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発信者情報開示請求は、大きく分けるとコンテンツプロバイダ(CP)とインターネットサービスプロバイダ(接続プロバイダ)(ISP)に対する請求に分かれます。

一般的には、コンテンツプロバイダ(CP)からアクセスログの開示を受けてインターネットサービスプロバイダ(接続プロバイダ)(ISP)に対する請求を行っていくことになります。

コンテンツプロバイダに対する開示請求はこの1段階目のプロセスに当たります。

コンテンツ・プロバイダ(CP)に対する発信者情報開示請求の問題点

通常、コンテンツ・プロバイダに対するアクセスログの開示請求は、仮処分手続を利用して行われます。そもそもアクセスログの開示は仮処分で認められているためより簡易迅速に開示できる仮処分が利用されています。また、インターネット・サービス・プロバイダに対する開示請求までのタイムリミットが、3ヶ月と定まっているため仮処分手続きによらないと、開示のタイムリミットに間に合わないためです。

反面、コンテンツ・プロバイダに対するアクセスログの開示請求のほとんどは仮処分で行われてきたため、その審理判断はブラック・ボックスになってきました。

現在の運用に落ち着いた経緯は置くとしても、仮処分実務における現在の運用は、ツイッターやインスタグラムなどのコンテンツプロバイダに対して、権利の侵害時点などから起算して最新ログまで含めた保有するアクセス・ログの全ての開示を命じる運用となっています。

この運用の実態は、ツイッターやインスタグラムなどの代表的なコンテンツプロバイダが、最新ログまで含めた全てのアクセスログの開示を積極的に争わないことで成り立っています。ただし、この運用に落ち着くまでは仮処分手続内で被害者とコンテンツプロバイダ側で相応の主張の応酬はあったようです。この辺りの経緯も、仮処分であるため決定書がほとんど公開されておらず、コンテンツプロバイダ現在最新ログイン情報を含めたアクセスログの開示を積極的に争わなくなった詳しい経緯は明らかになっていません。

以上の経緯で、コンテンツプロバイダに対するアクセスログの開示請求は、ほとんど仮処分で争われてきました。反対に、コンテンツプロバイダに対するアクセスログの開示請求訴訟が本案訴訟で争われた例は、数えるほどしかありません。また、本来仮処分で開示請求すべきアクセスログの開示が本案訴訟で争われた事案というのは、すべて特殊な経緯がある事件と言って過言ではありません。以下、知る限りの事件を紹介します。

リツイート事件(最判令和2年7月21日など)

リツイート事件がコンテンツプロバイダに対するアクセスログの開示請求訴訟という極めて特殊な類型の訴訟であることはあまり知られていません。この事件は、一旦東京地裁に仮処分が申し立てられていましたが、申し立て後に新たな権利侵害が発覚したため、原告が東京地裁での裁判官面接で、申し立ての追加的変更を申し出たところ、裁判官から仮処分で追加的変更は認めないと言われたため、本案訴訟に至ったという特殊な経緯がありました。

ツイッターアイコン事件(知財高判令和3年5月31日など)

リツイート事件に引き続き、コンテンツプロバイダであるツイッターインクと争われたコンテンツプロバイダに対するアクセスログの開示請求訴訟です。この訴訟は1つのアカウントについては仮処分が並行して審理されましたが、他のアカウントについては仮処分での追加的変更が難しい点から、本訴のみでの開示請求となっています。

第三次ツイッター訴訟(東京地判令和4年1月20日)

運用も変わってきたため、仮処分による開示を求めたところ、ツイッター側が裁判所の仮処分命令に従わず、仮処分開示命令を無視した上で、起訴命令を申し立てた事案です。

原告は、裁判所の起訴命令に従い止むなく本案訴訟の提起を余儀なくされました。

その後、仮処分命令と同じく、最新ログイン情報を含めた保有アクセスログの全ての開示を命じる判決が言い渡されています。

コンテンツプロバイダに対するアクセスログ開示請求の問題点

では、なぜ今回コンテンツプロバイダに対するアクセスログの開示請求が認められたかご紹介しましょう。

コンテンツプロバイダに対する開示請求には、いくつか特殊な問題意識が妥当します。

まず第一点として、コンテンツプロバイダに対するアクセスログの開示請求については,当該アクセスログ開示の必要性、相当性(許容性)について、被害者側で全く立証する術がない点です。

インターネットサービスプロバイダに対する開示請求においては被害者の手元に既に開示された大量のアクセスログが存在します。そうすると、それでも不利な状況ながら被害者側でもアクセスログに基づいて、当該ログと結びつく契約者の氏名住所を開示する必要性と許容性について一応の主張立証が可能となります。しかし、コンテンツプロバイダに対する開示請求の段階では、アクセスログが手元にないため、当該アクセスログ開示の必要性、許容性を被害者側で具体的な根拠に基づいて主張立証することが全くできません。

この段階で、開示すべきアクセスログと、開示すべきでないアクセスログに分別することができないか、できるとしてもアクセスログの一部(3桁の番号4つの組み合わせのうち、1つだけマスキングして全てのアクセスログを一旦開示など。)を開示して一つ一つのアクセスログについて開示の必要性を確認していくという、とても迂遠な作業になってしまします。

このようにコンテンツプロバイダに対する開示請求においては被害者側がアクセスログ開示の必要性を具体的に主張立証する術がないため、基本的に、権利侵害に用いられたアカウントのアクセスログというだけで全てのログを開示する以外方途がありません。

また、第二点として開示されるのはアクセスログに過ぎないため、通信の秘密や匿名表現の自由における、発信者の匿名性は破られないという特殊性が挙げられます。つまり、アカウントのアクセスログを全て開示しても、そのアクセスログの通信を媒介したインターネットサービスプロバイダの協力を得られない限り、どこの誰の情報か結びつけることができません。そして、インターネットサービスプロバイダの任意の判断か、司法判断を経て、開示が妥当と判断されたアクセスログからようやく特定の個人の氏名住所などが開示されることになります。このように、コンテンツプロバイダに対するアクセスログの開示については、全てのログを開示してもそれだけでは匿名性は破られないため、通信の秘密や匿名表現の自由との関係で侵襲の程度は低いことになります。

改正プロバイダ責任制限法の問題点

改正プロバイダ責任制限法の問題点は、こうしたコンテンツプロバイダに対するアクセスログの開示請求についての特殊性が全く議論されておらずそもそも実体法の要件に必要とも思えるコンテンツプロバイダに対する開示とインターネットサービスプロバイダに対する開示の傾斜性について考慮した形跡がみられない点です。また、この結果、元々改正前の法律でも開示できたか開示情報の幅を、改正することでかえって狭めている可能性があります。

つまり、インターネットサービスプロバイダに対する氏名住所の開示請求とコンテンツプロバイダに対するアクセスログの開示請求を全く同じものと扱っており、その問題点にさえ考えが及んでいないように見受けられます。

その証左として、パブリックコメントでリツイート事件を他の高裁判決と併記している問題点を指摘しましたが、取りまとめにもその問題意識は全く反映せずリツイート事件を単に他の事件と並列的に扱っていました。

これでは、被害者を救済するために行われた法改正で、被害者の救済の途を閉ざす結果になりかねません。

救済のための法改正で、結果的に救済の途を閉ざすこととなりかねません。

ここは、早急に何らかの手当が必要な部分の一つと考えられます。

CPに対する発信者情報開示に関する他の情報発信

CPに対する発信者情報開示に関する他の情報発信は下記リンクなどがあります。

コンテンツ・プロバイダ(CP)に対する発信者情報開示請求

発信者情報開示請求は、大きく分けるとコンテンツプロバイダ(CP)とインターネットサービスプロバイダ(接続プロバイダ)(ISP)に対する請求に分かれます。 一般的には、コンテンツプロバイダ(CP)からアクセスログの開示を受 […]

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