令和4年6月24日最高裁判所第二小法廷判決・裁判所ウェブサイトは、最高裁判所がツイッター上の犯罪履歴ツイートの削除を命じた裁判例です。

Twitterに対する送信防止措置請求事件事案の概要

本件原告は、平成24年5月建造物侵入で罰金刑に処されました。これに先立ち原告は逮捕されており、当該逮捕の事実は報道の対象となりました。発信者らは、報道機関による本件逮捕に関する記事を投稿によっては若干のコメントを付してTwitterに転載するとともに,報道記事のURLへのリンクを貼付しました。もっとも,一審口頭弁論終結時点で本件逮捕に関する報道記事はいずれも削除されて閲覧できない状態になっていました。

原告は、Twitterの投稿について削除を請求しました。

一審(令和元年10月11日東京地裁判決・判時 2462号17頁)

本件一審判決は下記の通り判示してTwitterのおける削除基準を当該事実を公表されない法的利益が優越する場合として、上記最高裁決定の基準を緩和しました。

ツイッターの役割,性質等に加え,一般的なプロバイダにおける通信記録の保存期間が短いこともあり,投稿者に直接記事の削除を求めることが現実的に容易でないという事情も斟酌すると,ツイッターに投稿された記事について,ある者の前科等に関する事実を摘示して,そのプライバシーを違法に侵害するとして被告に対し削除を求めることができるのは,当該事実の性質及び内容,当該事実が伝達される範囲とその者が被る具体的被害の程度,その者の社会的地位や影響力,前記記事等の目的や意義,前記記事等が掲載された時の社会的状況とその後の変化,前記記事等において当該事実を記載する必要性等,当該事実を公表されない法的利益と本件各投稿記事の公表が継続される理由に関する諸事情を比較衡量して,当該事実を公表されない法的利益が優越する場合であると解するべきである。

令和元年10月11日東京地裁判決・判時 2462号17頁(ただし下線部は弊所による)

控訴審(令和 2年 6月29日東京高裁判決・判時 2462号14頁)

これに対して本件高裁判決は、「全世界におけるツイッターへの月間アクセス数は約39億回(平成29年6月当時)であって,全世界で6番目にアクセス数が多いウェブサイトであ」り、「一般の私人のほか,米国の現職大統領をはじめとして,各界の著名人,官公庁,民間企業も,ツイッターを利用して情報発信を行い,これを受信する者も非常に多数にのぼる」と判示しTwitterの重要性に留意しています。そして、ツイッターの検索機能は,公衆がツイッター上の膨大な量の投稿記事の中から必要なものを入手することを支援し,ひいては投稿者による投稿行為の情報発信力も高めるものであるから、「ツイッターは,その検索機能と併せて,現代社会においてインターネット上の情報流通の基盤として大きな役割を果たしているということができる」とTwitterを高く評価しました。その上で、「ツイッターに投稿された記事の削除を命じることは,ツイッター上の記事の投稿及び閲覧並びに付属の検索機能を通じて果たされている,インターネット上の情報流通の基盤としての役割に対する制約になる」と判示しています。

そして、下記の通りTwitterの投稿削除については、当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合に限られるとして一審基準を引き上げました。

プライバシーに属する事実を含む投稿記事を,ツイッター上に表示し,一般の閲覧に供する行為が違法か否かは,当該事実の性質及び内容,当該事実が伝達される範囲とその者が被る具体的被害の程度,その者の社会的地位や影響力,当該投稿記事の目的や意義,当該投稿記事が掲載された時の社会的状況とその後の変化,当該投稿記事において当該事実を記載する必要性など,当該事実を公表されない法的利益と各投稿記事を一般の閲覧に供し続ける理由に関する諸事情を比較衡量して判断すべきものである。そして,第1審被告に対して,ツイッター上の投稿記事の削除を求めることができるのは,比較衡量の結果,当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合に限られると解するのが相当である。

令和 2年 6月29日東京高裁判決・判時 2462号14頁(ただし下線部は弊所による)

その上で、原告の削除(送信防止措置)請求を棄却しています。

令和4年6月24日最高裁判所第二小法廷判決・裁判所ウェブサイト

以上に対して最高裁判所は弁論を開いた上で、上告を容れ、犯罪履歴の削除を命じました。

コンテンツプロバイダであるTwitter社に対する削除基準がGOOGLE社に対するものより引き下げられ、実質的な削除水準の引き下げとなりました。最高裁判所の判示内容は実務上、大変重要な判断といえます。

令和4年6月24日最高裁判所第二小法廷判決・裁判所ウェブサイトの判示内容のうち規範部分

最高裁判所は、まず「個人のプライバシーに属する事実をみだりに公表されない利益は、法的保護 の対象となるというべきであり、このような人格的価値を侵害された者は、人格権 に基づき、加害者に対し、現に行われている侵害行為を排除し、又は将来生ずべき 侵害を予防するため、侵害行為の差止めを求めることができるものと解される(最 高裁平成13年(オ)第851号、同年(受)第837号同14年9月24日第三 小法廷判決・裁判集民事207号243頁、最高裁平成28年(許)第45号同2 9年1月31日第三小法廷決定・民集71巻1号63頁参照)」として、プライバシー権に基づく差止請求権が成立することを確認しています。

その上で、本件で最高裁判所は、ツイッターが、その利用者に対し、情報発信の場やツイートの中から必要な情報を入手する手段を提供するなどしていることを踏まえると、上告人が、本件各ツイートにより 上告人のプライバシーが侵害されたとして、ツイッターを運営して本件各ツイート を一般の閲覧に供し続ける被上告人に対し、人格権に基づき、本件各ツイートの削 除を求めることができるか否かは、①本件事実の性質及び内容、②本件各ツイートによって本件事実が伝達される範囲と上告人が被る具体的被害の程度、③上告人の社会的地位や影響力、④本件各ツイートの目的や意義、⑤本件各ツイートがされた時の社会的状況とその後の変化など、上告人の本件事実を公表されない法的利益と本件各ツイ ートを一般の閲覧に供し続ける理由に関する諸事情を比較衡量して判断すべきもの で、その結果、「上告人の本件事実を公表されない法的利益が本件各ツイートを一般の閲覧に供し続ける理由に優越する場合には、本件各ツイートの削除を求めることができる」と述べています。

令和4年6月24日最高裁判所第二小法廷判決・裁判所ウェブサイトのあてはめ

まず、①本件事実の性質及び内容について、❶−1「本件事実は、他人にみだりに知られたくない上告人のプライバシーに属する 事実である」ことが確認されています。

その上で、❶−2「他方で、本件事実は、不特定多数の者が利用する場所において行われ た軽微とはいえない犯罪事実に関するものとして、本件各ツイートがされた時点に おいては、公共の利害に関する事実であったといえる」として伝播している事実の公共性を指摘しています。

しかし、❶−2−1「上告人の逮捕から原審の口頭弁論終結時まで約8年が経過し」、❶−2−2、「上告人が受けた刑の言渡しはその効力を失っており(刑法34条の2第1項後段)」、❶−2−3 「本件各ツイートに転載された報道記事も既に削除されている」ことなどからすれば、本件事実の公共の利害との関わりの程度は小さくなってきている」と述べて時の経過による事実の公共性の低下を指摘しています。

さらに、最高裁判所は、②本件各ツイートによって本件事実が伝達される範囲と上告人が被る具体的被害の程度について、❷「膨大な数に上るツイートの 中で本件各ツイートが特に注目を集めているといった事情はうかがわれないもの の、上告人の氏名を条件としてツイートを検索すると検索結果として本件各ツイー トが表示されるのであるから、本件事実を知らない上告人と面識のある者に本件事 実が伝達される可能性が小さいとはいえない」として上告人の不利益に言及されています。

加えて、最高裁判所は、❸「上告人は、その父が営む事 業の手伝いをするなどして生活している者であり、公的立場にある者ではない」として、③上告人の社会的地位や影響力について言及しています。

また、本件各ツイートは、❹「上告人の逮捕当日にされ たものであり、140文字という字数制限の下で、上記報道記事の一部を転載して 本件事実を摘示したものであって、ツイッターの利用者に対して本件事実を速報す ることを目的としてされたものとうかがわれ、長期間にわたって閲覧され続けるこ とを想定してされたものであるとは認め難い」として、速報性のある情報であり長期間に渡り閲覧に供されることを予定しない投稿だったこと、つまり、④本件各ツイートの目的や意義に言及されています。

令和4年6月24日最高裁判所第二小法廷判決・裁判所ウェブサイトの結論

最高裁判所は、「以上の諸事情に照らすと、上告人の本件事実を公表されない法的利益が本件各ツ イートを一般の閲覧に供し続ける理由に優越するものと認めるのが相当である」とし、「し たがって、上告人は、被上告人に対し、本件各ツイートの削除を求めることができ る」と結論づけています。

原審への論難

最高裁判所は、「原審は、上告人が被上告人に対して本件各 ツイートの削除を求めることができるのは、上告人の本件事実を公表されない法的 利益が優越することが明らかな場合に限られるとするが、被上告人がツイッターの 利用者に提供しているサービスの内容やツイッターの利用の実態等を考慮しても、 そのように解することはできない」として、原審の採用したいわゆる「明らか基準」についてツイッターについてはこれを採用すべきでないことを明確に判示しています。

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