著作権法の存在理由としてインセンティブ論と自然権論が存在しています。
インセンティブ論は、著作権の付与が創作者に創作のモチベーションを与えることをもって、著作権法の存在理由としています。すなわち、政策的に創作を奨励し、動機づけをするために著作権が与えられるという考え方です。
しかし、本当にそれだけでしょうか。こうした積極的なインセンティブ論は、修正されるべきと考えています。そもそも、著作権法によって創作のモチベーションが発生することは無いと言った方がいいかもしれません。
著作権が欲しくて創作する者など、皆無だと考えられます。
著作権法の存在理由は、積極的なインセンティブ、すなわち創作意欲の動機付けではなく、消極的な創作意欲及びその実現過程の保護に求められるべきと考えます。
すなわち、創作した作品が勝手に利用されることでモチベーションが下がったり、創作の対価が適正に分配されないことで創作へのモチベーションを具体化する時間を奪われることが無いように、政策的に創作者の内から湧き出すモチベーションや創作意欲の実現過程を阻害する因子を取り除くことで後見的に創作を保護し、環境によりモチベーションや創作意欲の具現過程が破壊されることを防ぐ点に、著作権の存在意義を見出すべきという視点です。
創作意欲は本来、人の内側から自然と湧き出してくるものです。それを法律が発生させることはそもそも難しいと考えられます。そうした、積極的な動機付けを法律が担うことよりも、法律にできるのは、自然と湧き出してきた人の創作意欲を削がないこと、創作意欲を破壊するような因子を適正に取り除くことに求めるべきと考えられます。
そのためのツールが著作権であると考えるべきでしょう。
また、そうした著作権の存在意義に照らしたとき、出版社(プラットフォーマー)と作家(クリエイター)の利害対立にも著作権法は競争法的な観点から積極的に介入していくべき場面もあると思料されます。すなわち、プラットフォーマーとクリエイターの力関係により、もはや創作意欲の発現が阻害されている状況があると言える場合は、(それを著作権法と呼ぶべきかはともかくとして、)積極的に介入して創作意欲の具体化過程を保護すべきと考えます。
そのような著作権法を巡り、弊所では紛争の解決から、契約などの相談業務、その他セミナーやコンテンツ制作業務まで幅広く対応しています。著作権に関するご相談や争訟につきましては、弁護士齋藤理央にご用命ください。