iT、コンテンツ、情報やエンターテイメント分野において生じる法的課題解決を重視しています

自身の発信したコンテンツ名誉毀損として指弾される。昨今ではそのようなコンテンツ名誉毀損の問題が顕在化しています。自身の発信したコンテンツが他人の社会的評価を低下させる場合、あるいは、過度な侮辱行為を含む場合違法との判断を下される恐れもあります。コンテンツ発信の際は、この点に留意した発信を心がけましょう。

コンテンツと名誉毀損が問題となった裁判例

令和元年9月12日大阪地方裁判所判決・裁判所ウェブサイト掲載は、Twitter上のツイート投稿による名誉毀損の成否が争われた事案です。元ツイートをリツイートした行為が名誉毀損に当たるかを含めて争われました。

問題となったツイート

「Retweeted (以下省略)B市解体の住民投票は中止な(@ (以下省略)): D氏,E議員の党代表「茶化し」2度目…F代表「20歳も年下 に我慢している」

https://(以下省略) Dが30代でA知事になったとき,20歳以上年上のAの幹部たちに 随分と生意気な口をきき,自殺にまで追い込んだことを忘れたのか!恥 を知れ!」

令和元年9月12日大阪地方裁判所判決・裁判所ウェブサイト掲載より

名誉毀損の成否に関する裁判所の判断

まず、裁判所は、「本件投稿は…「Dが3 0代でA知事になったとき,20歳以上年上のAの幹部たちに随分と生 意気な口をきき,自殺にまで追い込んだことを忘れたのか!恥を知れ!」 との一文(以下「本文」という。)を記載するものである」と指摘します。そして裁判所は、「この本文は,原告が「20歳以上年上のAの幹部たちに随分 と生意気な口をきき,自殺にまで追い込んだ」との事実を記載するもので…原告が「生意気な口をき」いた 人物と「自殺にまで追い込」まれた人物が別人であることをうかがわせ る記載はなく,「20歳以上年上のAの幹部たちに随分と生意気な口を きき」の部分と「自殺にまで追い込んだ」の部分は読点を挟んで順接されており…一般の閲読者の 普通の読み方と注意を基準とすれば,「自殺にまで追い込」まれた人物 は,原告が「生意気な口をき」いた人物である「Aの幹部たち」のうち の誰かを指すものと理解される表現というべきである」と判示しています。 さらに裁判所は、「この表現部分が本件投稿の中心的部分であり…本件投稿は,「A知事であった原告が, Aの幹部職員に対して生意気な口をきき,当該幹部職員の誰かを自殺に 追い込んだ」事実を摘示する表現と認めるのが相当である」と結論しています。

問題は、この表現が原告の社会的評価を低下させるかの部分ですが、裁判所は、「本件投稿は,被告が「A知事であった原告が, Aの幹部職員に対して生意気な口をきき,当該幹部職員の誰かを自殺に 追い込んだ」との事実を摘示するものであるところ,本件投稿の一般の 閲読者の注意と読み方を基準とすれば,同事実は,原告について,部下 職員を自殺に追い込むようなパワーハラスメントを行った人物であると の印象を与えるものであるから,本件投稿は原告の社会的評価を低下さ せる表現であると認められる。」として社会的評価の低下を肯定し、名誉毀損行為にあたると判示しています。

違法性阻却事由の存否

裁判所は下記のとおり述べて、本件に違法性阻却事由が存在しないと判断しています。

被告は,本件投稿の性質に関する自己の主張を前提とした公正 な論評の法理による違法性阻却を主張するのみで,原告の主張に対応する真 実性の抗弁(原告の主張する摘示事実を前提とし,それが真実である旨の主 張)を主張していない。 しかし,当事者の主張内容に鑑み,念のため,これを本件投稿についてみ るに,本件投稿によって摘示された「A知事であった原告が,Aの幹部職員 に対して生意気な口をきき,当該幹部職員の誰かを自殺に追い込んだ」との 事実のうち,「当該幹部職員の誰かを自殺に追い込んだ」との部分は,原告 が職員を自殺に追い込むような言動を行う人物であることを示すものであり, 原告の社会的評価の低下に強く関係する重要な部分であるところ,この事実 を真実と認めるに足りる証拠はなく,かえって,被告は,原告の言動を直接 受けたA職員が自殺した事実がないことを認めており(平成30年9月21 日付け「被告(反訴原告)準備書面(3)」2頁ないし3頁),本人尋問に おいても,本件投稿当時,原告の言動を直接受けたA職員が自殺した事実を 認識していたものではない(同事実が真実であると考えていたわけではない) 旨の供述をしている(被告本人10頁,42頁)ことからすると,本件投稿 における事実摘示の重要部分である「原告の言動を受けたA職員が自殺し た。」という事実が真実ではなく,また,同事実について被告が真実である と信じていたと認められないことは明らかである。 したがって,その余の点について判断するまでもなく,本件投稿による被 告の名誉毀損行為について,真実性の証明による違法性阻却は認められず, 被告の故意,過失も否定されない(なお,仮に,本件投稿を被告の意見論評 を表現するものと解する余地があったとしても,その前提となる重要な事実 は,前記1(2)イ(ア)に説示したとおりの事実であり,それが真実であるとか, 被告がそれを真実と信じていたとは認められないから,やはり違法性は阻却 されず,被告の故意,過失も否定されないことは,上記の説示と同様であ る。)。

令和元年9月12日大阪地方裁判所判決・裁判所ウェブサイト掲載より
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