I2練馬斉藤法律事務所

I2練馬斉藤法律事務所は、著作権など知的財産権やインターネットと法の問題を重視しています。

東京地裁民事29部令和元年10月30日判決裁判所ウェブサイト掲載( 平成30年(ワ)第32519号 発信者情報開示請求事件(「第1事件」) 令和元年(ワ)第19716号 発信者情報開示請求事件(「第2事件」))は、YouTube上の権利侵害に基づくGOOGLE,LLC(グーグル・エルエルシー)及びYOUTUBE,LLC(ユーチューブ・エルエルシー)に対する発信者情報開示請求が認容された事例です。まだまだ公開されている情報が少ない中、裁判所ウェブサイトで公開されている貴重な事例ですので、ここでは、同判例から読み解ける情報をご紹介いたします。

I2練馬斉藤法律事務所は、カリフォルニア外国法人に対する発信者情報開示請求を複数件担当しています。ご相談の際はお気軽にお問い合わせください。

    インターネットの権利侵害の場合サイトやSNSアカウントのURLをご記載ください

    YOUTUBEに対する発信者情報開示請求訴訟一部認容裁判例から読み取れること

    こちらの判決ですが、短い判決文ですが様々な情報が読みとれ参考になります。

    情報の保有状況について

    当事者においても、「被告ユーチューブは,本件発信者情報1を,被告グーグルは,本件発信者情報2のうち,少なくとも別紙発信者情報目録2記載1及び3の各情報(以下「本件発信者情報2-1」といい,同目録記載2の情報を「本件発信者情報2-2」という。) をそれぞれ保有している」ことは争われていません。

    なお、各発信者情報は下記の内容となります(()内はI2練馬斉藤法律事務所リーガルグラフィック東京で注記。)。

    発信者情報目録1

    別紙投稿記事目録記載の各投稿記事の発信者情報であって,以下に掲げるもの。 1 投稿に用いられたアイ・ピー・アドレス
    2 前項のアイ・ピー・アドレスが割り当てられた電気通信設備から,被告ユーチューブの用いる特定電気通信設備に前項の各投稿記事が送信された年月日及び時刻

    発信者情報目録2

    別紙投稿記事目録記載の各投稿記事の発信者情報であって,以下に掲げるもの。
    1 各投稿記事の投稿に用いられた各アカウントに登録されている氏名又は名称(本件発信者情報2-1)
    2 各投稿記事の投稿に用いられた各アカウントを登録するために用いられた住所(本件発信者情報2-2)
    3 各投稿記事の投稿に用いられた各アカウントに登録されている電子メールアドレス(本件発信者情報2-1)

    法人としての情報の保有

    各法人とYOUTUBEとの関係

    ユーチューブ・エルエルシー

    裁判所は、「被告ユーチューブは,インターネット上での動画共有サービスを提供する 「You Tube」のウェブサイト(以下「本件サイト」という。)を運営する, アメリカ合衆国デラウェア州法に基づき設立された合同会社である」と判示しています。

    グーグル ・エルエルシー

    裁判所は「被告グーグルは,被告ユーチューブのマネージングメンバーとして被告ユー チューブを代表する,アメリカ合衆国デラウェア州法に基づき設立された合同会社である」としています。

    各法人の情報の保有状況について

    本件は、平成30年(ワ)第32519号発信者情報開示請求事件(「第1事件」)の後に令和元年(ワ)第19716号 発信者情報開示請求事件(「第2事件」)がおそらく別訴として訴訟提起後併合されています。すると、ユーチューブ・エルエルシーは、IPアドレスなどコンテンツプロバイダが保有する情報しか保有しておらず、氏名・名称などについては、グーグル ・エルエルシーが保有しているため、別訴提起後併合したという推測ができます(あくまで推測であり、何か他に特別の事情があった可能性もあります。)。

    つまり、あくまで推測ですが、仮処分などについてコンテンツプロバイダからIPアドレスなどの開示を受ける場合はユーチューブ・エルエルシーを相手にすれば良いが、氏名や住所の開示を求める場合は、相手方を変えてグーグル ・エルエルシーに対して開示を請求しなければならない可能性が示唆されます。

    本件争点(本件発信者情報2-2の保有)

    本件で中心的な争点となったのは「各投稿記事の投稿に用いられた各アカウントを登録するために用いられた住所(本件発信者情報2-2)」保有の有無です。

    争点に対する裁判所の判断

    裁判所は、「この点,証拠(甲6,7,乙5~8)及び弁論の全趣旨によれば,本件サイトへ の動画投稿により広告収入を得ようとする利用者は,支払を受ける住所を登録して Google AdSenseアカウントを開設する必要があり,同アカウントの 中には被告グーグルが管理するものがあるが,同アカウントは,本件サイトへの動画投稿の際に登録が必要となるアカウントとは独立した異なるものであることが認められる。そうすると,本件各投稿者が本件各動画の投稿により広告収入を得る目的でGoogle AdSenseアカウントへの登録をし,その結果,被告グーグルが本件各投稿者に係る支払先住所に係る情報を管理していたとしても,同情報 は,本件各動画の投稿に用いられた各アカウントを登録するために用いられたものには該当しないから,被告グーグルが本件発信者情報2-2を保有しているということはできない」と判断しました。

    争点の意味合い

    上記の争点は、住所は、投稿するためのものではなく、広告収入を得るためのものであるから、グーグルエルエルシーは、「広告収入を得るために用いられた住所」という情報は保有しているが、「各アカウントを登録するために用いられた住所」という情報は保有していないという判断となったようです。

    ここは、争点の立て方の問題で、「広告収入を得るために用いられた住所」という情報の開示を求めれば、保有性は認められるが、今度は、そもそも発信者情報に当たるかが(かなり激しく)争われたのではないかと思います。

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