特許法総則
特許法の目的
特許法は、「発明」の保護及び利用を図ることで、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与することを目的とします(特許法1条)。
特許法にいう「発明」とは、自然法則を利用した「技術的思想の創作」を言います(特許法2条1項)。さらに、特許法にいう発明は、「技術的思想の創作」のうち、「高度なもの」とされます(同条同項)。このように、条文上は技術的思想の創作のうち、高度なものが特許法で保護され、高度とはいえない技術的思想の創作は、高度なものという留保が付さず技術的思想の創作全般を「考案」として保護する実用新案法の範疇に属するという棲み分けが試みられています(実用新案法2条1項)。
高度な技術的思想の創作たる発明のうち、特許を受けている発明を特に、「特許発明」と言います(特許法2条2項)。
発明の種類
発明には、物の発明(特許法2条3項1号参照)、方法の発明(同2号参照)があります。物の発明には、プログラム等の発明と、それ以外の物の発明があります(同1号参照)。プログラムとは、一の結果を得られるように組み合わされた電子計算機に対する指令をいい、プログラム等とは、プログラム及び、電子計算機による処理に供する情報でプログラムに準じる水準の情報を言います(特許法2条4項)。方法の発明には、物を生産する方法の発明と、それ以外の方法の発明が観念できます(同3号参照)。
実施
発明に対して特許の設定登録を受けた場合、業としての発明の専有実施権を付与されます(特許法66条1項、68条本文)。
実施とは、物の発明においては、物の生産、生産した物の使用、生産した物の譲渡及び貸し渡し、輸出入、譲渡等の申出、譲渡等のための展示をする行為を言います(特許法2条3項1号)。また、プログラム等の発明にあっては、これに加えて、プログラム等を電気通信回線を通じて提供する行為も含まれます(同括弧書き)。方法の発明においては、発明にかかる方法を使用する行為を言います(特許法2条3項2号)。さらに、物を生産する方法の発明においては、その発明した方法を使用して物を生産する行為に加えて、生産した物の使用、生産した物の譲渡及び貸し渡し、輸出入、譲渡等の申出、譲渡等のための展示をする行為が実施の範疇に該当します(同3号)。
期間の計算
特許法においては、期間が午前零時から始まる場合を除いて期間の初日は参入しません(特許法3条1項)。したがって、原則的に翌日から期間の進行が開始します。特許に関する手続において期間の末日が休日であるときは、その翌日をもって期間の満了日とします(同3項)。月又は年の単位で期間が定められている場合は、最後の月又は年において起算日に応答する日の前日に満了します(同2項)。
特許法46条の2第1項3号に係る実用新案登録に基づく特許出願の期間制限、特許料の納付期限(特許法108条1項)、拒絶査定不服審判請求の期間制限(同121条1項)、再審請求の期間制限(同173条1項)に係る期間は、特許庁長官において延長することができます(特許法4条)。また、特許庁長官、審判長、審判官は、指定した期間を延長できます(特許法5条)。
手続の主体
法人で無い社団・財団であっても、代表者、管理人の定めがあるものは、その名において出願審査の請求、特許異議の申立、特許無効審判の請求、延長登録無効審判の請求、特許無効審判、延長登録無効審判の確定審決に対する特許法171条1項の規定による再審請求ができます(特許法6条1項)。また、法人で無い社団・財団であっても、代表者、管理人の定めがあるものは特許無効審判、延長登録無効審判の確定審決に対する再審請求を受けることができます(同2項)。
未成年者が独立して法律行為をすることができるときを除いては、未成年者及び成年後見人は、法定代理人によって特許法の手続きを行う必要があります(特許法7条1項)。例えば、未成年者は営業について許可を得た場合は、当該営業については独立して法律行為を行い得ます(民法6条1項)。したがって、未成年者も許可を受けている営業に関しては独立して特許法の手続主体となり得ます。反面、独立して法律行為をできない未成年者、成年後見人が行った手続きも法定代理人が追認して有効とできます(特許法16条1項)。
特権に係る特許意義の申立、相手方が請求した審判若しくは再審について手続きをする時を除いて(特許法7条4項)、被保佐人が手続きをするには保佐人の同意が必要であり(同2項)、後見監督人があるときは法定代理人が手続きをするには後見監督人の同意が必要になります(同3項)。ただし、要件を欠いた場合も追認は許されます(特許法16条3項、4項)。
日本に住所・居所のない在外者は、原則的に特許管理人によらなければ、手続等ができません(特許法8条1項)。
在外外国人の場合は、条約に別段の定めのない限り(特許右方25条3号)、日本国民に特許の保護を与える国の国民で無い限り特許に関する権利の共有主体となれません(特許法25条1号、2号)。
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