インターネット上で逮捕歴、前科・前歴など犯罪履歴に関する情報を流通におかれていて削除したい場合、プライバシー権侵害に基づく削除(送信防止措置)請求が可能な場合があります。
逮捕歴など犯罪歴に関する侵害情報を早期にインターネット上で削除することにより、権利侵害状態を解消し、また今後の権利侵害を予防できるメリットが生じ得ます。権利を侵害する情報の削除請求は、より直接的な権利救済の手段になり得ます。
目次
犯罪歴をインターネットで流通された場合、削除(送信防止措置)請求と発信者情報開示請求の関係はどのようなものでしょうか
逮捕などの犯罪歴をインターネットに掲載され、流通している場合、発信者情報開示は、削除などの対応後の損害賠償請求などに不可欠の前提となります。このように、損害賠償請求などを検討している場合は発信者情報開示請求を行う必要があります。なお、仮処分や本案訴訟など手続きの種類によっては、インターネット上で逮捕歴を削除するとともに、発信者情報開示を同じ手続きの中で同時に申し立てることも可能です。
弁護士齋藤理央では逮捕などの犯罪履歴削除(送信防止措置)についてどのような業務を行えますか
当事務所では、インターネット上での権利侵害に対して法的に削除が請求できるケースか否かを判定(法律相談:1件11000円-)し、法的に請求が可能な場合任意交渉,或いは法的対応を代理して行うことが可能です。
料金(送信防止措置)
任意による削除請求
コンテンツ・プロバイダ1社 5万5000円(税込)-
コンテンツ・プロバイダ1社追加毎に2万7500円(税込)追加
(削除したプロバイダ毎に検索エンジンからの早期検索結果・スニペット等の削除要請プロバイダ毎に2万2000円追加
削除対象 | 料金 |
プロバイダ1社目 | 「5万5000円(税込)」 |
プロバイダ2社目以降 | 1社につき「2万7500円(税込) 」 |
プロバイダからの削除に加えて検索結果等からの早期削除 | 1社につき「+2万2000円(税込)」 |
※3社任意削除のうえ、検索エンジンに対しても削除結果の早期反映を促した場合5+2万円×1社、25000円+2万円×2社、総計16万円(税別)となります。
削除仮処分
コンテンツ・プロバイダ1社 27万5000円(税込)-
コンテンツ・プロバイダ1社追加毎に11万円(税込)追加
削除請求訴訟
コンテンツ・プロバイダ1社 33万円(税込)-
コンテンツ・プロバイダ1社追加毎に 16万5000円(税込)追加
逮捕歴など犯罪歴の削除・送信防止措置を巡る裁判例
Googleに対する送信防止措置請求事件(平成29年 1月31日最高裁第三小法廷決定・民集民集 71巻1号63頁)
本邦における忘れられる権利が問題となった事案として有名な裁判例です。
本件抗告人は,児童買春をしたとの被疑事実に基づき,平成23年11月に逮捕され,同年12月に同法違反の罪により罰金刑に処せられていました。抗告人が上記容疑で逮捕された事実は逮捕当日に報道され,その内容の全部又は一部がインターネット上のウェブサイトの電子掲示板に多数回書き込まれました。
その上で、最高裁判所は下記の「当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合」にのみ検索結果を削除できるという基準を示しました。その上で、検索結果の削除を認めない結論を判示しています。
以上のような検索事業者による検索結果の提供行為の性質等を踏まえると,検索事業者が,ある者に関する条件による検索の求めに応じ,その者のプライバシーに属する事実を含む記事等が掲載されたウェブサイトのURL等情報を検索結果の一部として提供する行為が違法となるか否かは,当該事実の性質及び内容,当該URL等情報が提供されることによってその者のプライバシーに属する事実が伝達される範囲とその者が被る具体的被害の程度,その者の社会的地位や影響力,上記記事等の目的や意義,上記記事等が掲載された時の社会的状況とその後の変化,上記記事等において当該事実を記載する必要性など,当該事実を公表されない法的利益と当該URL等情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較衡量して判断すべきもので,その結果,当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合には,検索事業者に対し,当該URL等情報を検索結果から削除することを求めることができるものと解するのが相当である。
平成29年 1月31日最高裁第三小法廷決定・民集民集 71巻1号63頁(ただし下線部は弊所による)
Twitterに対する逮捕歴の送信防止措置請求事件
本件原告は、平成24年5月建造物侵入で罰金刑に処されました。これに先立ち原告は逮捕されており、当該逮捕の事実は報道の対象となりました。発信者らは、報道機関による本件逮捕に関する記事を投稿によっては若干のコメントを付してTwitterに転載するとともに,報道記事のURLへのリンクを貼付しました。もっとも,一審口頭弁論終結時点で本件逮捕に関する報道記事はいずれも削除されて閲覧できない状態になっていました。
原告は、Twitterの投稿について削除を請求しました。
一審(令和元年10月11日東京地裁判決・判時 2462号17頁)
本件一審判決はTwitterのおける削除基準を当該事実を公表されない法的利益が優越する場合として、上記最高裁決定の基準を緩和しました。
ツイッターの役割,性質等に加え,一般的なプロバイダにおける通信記録の保存期間が短いこともあり,投稿者に直接記事の削除を求めることが現実的に容易でないという事情も斟酌すると,ツイッターに投稿された記事について,ある者の前科等に関する事実を摘示して,そのプライバシーを違法に侵害するとして被告に対し削除を求めることができるのは,当該事実の性質及び内容,当該事実が伝達される範囲とその者が被る具体的被害の程度,その者の社会的地位や影響力,前記記事等の目的や意義,前記記事等が掲載された時の社会的状況とその後の変化,前記記事等において当該事実を記載する必要性等,当該事実を公表されない法的利益と本件各投稿記事の公表が継続される理由に関する諸事情を比較衡量して,当該事実を公表されない法的利益が優越する場合であると解するべきである。
令和元年10月11日東京地裁判決・判時 2462号17頁(ただし下線部は弊所による)
控訴審(令和 2年 6月29日東京高裁判決・判時 2462号14頁)
これに対して控訴審は、下記の通りTwitterの投稿削除については、当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合に限られるとして一審基準を引き上げました。
プライバシーに属する事実を含む投稿記事を,ツイッター上に表示し,一般の閲覧に供する行為が違法か否かは,当該事実の性質及び内容,当該事実が伝達される範囲とその者が被る具体的被害の程度,その者の社会的地位や影響力,当該投稿記事の目的や意義,当該投稿記事が掲載された時の社会的状況とその後の変化,当該投稿記事において当該事実を記載する必要性など,当該事実を公表されない法的利益と各投稿記事を一般の閲覧に供し続ける理由に関する諸事情を比較衡量して判断すべきものである。そして,第1審被告に対して,ツイッター上の投稿記事の削除を求めることができるのは,比較衡量の結果,当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合に限られると解するのが相当である。
令和 2年 6月29日東京高裁判決・判時 2462号14頁(ただし下線部は弊所による)
その上で、原告の削除(送信防止措置)請求を棄却しました。
令和4年6月24日最高裁判所第二小法廷判決・民集第76巻5号1170頁(裁判所ウェブサイト)
以上に対して最高裁判所は弁論を開いた上で、上告を容れ、犯罪履歴の削除を命じました。
最高裁判所は、ツイッターが、その利用者に対し、情報発信の場やツイートの中から必要な情報を入手する手段を提供するなどしていることを踏まえると、上告人が、本件各ツイートにより 上告人のプライバシーが侵害されたとして、ツイッターを運営して本件各ツイート を一般の閲覧に供し続ける被上告人に対し、人格権に基づき、本件各ツイートの削 除を求めることができるか否かは、①本件事実の性質及び内容、②本件各ツイートによって本件事実が伝達される範囲と上告人が被る具体的被害の程度、③上告人の社会的地位や影響力、④本件各ツイートの目的や意義、⑤本件各ツイートがされた時の社会的状況とその後の変化など、上告人の本件事実を公表されない法的利益と本件各ツイ ートを一般の閲覧に供し続ける理由に関する諸事情を比較衡量して判断すべきもの で、その結果、「上告人の本件事実を公表されない法的利益が本件各ツイートを一般の閲覧に供し続ける理由に優越する場合には、本件各ツイートの削除を求めることができる」と述べています。
刑の言渡しの失効
令和4年6月24日最高裁判所第二小法廷判決・民集第76巻5号1170頁は、「上告人が受けた刑の言渡しはその効力を失っており」と判示して、刑の言渡しの失効を削除請求認容の一事情としています。この刑の言渡しの失効は、刑法に各規定があります。
実刑の有罪判決を受けた場合
執行猶予のない有罪判決を受けた場合、禁錮以上の刑については刑の執行を終わってから10年、罰金以下の刑については5年経過することで刑の言渡しは失効するものとされています(刑法34条の2第1項)。令和4年6月24日最高裁判所第二小法廷判決・民集第76巻5号1170頁は、罰金以下の実刑(罰金刑)であったため、罰金支払いから5年の経過を持って刑の言渡しは言渡しは失効しており、このことが削除を認める判断に影響を与えました。
1 禁錮以上の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで十年を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで五年を経過したときも、同様とする。
(刑の消滅)
2 刑の免除の言渡しを受けた者が、その言渡しが確定した後、罰金以上の刑に処せられないで二年を経過したときは、刑の免除の言渡しは、効力を失う。
刑法第三十四条の二
執行猶予付き有罪判決を受けた場合
執行猶予付きの判決が宣告された場合は、全部執行猶予か、一部執行猶予かで失効のタイミングが異なります。
刑の全部の執行猶予の言渡しの場合
刑の全部の執行が猶予されている場合は、執行猶予期間を経過した段階で刑の言渡しは失効します(刑法27条)。
刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消されることなくその猶予の期間を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。
(刑の全部の執行猶予の猶予期間経過の効果)
刑法第二十七条
刑の一部の執行猶予の言渡しの場合
刑の一部執行猶予は、「当該部分の期間の執行を終わった日又はその執行を受けることがなくなった日において、刑の執行を受け終わったものと」して(刑法27条の7)、その日から禁錮以上の刑については10年、罰金以下の刑については5年経過することで刑の言渡しは失効するものとされています(刑法34条の2第1項)
刑の一部の執行猶予の言渡しを取り消されることなくその猶予の期間を経過したときは、その懲役又は禁錮を執行が猶予されなかった部分の期間を刑期とする懲役又は禁錮に減軽する。この場合においては、当該部分の期間の執行を終わった日又はその執行を受けることがなくなった日において、刑の執行を受け終わったものとする。
(刑の一部の執行猶予の猶予期間経過の効果)
第二十七条の七
1 禁錮以上の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで十年を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで五年を経過したときも、同様とする。
(刑の消滅)
2 刑の免除の言渡しを受けた者が、その言渡しが確定した後、罰金以上の刑に処せられないで二年を経過したときは、刑の免除の言渡しは、効力を失う。
刑法第三十四条の二
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