この記事は下記エントリで作成したGIFアニメーションを題材として素材となったイラストと、GIFアニメーションの関係を考察するエントリです。
素材となったイラストレーション
GIFアニメーションの素材となっているのは、上記の3点のイラストレーションです。また、目を閉じているイラストは目を開けているイラストに上位のレイヤーを被せて上書きしたものなので、目を開いている一番左のイラストのそれぞれ2次的著作物といえます。
なお、著作権法2条1項12号は「二次的著作物を、「著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物」と定義しています。
つまり、目を閉じている真ん中と一番右のイラストは、目を開けている一番左のイラストを、各「変形」した2次的著作物という事になりそうです。
GIFアニメーションの仕組み
GIFアニメーションの仕組みは以前、ツイッターで簡単にツイートにまとめています。
GIFアニメーションは、画像情報である
— 弁護士齋藤理央 (@b_saitorio) June 14, 2019
Image Block を、これに対応した、Graphic Control Extensionで制御することで、アニメーション化しています。
おそらく、イメージブロックに対応したGCEにおける、Delay Time設定で、表示のタイミングを制御してアニメーション表示しているようです。
この3枚のイラストをGIFアニメーション内のグラフィックコントロールエクステンションで制御して、アニメーション化しています。
— 弁護士齋藤理央 (@b_saitorio) June 22, 2019
GIFファイルはレイヤーに応じてプロクリエイトが自動生成します。 pic.twitter.com/g0R01mU5uD
GIFアニメーションと素材の関係性
ここからが、この記事の本題になります。
この、GIFアニメーションと素材の3点のイラストは、2次的著作物の関係にたつのでしょうか。
この点、GIFアニメーション2のエントリで詳しく述べたとおり、GIFアニメーションは、素材画像の枚数や配列、フレームレートの設定で全く印象も効果も異なってきます。GIFアニメーション作成のために、素材の画像の枚数や配列、フレームレートの調整を経て自然なまばたきの感覚を表現していることから、GIFアニメーション化は、新たな創作性の付加と評価することは十分可能と考えます。
そうすると、GIFアニメーションは、素材のイラストの本質的特徴を維持したうえで、素材イラストを元著作物として、新たなアニメーション表現を付加した素材イラストの2次的著作物として成立すると言えそうです。
複製・公衆送信客体の範囲
ここでGIFアニメーションがGIFで完結しているケースは複製や公衆送信客体の情報の範囲について、単一のGIFファイルを指定すれば良いため大きく問題とはならなさそうです。
ところが、素材のイラストレーションだけをそれぞれ異なるGIF画像として保存して、CSSなどのデータでGIF画像をアニメーション制御することも容易に実施できます。
実際にもCSSにはanimationプロパティが用意され、ウェブサイト上のCSSによるアニメーション制御は予定されています。また、インターネット上にCSSによるアニメーション制御が導入されているケースも多く存在します。
この作用は、例えば、ウェブサイト用に複数の画像を保存、送受信して、これをウェブページ表示の際に、CSS制御でタイムラグを持たせて連続切り替えすることで、代替可能です。
— 弁護士齋藤理央 (@b_saitorio) June 14, 2019
アニメーションに対応していないJPGなどをウェブでアニメーション表示する際に実益があるかと思います。
このとき、例えば冒頭のGIFアニメーション内部のグラフィックコントロールエクステンションあるいは、この作用を代替する場合の外部CSSファイルに含まれるコードが、著作物の複製情報の範囲に含まれるべきか、まだ、答えはない議論と認識しています。
— 弁護士齋藤理央 (@b_saitorio) June 14, 2019
さらに、たまたま同じファイル内に含まれていたら複製情報の範囲、たまたま同じ役割を代替する部分が外部ファイルなら複製情報の範囲外というのは、やや、形式的すぎるのではないかと考えられます。では、案件ごとに作用しているプログラムまで特定する作業をするのかというと、それはそれで大変です。
— 弁護士齋藤理央 (@b_saitorio) June 14, 2019
このように、GIFアニメーションと同様のアニメーション制御をCSSで実施した場合、複製や公衆送信の客体は、CSSも含んだ異なるファイル間にまたがるデータ群となり得そうです。もっとも、そのデータの特定など、実務的な課題は多くありそうです。
デジタル著作権法務
このように、弁護士齋藤理央 iC法務(iC Law)は、創作活動をとおしてデジタル著作権の領域に親しんでいます。
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