵害については審理されなかった、マリカー事件を想起させます。
このように、キャラクターの権利侵害については、商標登録がない場合は、著作権侵害と不正競争防止法違反が選択的に主張され、裁判所は不正競争防止法違反で請求を認容する印象を受けます。
その他のキャラクターと不正競争防止法に関する裁判例
キャラクターと不正競争防止法違反の争点についてはポパイキャラクター事件も有名です。
キャラクターの保護に関する法律事務
この判例が示すようにキャラクターの保護は複数の知的財産権法によって実現すべきです。また反対に第三者の権利を侵害しないためには、複数の知的財産権法など法令に留意する必要があります。キャラクターの保護でご相談がある場合は、弁護士齋藤理央までお気軽にお問い合わせください。
この記事へのコメントはありません。