I2練馬斉藤法律事務所

I2練馬斉藤法律事務所は練馬駅前に所在し、著作権を中心とした知的財産権やインターネット法、損害賠償や刑事弁護、一般民事などを広く取り扱っています。

発信者情報開示の在り方に関する研究会中間とりまとめ(案)に対する意見募集(案件番号 145209561)について、パブリックコメント(意見)を提出いたしました。また、提出したパブリックコメントを公開しています。即座の実現が難しい内容が多く含まれていることは承知していますが、現行の制度が必ずしも現状に合致していないことを踏まえて、あえて、強めの要望や意見も含めています。

I 2練馬斉藤法律事務所では、発信者情報開示請求を業務として取り扱っています。

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パブリックコメントの掲載について

弊所パブリックコメントが総務省発信者情報開示の在り方に関する研究会(第5回・令和2年8月28日(金)11:00~)における配布資料で複数箇所取り上げられ、掲載されました。

意見4-3 掲載

インターネットの発展速度に鑑みれば、個別規定で省令に加えるこれまでのやり方では到底間に合わないというべきである。現にこれまで省令の改正は遅きに失し、インターネットの発展に適切に対応して来られなかったと考えている。そこで、包括規定を設けたうえで、事案ごとの司法判断に委ねるべきである。すなわち、限定列挙の省令の構造を破棄し、例示列挙とすべきである。そして、包括的な規定を創設すべきである。

意見4(1)-4掲載

弁護士会照会は強制力がない。携帯キャリアや電話会社が開示に応じなければそれまでとなってしまう。開 示に消極的な特定の携帯電話キャリアの場合、弁護士会照会では電話番号から発信者を特定することは不可能 である。携帯キャリア等に対する強制的な開示請求権も付け加えなければ実効性が担保されないように思われ る。開示された電話番号からさらに氏名住所の開示を法的に請求できることを明確化すべきと考える。

意見4(2)-1 掲載

現時点では投稿直前のログイン情報についてはリツイート事件なども含めて基本的にログイン情報の開示 は認められていると認識している。リツイート事件で請求が棄却されたのは最新ログイン情報であり、ツイー ト直前のログイン情報はそもそもプロバイダが保有していなかった。現に同じプロバイダを相手に争われた 令和2年12月24日東京地裁民事46部判決 https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail7?id=89328 では、ツイート直前のログイン情報について開 示されている。このように、ログイン情報の開示について判断が分かれているというより、正確には、現時点 で実務上争いがあるのは、投稿後のログイン情報や最新ログイン情報であると認識している。投稿の直前のロ グイン情報については、現在概ね裁判例は開示を肯定する状況となっているように思われる。なお、ログイン 情報が問題となるのは、省令7号の「開示関係役務提供者の用いる特定電気通信設備に侵害情報が送信された 年月日及び時刻」という文言の「侵害情報が送信された」という文言が投稿情報の発信に寄り過ぎており、限 定的すぎるからである。この文言の緩和を含めた省令改訂が望まれる。

意見5-5掲載

「実体法上の請求権に基づく開示制度に代えて」という部分は、大きく反対である。実体法上の請求権に基 づく開示制度に付け加えて、オプションとして非訟手続きが用意されることには賛成である。
加えて、非訟は合意に達しない場合訴訟への移行手続きを含んだものにすべきである。すなわち、プロバイ ダによって開示への対応は様々であるところ、開示に消極的なプロバイダも少なくない数が存在している。そ のような開示自体に消極的なプロバイダに対しては、発信者情報開示に強制力がなければ、結局開示に応じな いケースも出てくると考えられる。もちろん、開示に応じるつもりのあるプロバイダに対して非訟事件手続が 存在していることは選択肢として非常に有用と考えられる。しかし、非訟では解決しないケースも念頭に、非 訟において訴訟に移行できること、また、非訟と訴訟を選択できることを担保すべきである。代替手段として の非訟手続きは開示の実効性に疑問が残るというべきである。非訟を訴訟に前置できるという制度であれば期 待できると考えている。また、非訟前置を強制するのではなく、非訟と訴訟を選択できることも必要であると 考える。

I2練馬斉藤法律事務所が提出したパブリックコメント

なお、以下の「該当箇所」に記載の部分は、パブリックコメントの書式にならって、発信者情報開示の在り方に関する研究会がとりまとめた、中間とりまとめ案から抜粋しています。

また、総務省発信者情報開示の在り方に関する研究会(第5回・令和2年8月28日(金)11:00~)における配布資料で取り上げらた箇所は赤字で示しています。

<第1章 発信者情報開示に関する検討の背景及び基本的な考え方について>

3.検討に当たっての基本的な考え方

(該当箇所)
具体的には、発信者情報開示請求に係る制度の趣旨は、裁判を受ける権利の保障という重要な目的を達成するために、発信者の表現の自由、プライバシー及び通信の秘密を制約する上で、当該制約を必要最小限度のものにとどめる必要性があるという前提を踏まえ、権利侵害を受けたとする者(「被害者」)の救済がいかに円滑に図られるようにするか、という点(被害者救済という法益)と、適法な情報発信を行っている者のプライバシー・通信の秘密をいかに確保するか、という点(表現の自由の確保という法益)の両者の法益を適切に確保することにあると考えられる。
したがって、具体的な制度設計に当たっては、常にこの観点に留意しながら検討を深めることが適当である。

(意見)
対立利益の設定から疑問がある。対立利益も段階的に設定する必要がある。権利侵害が明白な場合に、どのような情報を開示すべきか、という省令改正のレベルの段階では、適法な情報発信者の表現の自由は対立利益にならないように思う。権利侵害の明白性が認められるかどうか、あるいは事案において同要件満たすか、という判断の段階までについては、対立利益は、適法な情報発信を行っている者の表現の自由の確保が含まれていても適切と思われる。
しかし、司法判断等によって権利侵害の明白性の要件が肯定されるか、権利者側とプロバイダ側で権利侵害について争いがない様な事案では、異なる対立利益の設定が必要である。すなわち、違法な情報発信が確認されるケースでは、適法な情報発信者の利益は対立法益にならず、違法な情報発信を行っている者が匿名を維持できるか否かが対立利益として設定されなければならないと考える。そして、権利侵害が認めらえる場合に、違法な情報発信者の匿名を維持する利益を是認できるケースというのは相当限定的であるということを踏まえて、省令を制定すべきように思われる。
適法な情報発信者はそもそも、発信者情報の対象となり得ないため、違法な情報発信の存在を前提に如何なる情報を開示すべきが議論されている省令改正のレベルでは対立する法益の設定については、2段階の構造に見直すなど検討する必要があるように思う。権利侵害の明確性が法律上の要件で担保されている以上、省令の改正に当たっては、適法な情報発信の表現の自由は考慮すべき法益ではないのではないか。省令上は、あくまで権利侵害が認められた場合になお、違法な情報発信者が開示を拒める正当な利益を有する情報について例外的に除くような考え方が本来正当であるように思われる。

<第2章 具体的な検討事項>

1.発信者情報の開示対象の拡大

1-⑴概要

(該当箇所)
開示対象に関する以上のような基本的な考え方を踏まえると、サービスの多様化や環境の変化等といった制定時からの事情変化があれば、それを踏まえて、現在省令に含まれていない情報についても、開示対象の追加を検討することが適当と考えられる。

(意見)
インターネットの発展速度に鑑みれば、個別規定で省令に加えるこれまでのやり方では到底間に合わないというべきである。現にこれまで省令の改正は遅きに失し、インターネットの発展に適切に対応して来られなかったと考えている。そこで、包括規定を設けたうえで、事案ごとの司法判断に委ねるべきである。すなわち、限定列挙の省令の構造を破棄し、例示列挙とすべきである。そして、包括的な規定を創設すべきである。

1-⑵電話番号

(該当箇所)
① 権利侵害を受けたとする者は、コンテンツプロバイダから発信者の電話番号の開示を受けることができれば、後述のとおり、当該電話番号を発信者に割り当てた電話会社に対して、弁護士会照会(弁護士法第 23 条の2)等を通じて、発信者の氏名及び住所を取得することにより、発信者を特定することが可能になると考えられる。
② なお、電話番号がコンテンツプロバイダから開示されれば、発信者情報開示に係る裁判手続が1回で済むケースが増えるため、手続をスムーズに進める効果も期待されるほか、後述の通信ログが一定期間後に消去されることで発信者の特定に至らない可能性があるという問題の解消にも資すると考えられる。

(意見)
弁護士会照会は強制力がない。携帯キャリアや電話会社が開示に応じなければそれまでとなってしまう。開示に消極的な特定の携帯電話キャリアの場合、弁護士会照会では電話番号から発信者を特定することは不可能である。携帯キャリア等に対する強制的な開示請求権も付け加えなければ実効性が担保されないように思われる。開示された電話番号からさらに氏名住所の開示を法的に請求できることを明確化すべきと考える。
② 国外SNSの場合、海外送達が必要になるため、一概に手続きが簡易迅速になるとは言い切れない。すぐには難しいとは考えられるが、日本でコンテンツを配信するプラットフォーマーには日本法人による情報削除、情報開示を義務付ける業法の制定が望ましいと考えている。加えて、下記非訟手続を訴訟との選択的な手段として導入したうえで、非訟によって送達手続を簡略化したうえで、海外プロバイダに代理人が選定された状態で訴訟手続きに移行が可能であれば、海外プロバイダ対策の一オプションにはなり得る。

1-⑶ログイン時情報

(該当箇所)
この点、ログイン時情報を発信者情報として開示することは、立法時には必ずしも想定されていなかったと考えられるところ、ログイン時情報が現行法上の発信者情報に該当するか否かについては明確になっておらず、裁判例も分かれている状況となっている。

(意見)
現時点では投稿直前のログイン情報についてはリツイート事件なども含めて基本的にログイン情報の開示は認められていると認識している。リツイート事件で請求が棄却されたのは最新ログイン情報であり、ツイート直前のログイン情報はそもそもプロバイダが保有していなかった。現に同じプロバイダを相手に争われた令和2年12月24日東京地裁民事46部判決https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail7?id=89328では、ツイート直前のログイン情報について開示されている。このように、ログイン情報の開示について判断が分かれているというより、正確には、現時点で実務上争いがあるのは、投稿後のログイン情報や最新ログイン情報であると認識している。投稿の直前のログイン情報については、現在概ね裁判例は開示を肯定する状況となっているように思われる。なお、ログイン情報が問題となるのは、省令7号の「開示関係役務提供者の用いる特定電気通信設備に侵害情報が送信された年月日及び時刻」という文言の「侵害情報が送信された」という文言が投稿情報の発信に寄り過ぎており、限定的すぎるからである。この文言の緩和を含めた省令改訂が望まれる。

1-⑷その他の情報

(該当箇所)-

(意見)
インターネットは状況変化が激しく、現在の省令の限定列挙では全く対応できていないと思っている。発信者情報の範囲を限定列挙で画するということは、インターネットの未来が完全に予測できるような人智を越えた存在でもない限り、およそ不可能であるように思われる。不可能な限定列挙を無理に行っていることが、省令がその役割を果たせなかった主要な要因であると思われる。かえって省令が開示されるべき情報が開示されない障壁となってきた経緯さえあるように思われる。そこで、やはり、省令を例示列挙として包括的な規定を創設する必要があるように思われる。このまま限定列挙を続けることは裁量の広い立法行為においてもなお裁量を逸脱する極めて不合理な行為として違法の水準に達するおそれを懸念している。それほど、限定列挙は明らかに不可能なことをやろうとしているように思われる。電話番号が開示の対象と加えられても、結局電話番号を登録しないユーザーが増えるなどいたちごっこになるところ、結局発信者情報開示においては、事案ごとに司法判断に裁量を持たせる包括的な規定が必須であると考える。限定列挙が明かに機能していないという状況があるならば、その中で限定列挙を続けることは、省令の機能不全によって発信者を特定できなかった権利者に対する賠償や補償の問題を生じ得ると考えるべきであろう。

2.新たな裁判手続の創設について

2-⑴新たな裁判手続の必要性

(該当箇所)
具体的には、発信者の権利利益の確保に十分配慮しつつ、円滑な被害者の権利回復が適切に図られるようにするため、柔軟な制度設計を可能とする観点から、例えば、法改正により、発信者情報開示請求権という実体法上の請求権に基づく開示制度に代えて、非訟手続等として被害者からの申立てにより裁判所が発信者情報の開示の適否を判断・決定する仕組み(新たな裁判手続)を創設することについて、創設の可否を含めて、検討を進めることが適当である。

(意見)
「実体法上の請求権に基づく開示制度に代えて」という部分は、大きく反対である。実体法上の請求権に基づく開示制度に付け加えて、オプションとして非訟手続きが用意されることには賛成である。
加えて、非訟は合意に達しない場合訴訟への移行手続きを含んだものにすべきである。すなわち、プロバイダによって開示への対応は様々であるところ、開示に消極的なプロバイダも少なくない数が存在している。そのような開示自体に消極的なプロバイダに対しては、発信者情報開示に強制力がなければ、結局開示に応じないケースも出てくると考えられる。もちろん、開示に応じるつもりのあるプロバイダに対して非訟事件手続が存在していることは選択肢として非常に有用と考えられる。しかし、非訟では解決しないケースも念頭に、非訟において訴訟に移行できること、また、非訟と訴訟を選択できることを担保すべきである。代替手段としての非訟手続きは開示の実効性に疑問が残るというべきである。非訟を訴訟に前置できるという制度であれば期待できると考えている。また、非訟前置を強制するのではなく、非訟と訴訟を選択できることも必要であると考える。

2-⑵新たな裁判手続の制度設計における論点

(該当箇所)
その他、新たな裁判手続の検討に当たっては、発信者情報開示請求後にコンテンツプロバイダが発信者情報を保有していなかったことが判明するという手間を避けるために、事前にコンテンツプロバイダがどのような情報を持っているかについて開示させる方策を検討すべきではないかといった指摘があった

(意見)
プロバイダの情報保有状況が判明しないことは実務上障壁になっている事柄であると考えられる。したがって、事前に保有状況を確認できる制度の創設には賛成である。なお、繰り返しになるが、新たな裁判制度(非訟とされるもの)はあくまで、現在の制度に付け加える選択的なオプションとして検討されるべきであると考える。加えて、非訟は合意に達しない場合訴訟への移行手続きを含んだものにすべきである。

3.ログの保存に関する取扱い

(該当箇所)
具体的には、例えば、①発信者を特定する手続と、②特定された発信者情報を開示する手続を分割し、①について、発信者情報を被害者に秘密にしたまま、コンテンツプロバイダに迅速に発信者情報を提出させ、アクセスプロバイダにおいて発信者を特定し、当該発信者情報を保全しておくプロセスを設けるなど、早期に発信者情報を特定・保全できるようにする仕組みを設けることが考えられる。
したがって、当該仕組みの導入に向けて、法改正を視野に制度設計の具体化に向けた検討を深めていくことが適当である。その際、前述の新たな裁判手続との関係にも留意が必要である。

(意見)
賛成であり、制度創設に期待する。

4.海外事業者への発信者情報開示に関する課題

(該当箇所)
この点について、前述2.の新たな裁判手続の創設を検討する際において、当該裁判手続が海外のプロバイダに対して実効性のある仕組みとなるよう検討を行うことができれば、海外のプロバイダに対する訴状の送達の課題は一定程度解決が図られるとも考えられる

(意見)
期待したいが、特に海外プロバイダは開示に消極的なケースがあるように思われる。その場合、開示に消極的なプロバイダは、非訟では発信者情報の開示に応じないのではないか。あくまで訴訟のオプションとして非訟制度を創設したうえで、訴訟への移行手続きも併せて規定すべきである。非訟手続によって送達手続を簡略化したうえで、非訟によっては合意が整わない場合、海外プロバイダに代理人が選定された状態で訴訟手続きに移行が可能であれば、海外プロバイダ対策の一方策になり得ると考える。ただし、通常の訴訟手続きと選択的な制度とすべきである。非訟前置を強制すべきでないように思われる。なぜなら、非訟では明らかに合意が成立しないと判明しているケースも想定できるからである。

<第3章 今後の検討の進め方>

(該当箇所)
総務省においては、本中間取りまとめを踏まえ、発信者情報の開示対象の追加については、まずは「電話番号」を開示対象に追加するため、迅速に省令の改正を行うことが適当である。

(意見)
一部報道にあるような今夏の改正を期待したい。

以上

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