中央あいしーのイラスト仕上げ作業と「作品」の時点特定機能
弁護士齋藤理央 iC法務(iC Law)IC法務PRメインキャラクター、中央あいしー のイラスト仕上げ作業を行いました。
スタートは、中央あいしー のご紹介という記事で登場した上記中央あいしー のイラストレーションです。
作業は単純で、髪型や服装などを、パースを取り直すなどして、影を適度につける、輪郭線を付け足す、雑になっている部分を描き直すなどの作業を続けていきました。
作業のタイムラプス撮影動画
こちらの作業からも明らかなとおり、スタートのイラストレーションと、仕上げ作業後のイラストレーションでかなり印象が異なっています。
変化する著作物とその把握の仕方
また、タイムラプス動画を見ていただければわかる様に、川の流れのように表現物は常に流動的に変化し続ける(事ができる)という性質を持っています。
ところで、著作権法が保護する著作物について、作品説と創作的表現説という異なる見解が存在しています。
著作物の特定には、範囲のほかに時点の問題もでてくるので、そこまで考えるとさらに話がややこしくなりそうです。
— 弁護士齋藤理央 (@b_saitorio) June 7, 2019
著作物は、完成までに刻一刻と変化し、「完成」というのも、たまたま、何らかの理由で区切りとされた時点にすぎず、後日そこからさらに加筆修正されることもあります。
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— 弁護士齋藤理央 (@b_saitorio) September 22, 2019
駒田教授の論説
著作物と作品概念との異同について
著作物を作品と見るか、創作的表現と見るか、という議論。ここに、時間的な著作物の変容を加えるとさらに議論は混乱するのでしょうか。或いは・・・?
#クリエイトする弁護士_著作権法
個人的には、創作的表現説が妥当、というより当然の前提のように捉えてきました。
しかし、創作的表現説は、著作物が完成するまでの時間的な経過、という視点から捉え直すと、無数の著作物が観念的には成立してしまうという問題点もありそうです。
例えば、上記タイムラプス動画を参照していただいても、イラストレーション一つ取っても著作物は刻一刻と変化し、その過程に1次著作物、2次著作物、3次著作物、、、n次著作物と無限に著作物を観念する事になってしまいます。
また、完成といっても、仕上げの段階は様々で、例えば中央あいしーのイラストレーションも一旦は、今回の仕上げ作業の前の段階で世に出されています。
仕上げ作業が行われるということを知らなかった場合、今回の仕上げ作業前のイラストレーションをもって、完成したキャラクターイラストと捉える人もいたかもしれません。また、今回の仕上げ作業も完成というわけではなく、どうしても手が回らない荒い部分も残っていますので、今後も手直しや修正を予定しています。
また、前回の仕上げ作業前の中央あいしーのイラストレーションも、今回の中央あいしーのイラストレーションも、それぞれ完成された表現物という形式で公表されているため、各々独立して、「作品」という枠組みにはカテゴライズできそうです。
その原因は、ひとつの表現物として、「公表されたこと」、つまり表現物が社会との関わりを持ったことに起因すると考えられます。つまり、作品には、表現物が社会との関わりを持った時点を意味のある時点として特定する機能も担っていると考えられます。
そうすると、作品という概念には、表現物の一纏まり、という表現物の「範囲」を画する意味合いの他に、作品について、何らかの意味で表現物が世に出された「時点」、という時的特定の機能も観念されます。
そして、作品という概念の機能として、世に出された時点まで流動的に変容し続けるという表現物の性質から、何らかの形で世に出された「時点」を特定するという役割が、表現の範囲を画する機能と同様に重要なのではないかと思料されます。
作品概念の時点特定概念としての再評価
このように、無限に変化し続ける事ができる表現物の状態について、時点を特定するという意味でも、作品概念は必須とも考えられます。
作品概念によって、表現物の時点にいったん楔を打ち込んで、そのうえで、当該時点の表現物の一部に著作物性(言い換えれば創作性)が認められるか、という観察の仕方にならざるを得ないことから、やはり作品概念は表現物の範囲を画する概念としての機能もさることながら、時点特定機能という意味でも、著作物の社会的把握において必須の概念ということができるのだろうと思います
また、作品概念を超えて、著作物性が吟味されることもない事になります。作品外の表現物について著作物性を勘案するということは、通常考えられないからです。
そうすると、作品概念には、対象となる表現物の範囲の限界を画するという機能もありそうです。
つまり、作品概念は、著作物そのものではないとしても、ある表現物の時点を特定し、かつ、その範囲の上限を画するという意味で、ある表現物の特定に欠ざるを得ない著作物の箱、パッケージの様な役割を担っているのではないかと考えられます。
その意味で、作品は、著作物を必ずその内に包含した存在であり、作品を特定し、さらに問題となっている表現物を特定するという、段階を踏んだ検討のために「作品」という概念が、必須の機能を担っていることは間違いなさそうです。
著作権法務
弁護士齋藤理央 iC法務(iC Law)では、各種著作権業務を取り扱っています。
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