しんじょうくんとちぃたん☆を巡る紛争事例〜ゆるキャラと法的紛争の一事例
事案の流れ
法的手続の開始
高知・須崎市、ゆるキャラで要請 「ちぃたん☆」の活動やめて(共同通信) – Yahoo!ニュース https://t.co/tZSjyijY6Q @YahooNewsTopics
— 弁護士齋藤理央 (@b_saitorio) February 6, 2019
#ちぃたん☆ は、 #しんじょう君 が #ゆるキャラGP で優勝した次の年に同じ作者の方にデザインされて、 #妖精 として誕生 しており、コラボ企画も行われていたように思われるなど、色々経緯がありそうです。https://t.co/qRe30Hjbq8
— 弁護士齋藤理央 (@b_saitorio) February 22, 2019
個人的には、知財侵害の成否よりも合意の内容や信頼関係の破壊など、意思解釈・事実認定が中心になるんじゃないかなと(勝手に)思っております。
— 弁護士齋藤理央 (@b_saitorio) February 22, 2019
公開されいている須崎市の主張書面
なお、最終主張書面は先ほど確認したら、閲覧可能になっていました。
— 弁護士齋藤理央 (@b_saitorio) September 20, 2019
須崎市が公開している須崎市最終主張書面https://t.co/oQYFMlPeRX
こちらのpdfの59ページ以降(一番最後)に双方の主張が簡略化して記載されています。https://t.co/23TrPVWtAt
東京地裁判断
ちぃたん☆使用停止しなくてΟK 高知・須崎市の仮処分申請却下 | 2019/9/20 – 共同通信 https://t.co/oNlh2beR3f#クリエイトする弁護士と時事のコンテンツトラブル
— 弁護士齋藤理央 (@b_saitorio) September 20, 2019
個人的に注目していましたが、ひとまず結論がでたようです。
かなり報道されていますので、仮処分決定の公開基準を満たす可能性も。
当初、報道だけから得た情報からですが、利用許諾の認定が中心になる事案ではないかと思いました。https://t.co/olep73WwoY
— 弁護士齋藤理央 (@b_saitorio) September 20, 2019
東京地方裁判所 申立却下の理由小括
— 弁護士齋藤理央 (@b_saitorio) October 3, 2019
「債務者が債務者標章等を使用することについては、債権者の黙示の許諾が認められ、その期間が満了又はその解約につき正当な理由があることも認められないから、債務者標章等の使用の差止めを求める債権者の請求は理由がない。」
知財高裁の判断
報道によると令和元年12月25日知的財産高等裁判所は、須崎市の即時抗告について棄却したとのことです。
https://t.co/hEM4blu2wS
— 弁護士齋藤理央 (@b_saitorio) December 25, 2019
こちらの報道によれば、「『ちぃたん☆』の活動が実際に『しんじょう君』の全国的な知名度を上げることに貢献し、ひいては須崎市様の広報活動や地域振興に資するものであったこと」や、「信頼関係を破壊するような行為を行っていないこと」が認定されたとのこと。
特に前者はしんじょうくんのIPが須崎市の普通財産ということであれば、公共財の使い方としても間違っていないと判断されたのでしょう。また、しんじょうくんも利益を得ているため、一方的に関係解消できないと判断されたのか。
— 弁護士齋藤理央 (@b_saitorio) December 25, 2019
いずれにせよ示唆に富んだ案件だと思います。
公益著名商標とゆるキャラ
こちらの最終ページ(37ページ)に、知財高裁の判断が簡単に記されています。
— 「クリエイトする」弁護士齋藤理央 (@b_saitorio) January 19, 2020
一番謎だった公益著名商標については、そもそも公益著名商標にあたらないと判断されたようです。
ゆるキャラは、公益著名商標に当たらないという知財高裁の判断は、注目されます。https://t.co/zgmkVTAeun
上記の中で、知財高裁の公益著名商標に関する判断としては、「しんじょう君の商標は、商業的にも活用されるものであって、市町村章のように地方公共団体そのものを示すものではなく公益著名商標には該当しない」とされています。
ちぃたんとしんじょう君の図柄の類否が論点となっているちぃたん商標手続き。
— 「クリエイトする」弁護士齋藤理央 (@b_saitorio) September 6, 2019
商標の類似性肯定 ▶︎ 公益著名商標の通常使用権設定(利用許諾)は(法改正前だったから)あり得ないというのが一番堅い流れですかね。https://t.co/R2aa12OMRq
商標法第三十一条は、「商標権者は、その商標権について他人に通常使用権を許諾することができる。ただし、第四条第二項に規定する商標登録出願に係る商標権については、この限りでない。」と定めます。
このように、公益著名商標に当たれば、通常使用権を設定できないと条文上明確に定められているため、しんじょう君の利用許諾は成立しないというのが須崎市の一つの主張でした(須崎市が公開している準備書面より。)。ただし、この条文についてはすでに改正されています。
本件は改正前で、上記条文の適用があること、さらに、地方公共団体のゆるキャラは公益著名商標に当たることを前提とすれば、上記の須崎市の主張はかなり堅いように考えていました。知財高裁も須崎市の請求を斥けたと報道があったとき、この論点をどうクリアしたか、気になっていました。個人的には、通常使用権と利用許諾を分けて考えるか、すでに法改正されているためその趣旨から同条の適用を排除したなどの可能性を考えていました。しかし、知財高裁はそもそもの公益著名商標該当性自体を否定したようです。
では、しんじょう君はなぜ、公益著名商標に当たらないと判断されたのでしょうか。
まず、商標法4条2項は、「国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であつて営利を目的としないもの又は公益に関する事業であつて営利を目的としないものを行つている者が前項第六号の商標について商標登録出願をするときは、同号の規定は、適用しない」とさだめます。
そして、「前項第六号」にあたる商標法4条1項6号は、公益著名商標について、①「国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であつて営利を目的としないもの」又は②「公益に関する事業であつて営利を目的としないもの」を「表示する標章」であつて「著名なもの」と「同一又は類似の商標」と定めています。
そして、しんじょう君とちぃたん☆は、商標の類似性が認められるのではないかと考えていました。
すると、しんじょう君の商標は、①須崎市という公益団体である地方公共団体そのものを示すものではないとされたものと思われます。さらに、ビジネス展開もされ、商用にも積極的に利用されているため、②公益に関する事業ではあっても、営利を目的としないとまでは言えないと判断されたのではないでしょうか。
そこで、公益著名商標該当性が否定されたのだと思われます。
ゆるキャラ危機一髪!知らないうちに「商標登録」されそうになった四国の「こまポン」 #ldnews https://t.co/WApmFMyXmE
— 「クリエイトする」弁護士齋藤理央 (@b_saitorio) January 19, 2020
ただ、こちらのケースでは特許庁により、救済されています。。
しかしながら、上記のようにゆるキャラが救済されるケースもあるため、地方公共団体のゆるキャラは、今後そうした救済が受けられないケースも出てきてしまうかもしれません。
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