Contents

Eicリーガルコンテンツ

法律は、基本的にビジネス上使用人に対して包括的な代理権を付与することを認め、ただし、包括的な代理権について制限を設けることで第三者が損害を受けることがないように手当を置いています。

個人事業主や会社法人から使用人が包括的に代理権を付与される場合に法律上ルールはありますか?

ビジネス上、個人事業主や会社法人から使用人が包括的に代理権を付与される場合があります。この場合のルールについて法律上ルールが定められています。

では、法律はどのような規定を置かれているのか具体的な条文を見ていきましょう。

商法上の規定はどのような内容でしょうか

商人から、ある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人について、 商法第二十五条1項は、「商人の営業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人は、当該事項に関する一切の裁判外の行為をする権限を有する」と定めています。

また、同2項は、「前項の使用人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない」と定めます。

会社法の規定はどのような内容でしょうか

また、会社法人についても、会社法人から「ある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人」について、会社法第十四条1項は、「事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人は、当該事項に関する一切の裁判外の行為をする権限を有する」と定めています。

また、同2項は、「前項に規定する使用人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない」と定めています。

このように会社法上も商法とほぼ同様の規定が置かれています。

使用人に与えた包括的代理権を巡って裁判例はありますか?

例えば、改正前の条文に対する判断として、下記の最高裁判所裁判例があります。

最高裁判例

最高裁昭和60年(オ)第1300号平成2年2月22日第一小法廷判決・裁判集民事159号169頁は、以下のとおり条文の趣旨、代理権の授与の主張立証責任、善意の第三者の意義などについて判示しました。

同裁判例は商法43条1項(現会社法14条1項・商法25条1項)の趣旨についてどのような解釈を示していますか

同判例は、商法43条1項(現会社法14条1項・商法25条1項)の趣旨について下記のとおり判示しました。

すなわち、最高裁判所は「商法四三条一項は、番頭、手代その他営業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人は、その事項に関し一切の裁判外の行為をなす権限を有すると規定しているところ、右規定の沿革、文言等に照らすと、その趣旨は、反復的・集団的取引であることを特質とする商取引において、番頭、手代等営業主からその営業に関するある種類又は特定の事項(例えば、販売、購入、貸付、出納等)を処理するため選任された者について、取引の都度その代理権限の有無及び範囲を調査確認しなければならないとすると、取引の円滑確実と安全が害される虞れがあることから、右のような使用人については、客観的にみて受任事項の範囲内に属するものと認められる一切の裁判外の行為をなす権限すなわち包括的代理権を有するものとすることにより、これと取引する第三者が、代理権の有無及び当該行為が代理権の範囲内に属するかどうかを一々調査することなく、安んじて取引を行うことができるようにするにあるものと解される」と判示しています。

最高裁判所は代理権の授与まで主張立証する必要はないと判断したのですか?

はい。最高裁判所は、次のように述べて、「当該使用人が営業主からその営業に関するある種類又は特定の事項の処理を委任された者であること及び当該行為が客観的にみて右事項の範囲内に属することを主張・立証」すれば足りるとしました。

最高裁判所は、「したがって、右条項による代理権限を主張する者は、当該使用人が営業主からその営業に関するある種類又は特定の事項の処理を委任された者であること及び当該行為が客観的にみて右事項の範囲内に属することを主張・立証しなければならないが、右事項につき代理権を授与されたことまでを主張・立証することを要しないというべきである」と判示しています。

最高裁判所は、善意の第三者の意義について重過失を含まないと判断したのですか?

はい。最高裁判所は、善意の第三者に重過失のある第三者は含まれないと判示しています。

そして、右趣旨に鑑みると、同条二項、三八条三項にいう「善意ノ第三者」には、代理権に加えられた制限を知らなかつたことにつき過失のある第三者は含まれるが、重大な過失のある第三者は含まれないと解するのが相当である。

最高裁判所はどの様に事例における当てはめをしましたか?

最高裁判所は下記のとおり重過失までは認められない第三者を善意の第三者とした原審を是認する判断を示しました。

すなわち、最高裁判所は、「原審は、右と同旨の見解に立ち、Xが、上告人の物資部繊維課洋装品係長として、その担当業務である洋装衣料品の売買取引に関する業務を処理していた事実を認定して、同人は商法四三条一項所定の使用人に当たるものとし、かつ、その代理権に加えられた制限を知らなかったことにつき被上告人の代理人…に重大な過失があったとは認められないとして、被上告人の請求を認容しているのであって、右認定判断は原判決挙示の証拠関係に照らして首肯するに足り、原判決に所論の違法はない」と判断しています。

弁護士齋藤理央の顧問契約

弁護士齋藤理央の法人顧問契約の内容は、下記リンク先に詳述しています。興味のある方はぜひご覧下さい。

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。