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ここでは、令和2年6月5日改正法が成立し、令和3年1月1日より施行されたダウンロード全面違法化に関する改正著作権法について、ダウンロード違法化の点に焦点を当てた解説や弊所パブリックコメントなどの情報発信をまとめています。

PR 弁護士齋藤理央は、著作権が得意な弁護士です。企業や個人の著作権に関する法的疑問点について、リーガル調査や、法律相談業務を受け付けています。著作権についてご相談や調査事項がある際は、お気軽にお問い合わせください。

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    ダウンロード違法化の趣旨

    2020年3月10日ダウンロード違法化法案が閣議決定され、条文案が公開されました。その後、改正法が成立し2021年1月1日より施行されています。

    この趣旨は、すでに厳格な刑事罰を含めた法規制がされているアップロード規制に比して、何らの規制対象となっていないダウンロードについて法規制をすることで、アップロードとダウンロードの両面から「侵害コンテンツの拡散・利用を防止していく」点にあるとされています(侵害コンテンツのダウンロード違法化に関するQ&A(基本的な考え方)【改正法成立後版】令和2年12月24日文化庁 著作権課)。

    このダウンロード規制は、『海賊版サイトの収入源を絶つための「広告出稿の抑制」、情報検索サービスにおいて海賊版サイトが表示されないようにする「検索サイト対策」など』、総合的な対策の一環とされています(上記「基本的な考え方」)。

    違法に自動公衆送信される著作物の私的使用目的のデジタル方式複製の無制限違法化の建付けについて

    違法に公衆送信される著作物のダウンロードの無制限の違法化(※1)を含んだ著作権法改正に関するパブリックコメントが募集されています。意見募集は2019年1月6日までとされています。

    そこで、今回の静止画等ダウンロード違法化(※1)に関する法律的な枠組みを記事にしたいと思います。もしパブリックコメントもご検討されている方がいれば、参考にして頂ければ幸いです。

    ※1 なお、静止画等ダウンロード違法化という表現は正確でなく、違法に自動公衆送信された著作物のダウンロード無制限違法化と表現して良い改正内容かと理解しています。その意味でタイトルにも無制限違法化という表現を選択しました。

    複製権(権利者以外の複製は禁止)

    そもそも、著作権のうち、複製権という支分権が定められています(著作権法21条)。簡単に言えば、著作物をコピーすることを禁じた最も基本的な著作権という位置づけになります。著作権法は、著作権者か、著作権者から同意を得た者でない限り、著作物を複製することを禁止しています。そもそも、静止画も動画も音声も、すべて複製権者に無許諾で著作物を複製することは原則的に禁止されています。

    複製とは

    複製は著作物の本質的特徴を覚知するに足るものを有形的に再製する行為を指します。

    電子データの複製とは

    電子データは、複製も容易です。したがって、電子データについては単純に同一のデータ(電荷乃至磁場の状態で存在しPCに一定の挙動を実施させる情報。)をクローニングしただけでは複製に該当しないと整理されている場合があります。

    例えば、電子データは基本的に、PC内のメモリー部(※1)でのデータのクローニング、ハードディスク内(※2)でもキャッシュ領域でのデータのクローニング(※3)を行っても、著作権法にいう「複製」に当たらないという見解も有力です。

    なお、メモリー部でのデータのクローニングはPCの通電が失われることで一般的に電荷の状態で存在するデータも消失するため、有形性を伴わず複製に該当しないと説明しやすい部分です。

    これに対して、通電状態が失われてもデータが消失しないハードディスク内のキャッシュ領域でのデータ保存について、複製に該当しないという法解釈には、疑問も示されているところです。そこで、PCハードディスクのキャッシュ領域へのデータの保存については、著作権法47条の8(平成30年改正後は47条の4第1項)により適法化されるという考え方もあります。

    いずれにせよ、今回問題となっているのは、ハードディスク内でも、キャッシュ領域(他のデータが一定の容量に至った時に自動で消去される領域)外にデータをクローニングする場合です。ダウンロード無限定違法化の場面では、この、ハードディスク内でも、キャッシュ領域外にデータをクローニングする行為を指して「ダウンロード」と理解するのが正しいものと考えられます。

    ※1 ここでは、CPU内の一部記憶装置なども含み、一般的にPCが通電しなくなると自動的に消失する一般的に電荷の状態のデータを指しています。

    ※2 PCが通電しなくなっても消失しないハードディスク領域内の一般的に磁場の状態で存在するデータを指しています。

    ※3 プログレッシブダウンロードにおいてもキャッシュが残存することがあります。この場合、キャッシュ領域へのデータ保存と同様に考えられます。

    私的使用のための複製

    今回静止画像等を含めて無制限のダウンロードが違法化される法改正が検討されています。しかし、上記のとおり、PC内のキャッシュ領域外のハードディスクに著作物を包含したデータを再製することは、静止画であっても動画であっても音声であっても元々原則的に権利者の意思によらなければ、違法とされています。

    では、今回静止画等ダウンロードが違法化されるという議論は、どういった改正を意味しているのでしょうか。

    今回静止画等ダウンロードが違法とされるという文脈は、著作権法30条により私的使用のためのダウンロードが適法化されているという建付けが前提になっています。

    すなわち、複製について著作権法30条1項は、「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること」(私的使用)を目的とする場合に限り、適法(複製を禁止しない)と定めています(著作権法30条1項)。

    違法に公衆送信された著作物が含まれる音及び影像の録音・録画違法化

    以上述べたように、原則複製は違法という建付けの著作権法にあって、私的使用目的の複製は適法とされました。さらに、違法に公衆送信された著作物を含んだ音及び影像の複製(=録音、録画)については、例外的に適法とされるはずの私的使用目的での場合であっても、さらに例外的に違法とされました。つまり、原則的に違法なダウンロードについて例外的に適法とされる場合が定められ、例外的に適法な場合から、音及び影像についてはさらに例外的に除外されたのです。

    ただし、私的使用目的の複製が許されないのは、著作物が違法に公衆送信されている場合に限られます。適法な公衆送信については、私的使用の範囲内であれば、デジタル方式のダウンロードも適法という事になります。

    静止画等ダウンロード違法化とは

    今回の静止画等ダウンロード違法化は、音及び影像と同様に、違法な自動公衆送信の対象とされた著作物の私的使用目的の複製について、私的使用の場合は適法と定めた著作権法30条1項の適用対象から、さらに例外的にデジタル方式の複製を行う場合を無限定(※1)に除外しようとするものと理解されます。

    つまり、違法に自動公衆送信される著作物については、私的使用目的であっても、デジタル方式の複製は無制限に違法となります。

    ※1 改正条文の予測から、音及び映像という客体の限定を取り払い、違法に自動公衆送信される著作物の私的使用目的におけるデジタル方式の複製は全て無限定に違法化するものと理解しています。

    その事実を知りながら行う場合

    さらに、違法に公衆送信された著作物の私的使用のためのデジタル方式の複製は、適用場面を限定するためのファクターを有しています。それが、「その事実を知りながら行う場合」という主観要件です。

    現状は、残念ながら、違法に公衆送信された著作物もインターネット上には多く見受けられる状況です。しかし、違法に公衆送信されていることを知っている場合となると、さらに適用場面は限定される事になります。

    このように、対象範囲を無限定に拡大する改正といっても、もともとかなり限定された場面の適用について、客体を限定だけを取り払うという話で、全体からみれば、今回の改正の影響は、限定的なものにとどまると考えられます。

    改正条文

    著作権法第三十条 

    1 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。

    一 公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいう。)を用いて複製する場合

    二 技術的保護手段の回避(第二条第一項第二十号に規定する信号の除去若しくは改変その他の当該信号の効果を妨げる行為(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約によるものを除く。)を行うこと又は同号に規定する特定の変換を必要とするよう変換された著作物、実演、レコード若しくは放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像の復元を行うことにより、当該技術的保護手段によつて防止される行為を可能とし、又は当該技術的保護手段によつて抑止される行為の結果に障害を生じないようにすること(著作権等を有する者の意思に基づいて行われるものを除く。)をいう。第百十三条第七項並びに第百二十条の二第一号及び第二号において同じ。)により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになつた複製を、その事実を知りながら行う場合

    三 著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画(以下この号及び次項において「特定侵害録音録画」という。)を、特定侵害録音録画であることを知りながら行う場合

    四 著作権(第二十八条に規定する権利(翻訳以外の方法により創作された二次的著作物に係るものに限る。)を除く。以下この号において同じ。)を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の複製(録音及び録画を除く。以下この号において同じ。)(当該著作権に係る著作物のうち当該複製がされる部分の占める割合、当該部分が自動公衆送信される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものを除く。以下この号及び次項において「特定侵害複製」という。)を、特定侵害複製であることを知りながら行う場合(当該著作物の種類及び用途並びに当該特定侵害複製の態様に照らし著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除く。)

    2 前項第三号及び第四号の規定は、特定侵害録音録画又は特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行う場合を含むものと解釈してはならない。

    3 私的使用を目的として、デジタル方式の録音又は録画の機能を有する機器(放送の業務のための特別の性能その他の私的使用に通常供されない特別の性能を有するもの及び録音機能付きの電話機その他の本来の機能に附属する機能として録音又は録画の機能を有するものを除く。)であつて政令で定めるものにより、当該機器によるデジタル方式の録音又は録画の用に供される記録媒体であつて政令で定めるものに録音又は録画を行う者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。

    今回の改正で権利制限の例外とされた利用方法は、4号で定められた「著作権…を侵害する自動公衆送信…を受信して行うデジタル方式の複製(録音及び録画を除く。…)」です。3号の「自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画」に上記の「自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の複製」が追加されました。

    立法課程において参考資料として公開されている「ダウンロード違法化の対象範囲の見直し」に関する留意事項のなかにも「自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の複製」という文言がありました。

    デジタル方式とは

    上記留意事項中には、紙面にプリントアウトする場合は、私的利用であれば改正前と同様に違法化されないと記載されています。紙面にプリントアウトする場合違法とならない理論構成は「デジタル方式」に該当しないためと思料されます。しかし、現行のスキャナとPDFソフトの性能(※1)から考えれば脱法が容易であるうえ、紙媒体のプリントアウト及びプリントアウトされた紙媒体のスキャニングが「デジタル方式」に該当しない論拠が現状では不明確(※2)とも思えます。

    ※1 OCR等の性能が向上し紙媒体のスキャニングデータを容易にかつ、非常に正確にデジタルデータに変容させることが出来ます。

    ※2 「デジタル方式」という限定の趣旨は、データが容易に複製拡散される点にあります。そうすれば、途中にアナログの複製を経由したとしても、最終的にデジタルデータとして複製される場合、「デジタル方式」の複製に該当すると考えるべきではないでしょうか。

    図説改正著作権法30条1項4号

    著作権を侵害する自動公衆送信

    そもそも今回の改正で問題となるのは、著作権を侵害する自動公衆送信の受信を受けて行うデジタル方式の複製です。つまり、著作権を侵害しない正常な自動公衆送信は今回の改正による影響を受けないことになります。

    著作権を侵害する自動公衆送信のもっとも典型的な例は、著作権者に無断で行われる自動公衆送信です。

    つまり、権利者が適法にアップロードした著作物の送信は改正著作権法の対象ではないということになります。

    図でいうと右のケース、つまり権利者に無断でアップロードされたような場合に代表される、「権利侵害に基づく自動公衆送信」が法改正の対象ということになります。

    問題となるデジタル方式の複製

    デジタル方式の複製の典型例はダウンロードです。このことは、今回の改正がダウンロード違法化と呼ばれていることからも明らかです。

    すなわち、サーバーからのダウンロードによってHDDドライブにデータが生成されることは、原則的にデジタル方式の「複製」に該当します。

    ブラウンジングの際のブラウザキャッシュ生成

    このようにダウンロードは原則的にデジタル方式の複製に当たりますが、ブラウンジング時にHDD(ハードディスクドライブ)のキャッシュ領域においてブラウザキャッシュが生成される点は、複製に当たらないというのが支配的な見解です。

    このように、同じHDDなどにデータが生成される場合でも、キャッシュ領域にデータが生成される場合は「複製」に当たらないと考えられるか、あるいは著作権法47条の4第1項により適法となると考えられます。

    パブコメ募集の際の資料であるウンロード違法化の対象範囲の見直し」に関する留意事項においても、「単に視聴・閲覧する行為は違法となりません。また、視聴・閲覧に 伴うキャッシュやプログレッシブダウンロードについても、著作権法第47 条の8(平成30年改正後は第47条の4第1項)により適法となります。」との見解が示されています。

    キャッシュを保存しないブラウジング

    直接メモリからサイトを表示してキャッシュを生成しない場合はクライアントの通電状態消失でデータも喪失される揮発的なデータの生成であるため有形的再製性は観念する余地がなく端的に複製に当たらないでしょう。動画のストリーミングに相当します。

    文化庁資料ではストリーミングとオンラインリーディングサイトを同列にしている表記もありますが、ウェブサイトの場合ストリーミングと同等になるのは、オンラインリーディングサイト配信側が.htaccessファイルでノーキャッシュ設定をしているような、かなり特殊な事例に限られるのかなと思われます。

    なお、HTMLでのノーキャッシュ指定はHTMLファイルはキャッシュされませんが画像ファイルはキャッシュされるため画像についてはブラウンジングの際のブラウザキャッシュ生成が生じてしまうと考えられます。

    スクリーンショット

    スクリーンショットもデジタル方式の複製に該当し得るため、今回の法改正の対象とされています。

    プリントアウト

    データのダウンロードをしない場合でも、ブラウザをプリントアウトすれば、デジタル方式の複製にあたり得るように思われます。しかし、著作物をプリントアウトすることは、「デジタル方式」にあたらないため、今回の改正法については対象外となるという見解が示されています。

    さらに、プリントアウトした著作物をスキャンしてPDFにする行為も、デジタル方式の複製とはならないため今回の改正の対象外とされています。

    「ダウンロード違法化の対象範囲の見直し」に関する留意事項には、「ウェブサイトに掲載されたテキスト・画像をプリントアウトする行 為や、そこでプリントアウトされたものを更にPDF化してコンピュータに 保存する行為は違法とはなりません」との見解が示されています。

    特定侵害複製であることを 知りながら行う

    さらに、デジタル複製の違法化は、著作権侵害を伴う自動公衆送信であることを知っていた場合に行うデジタル方式の複製に限定されています。

    例えば、ダウンロードやスクリーンショットをしたとしても、著作権を侵害しない自動公衆送信だと考えていたのであれば、従来どおり適法化されることになります。

    これに対して、著作権を侵害する自動公衆送信であることを知ったうえで、ダウンロードやスクリーンショットをした場合もこれまでは私的使用の範囲であれば適法でした。しかし、改正法施行後、このようなダウンロードやスクリーンショットなどのデジタル方式の複製は、適法私的使用の範囲の複製としての適法化の効果を受けられず、違法となり得ます。

    ただし、著作権者の権利を不当に害さない場合などさらに違法化を限定する条件が改正案には盛り込まれています。改正後もダウンロード違法化の範囲はかなり限定されていると言えるでしょう。

    たとえば、改正著作権法著作権法30条2項は、下記のとおり定めてダウンロード違法化を含めた私的使用の例外の範囲を限定しています。

    改正著作権法案(著作権法30条2項)

    前項第三号及び第四号の規定は、特定侵害録音録画又は特定侵害複製 であることを重大な過失により知らないで行う場合を含むものと解釈し てはならない。

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