大阪地方裁判所令和5年5月11日・裁判所ウェブサイトは、Amazon上の不正削除について不正競争防止法違反が認められた事例です。
著作権侵害を理由に虚偽の削除申請をした場合、競業者について不正競争防止法2条1項21号の不正競争行為に該当すると判断した点で、参考になる事例です。
虚偽申告の概要
本件において、被告は、『アマゾンに対し、被告サイトの商品ページ と原告サイトの商品ページが重複している旨並びに原告サイトにおいて被告サイト上の商品画像、商品名及び商品の説明文が盗用されている旨を申告 した』ところ、アマゾンから『知的財産侵害の通知は、 アマゾンブランド登録又は侵害通知用のオンラインフォームから送る必要 があること、別のアマゾンストアに出品されているASINを報告する場合は、 報告対象の ASIN が出品されているアマゾンストアにある侵害の通知フォームを利用する必要があること等を教示した上で、いずれかの方法で侵害の通 知を再度提出してアマゾンで申立てを処理できるように協力して欲しい旨を連絡し』てきました。
そこで、被告は『「著作権侵害」、「意匠権の侵害」、「特許の侵害」、「商標権侵害」の選択肢のうち「著作権侵害」を選択し』たうえで、『商品詳細ページの ASIN、申告対象とする画像、商品名、商品のブランド名等を選択・記載し、「著作物の登 録番号」、「著作権のある商品/著作物を提示するサイトへのリンク」、「著作 権があることの説明」のうち、「著作権のある商品/著作物を提示するサイ トへのリンク」を選択し、対応する被告サイトの URL を記載したほか、詳細 を書き込む欄に、被告が作成したカタログの商品画像、商品名を盗用して、別のカタログを作成している旨を記載し』て、削除申告を行いました。
不正競争防止法の成否
被告の過失について
裁判所は、被告の過失について『被告は、アマゾンから、権利侵害の申告に係 る手続について、知的財産権の侵害を理由とする場合の通知方法、ASIN の重 複を理由とする場合の通知方法及びそれぞれ個別に申告することが必要で あるとのメールを受信し、自ら ASIN の重複を申告する方法ではなく知的財産権の侵害を理由とする場合の方法を選択し、申告に係る原告各画像等を特 定し、「著作権侵害」の項目を選択の上で本件各申告を行っている。このよ うな被告の行動に照らせば、被告は、アマゾンに対して自ら積極的に著作権 侵害の虚偽事実を申告したといえ、被告が本件各申告をするにつき、少なく とも過失が認められ、本件各申告は違法である』と断じています。
その上で、裁判所は、『 以上のとおり、本件各申告は、原告各画像が被告各画像等を無断で使用し ていることを理由とする原告による著作権侵害をアマゾンに伝える趣旨の 権利侵害の申告である一方、被告各画像について被告が著作権を有さず、また原告が被告各画像を無断で使用したとも言えないことから、その内容は、 いずれも、被告と競争関係にある原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を 21 申告する行為であり、不競法2条1項21号の不正競争行為に該当するといえる』として、『また、被告には少なくとも過失が認められる』と述べています。