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正当行為

①被害者の承諾:被害者が承諾していることで、違法性が阻却されるだろうか。この点、違法性の実質は、社会的相当性を欠いた法益侵害結果惹起にある。そして、構成要件に該当する時点で、法益侵害は生じている。よって、違法性阻却事由は、行為の正当性を基礎付けることで、違法の推定を覆し行為の正当性を論証すると考えられる。そうである以上、被害者の承諾も、行為の社会的正当性を基礎付ける一事情として捉えられるべきである。よって、ⅰ.承諾が個人の処分可能な法益について、ⅱ.真意に基づいてなされた有効なものであり、ⅲ.表明されることで、承諾が行為者に認識されており、ⅳ.承諾に基づく行為が全体として社会的に相当と評価できることを要すると解する。
注1)被害者の承諾が錯誤に基づく場合、法益主体の要請に基づく社会的に相当な法益侵害とは評価できず、違法性は阻却できない。
注2)被害者の承諾が行為の正当性を基礎付ける以上、承諾が明示され、行為者が、承諾を認識していたことが必要である。承諾を認識せずに法益侵害に及んだのであれば、行為の社会的相当性は肯首できない。
注3)もっとも、承諾が行為者にとって推定されるものであり、その推定が社会的に是認できるときは、行為の社会的相当性が肯定される場合もありえる。すなわち、通常人であれば承諾するであろう客観的状況のもと、行為を行ったような場合に、ⅰ.推定される承諾が本人の可処分法益に当たり、ⅱ.行為者が客観的状況を認識し、ⅲ.行った行為が社会的に相当といえるとき、行為の違法性が阻却される。

②取材行為:新聞記者の取材行為が公務員に対する秘密漏示にかかる場合でも、ⅰ.真に報道目的に出ており、ⅱ.手段、方法において法秩序全体の精神に照らし社会的に相当といえる場合には、正当業務行為として、違法性が阻却される(最決昭和53年5月31日)。

③危険の引受:被害者が危険を引き受けていた事情も、行為の社会的正当性を判断する基礎事情の一つとなりうる。すなわち、ⅰ被害者が危険を認識し、ⅱ自己の危険として引き受けていた場合には、危険が現実化した事態について違法性を阻却しうる(千葉地判平成7年12月13日)。

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