リツイート事件最高裁判所判決以後、その反響も大きく、様々な論評や評釈が専門雑誌などを中心に掲出されています。

ここでは、リツイート事件後の反響を受けて有用な情報や議論状況の一部をまとめています。

また、弊所ウェブサイトも主に事実関係を中心に複数の評釈に参照いただいており、事件担当の代理人から積極的な情報発信が必ずしも無益ではなかったと考えております。

個人的には守秘義務が要請する依頼者や国民からの信頼を失わないという点に十全な配慮をし、実際にこの点が守られることを大前提としながら、建設的な議論の助けとなるような情報が当事者などからも積極的に発信される流れが広がればいいなと思っています※。

※あくまで立法論や法解釈など法的なものその他役立つものがより積極的に発信されるようになれば望ましいという意味です。

目次

リツイート事件評釈紹介

リツイート事件については多数の評釈が出されていますが、ここでは、いくつかの評釈をご紹介します。

①−1 リツイートにシステム上伴うトリミングにより著作者名が表示されなかったことについて氏名表示権侵害を肯定した最高裁判決  ~リツイート事件最高裁判決(令和2年7月21日言渡)の検討〜

東京大学田村善之教授の評釈です。比較的早い段階で詳細な評釈が発表され、控訴審を含めたリツイート事件で問われた著作権法上の争点の主要なものに対する見解が示された、重要な評釈です。今後実務に与える影響も大きいのではないかと考えられます。

ウエストロー・ジャパン 株式会社 判例コラム 2020 第213号 https://www.westlawjapan.com/pdf/column_law/20201005.pdf

①−2 リツイートによる公衆送信権侵害の成否と その際のトリミングに起因する氏名表示権と 同一性保持権侵害の成否 ―リツイート事件知財高裁・最高裁判決の検討―

上記をもとにその後の論評なども踏まえて加筆された最高裁判決及び知財高裁判決の評釈です。

北海道大学知的財産法政策学研究 Vol.61(2021) P.263〜 https://www.juris.hokudai.ac.jp/riilp/wp-content/uploads/sites/6/2021/10/b799a2e35cdd4bdb7b95dc6ceabdfd06.pdf

②インターネット上の情報ネットワークにおいてされた他人の著作物である写真の画像の掲載を含む投稿により、上記画像が、著作者名の表示の付された部分が切除された形で上記投稿に係るウェブページの閲覧者の端末に表示された場合に、上記閲覧者が当該表示された画像をクリックすれば、上記著作者名の表示がある元の画像を見ることができるとしても、上記投稿をした者が著作者名を表示したことにはならないとされた事例 ほか〔リツイート事件〕(最三小判令2・7・21(平成30年(受)第1412号))

リツイート事件の最高裁判所調査官を務めた笹本判事による調査官解説です。他の判例雑誌等にも同旨の解説が複数掲載されていますが、一番詳細であるためこちらを紹介させて頂きました。特にプロバイダ責任制限法部分の解説は必読ではないかと思われます。

Law & Technology90号58頁 https://www.vplab.org/lt/LT90_index.pdf

③リツイートによる氏名表示権の侵害が認められた事例
〔Twitterリツイート事件上告審 最三小判令2・7・21〕

現在は関西学院大学准教授である谷川先生の評釈です。この分野(特に著作権とプロ責法が交錯するデジタル著作権分野など。)に強い関心をお持ちの谷川先生の評釈らしく、著作権部分についてしか述べられていない評釈が多い中、プロバイダ責任制限法の点にも相応の分量が割かれており、著作権法の判例としてよりもプロバイダ責任制限法の判例として重要ではないかという積極的評価付けが示されています。

Law & Technology91号75頁 https://www.vplab.org/lt/LT91_index.pdf

著作権法学会第164回判例研究会『リツイート事件最判』

2021年(令和3年)11月25日、著作権法学会でリツイート事件最判に係る判例研究会が行われました。神戸大学前田教授による最判で判示された著作権法19条を中心とした精緻かつ深みのある発表がなされました。

前田先生のご発表内容の多くは、木下教授との共著論文氏名表示権とSNSにおける表現活動――リツイート事件最高裁判決の内在的理解と批判的検討――にも記載されているとのことでした。

著作権法学会でリツイート事件最判が扱われるということで、個人的にも事件を今一度見直す良い機会を頂くことができました。

IP LP I リツイート事件シンポジウム

2020年10月14日明治大学知的財産法政策研究所IP LP Iでリツイート事件のオンラインシンポジウムが開催されました。そこで、聴講しての私の個人的な感想など主観的な情報をメモも兼ねて記しておきたいと思います。

著作権法と憲法という視点

著作権法の側面はもちろんですが、憲法的な視点は議論をとても幅の広いものにし、また、個人的にとても刺激を受ける部分が多かったです。

というのも、プロバイダ責任制限法は憲法的な問題点を多く含んだ法律であり憲法的な理論武装というのは実務的にも重要だと考えているからです。

そういう視点から、著作権と憲法という議論には個人的に現在とても興味を持っています。

プロバイダ責任制限法を舞台にした対立利益である被害者の裁判を受ける権利や、人格権、そして『人権としての著作権』にも踏み込んだ議論が今後展開されることにも期待したいです。

表現の自由のエンジンとしての著作権という意味づけについても、今後議論を深めていく必要があると感じています。

著作権法上の議論について

個人的にはリツイート事件最判判決文のうち氏名表示権侵害の当てはめの部分、つまり、『判示事項2』は、事例判断なのでそれほど汎用性が高い部分ではないのではないかと考えています。

リツイート事件で重要なのは判断された部分では判事事項3が重要で、権利侵害の面では、判示されていない部分が重要だと考えています※。

もっと言えば、現状ではなぜ最高裁判所が同一性保持権侵害や、公衆送信権侵害の点に結論をだし、これを宣明することができなかったか、結論を出す障壁となっている部分はどういった点なのか、その分析をした上で、議論を構築していくことが最高裁判所から出された宿題ではないかと考えています。

※判示事項1は、氏名表示権に関する法解釈が示されたので規範的な意味では重要と捉えられますが結論には異論の少ないところのようです。

その他

原告が訴訟の追行を頑張ったから最高裁判決が出て、結果的に良いシンポジウムが開けてよかったという趣旨のことをシンポジウム終了後に何気なくおっしゃってくださっていて嬉しかったです。

実際に原告は、5年間も辛抱強く事案を任せてくださいました。原告のご理解がなければ存在しなかった最高裁判決であることは間違いないと思います。

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