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ショッピングサイトから商品画像の無断転載がされるなど、昨今、Eコマース電子商取引などを通した著作権トラブルも増えています。

インターネット上のショッピングサイトに商品の写真と説明文を無断掲載した場合の著作権侵害が問題となった裁判例(知的財産権専門部)

知的財産高等裁判所令和5年6月21日( 令和5(ネ)10004)・裁判所ウェブサイト(原審東京地方裁判所令和4年11月4日・裁判所ウェブサイト)及び、知的財産高等裁判所令和5年6月21日( 令和5(ネ)10016)・裁判所ウェブサイト(東京地方裁判所令和4年12月22日・裁判所ウェブサイト)は、インターネット上のショッピングサイトに商品の写真と説明文を無断掲載した場合の著作権侵害の成否と、その損害額が争われた事案です。

同様の電子商取引ECサイト運営、Eコマース分野のビジネスについて、著作権侵害が成立するか否か、あるいは、損害額の具体的な算定について参考になる事案です。

裁判例1(東京地方裁判所令和4年11月4日・裁判所ウェブサイト)について

裁判例1の当事者について

原告会社は、健康器具等の企画、製造、販売及び輸出入等を目的とする株式会社であり、原告会社の代表者も原告として共同訴訟を提起していた事案です。 被告会社は、建設業及びリフォーム業等を目的とする株式会社であり、被告会社の代表者も同様に被告となっていました。

事実経過について

原告会社は、平成26年2月1日、SoSoft社に対し、 健康器具の一種である加圧ベルトの販売 を委託しました。

商品画像(本件画像の掲載と販売)

業務を受託したSoSoft社は、少し曲げるなどした原告商品を4本、先頭の位置をずらすなどして並べて、バックルが画像の右下方向に位置し、ベルトが 左上方向に延びているように配置した上で、それらの斜め上方から撮影 した画像と「知的財産権承諾済の加圧ベルト」、「当商品は株式会社サ ーナが所有する知的財産権(特許権、意匠権、商標権)承諾済の人体用加圧ベルトです!大人気商品の加圧ベルトだけに知的財産権を侵害する コピー品・模造品にはご注意ください。」という文字とによって構成される画像等(以下「本件画像」という。)をインターネット上の電子商 取引サイトにおいて掲載して、原告商品を販売していました。

被告会社の被疑侵害行為

これに対して、被告会社は、インターネット上のYAHOO!JAPANショッピングというウェブサイトを利用して「アリシアストア」という電子商取引サイ トを開設しました。

被告会社は、令和元年5月20日頃、被告オンラインストアにおいて、原告商品を販売するに当たり、その商品紹介ページに本件画像を表示しました。この表示行為が、本件の著作権侵害行為として訴訟が提起されました。

一審裁判所(東京地方裁判所知的財産権法専門部)の判断

裁判所はまず、著作権侵害の成否について、「被告会社は、令和元年5月20日頃、被告オンラインストアにおいて原告 商品を販売するに当たり、その商品紹介ページに原告商品の画像を含む本件 画像を表示し、これにより、少なくとも過失により、本件画像を複製し、公衆送信用記録媒体にその情報を記録して自動公衆送信し得るようにして送信可能化した」として、無断での商品画像のサーバーへのアップロード行為について、送信可能化権侵害を認めています。

その上で、一審東京地裁は、①本件画像の内容、②被告会社における本件画像の使用態様、③使用期間が約2週間と比較的短くその閲覧数も少なかったと推認されること、④原告会社は自ら原告商品を販売するために本件画像を作成 したのであり仮に販売を行う他人にその使用を許諾する場合には 一定の使用料を求めると考えられることなどの事情を総合して、「原告会社が本件画像の著作権(複製権、公衆送信権)の行使につき受けるべき金銭の額(著作権法114条3項)は5万円が相当であると認められ」としています。

その上で、一審裁判所は、「原告会社は、被告会社に対し、本件画像の著作権(複製権、公衆送信権)の 侵害についての損害として、5万円を請求することができる」と結論付けました。

不正競争防止法に関する判断

一審裁判所は、「原告会社は、被告会社が原告会社に無断で原告商品を転売したことを指摘して被告会社に不正競争があった旨を主張するが、上記事実をもって、不正競争防止法2条1項21号所定の被告会社が競争関係にある原告会社の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知又は流布したものとは認められない。したがって、原告会社の主張は認められない」と判示しています。

裁判例2について

事実経過について

本件も、被告が原告会社の商品をインターネット上のショッピングサイトに出品した際に同商品の写真と説明文からなる画像を複製した上で掲載したことにつき、それぞれ、被告に対し、損害賠償請求をする事案です。

一審裁判所の判断

本件画像について、「その内容は、比較的簡素な宣伝文句と商品画像からな るものであるにとどまる。また、被告が本件画像を掲載した期間は、平成 31 年 2 月 15 頃~令和元年 6 月 20 日の約 4 か月間に過ぎない」。として、一審裁判所は、これらの事情を総合的に考慮するとした上で、「本件画像の「著作権…の行使につき受けるべき金銭の額に 相当する額」は 5 万円とするのが相当であるから、これをもって原告会社の損害額と認める」と判示しました。

不正競争防止法の信用毀損行為について

こちらの事案でも、商品画像の無断転載行為が不正競争防止法上の信用毀損行為(不正競争防止法2条1項21号)に該当するか争われました。この点、裁判所は、「本件掲載行為により原告会社の信用が低下したことをうかがわせる具体的な事情は見当たらない。原告 A の陳述書には、本件加圧ベルトの購入予定者や被 告からの購入者から、原告会社及び C 社に対して合計 7 件の苦情があったとの記載 があるものの、苦情の具体的内容は明らかでなく、これらの苦情により原告会社の 信用が低下したことをうかがわせる具体的な事情も見当たらない。そもそも、その存在を裏付ける客観的な証拠はない。 したがって、本件掲載行為によって原告会社の信用が毀損されたとはいえず、こ れを前提とする損害の発生も認められない」と判示して、こちらの事案でも、信用毀損行為の成立を否定しています。

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