特許庁等の審決等取消訴訟
取消訴訟は、行政事件訴訟法に定められた抗告訴訟です。特許法など工業所有権法上、特別の規定も多く定められています。
目次
①処分性
処分の取消の訴えとは、「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(…以下単に「処分」という。)」の取消を求める訴えを言います(行政事件訴訟法3条2項)。この「処分」の意義が問題となりますが、公権力の主体たる国または公共団体の行為のうち、国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定する作用を法律上認められたものをいうと理解されています。
工業所有権法上、「取消決定」又は「審決」の取消訴訟などが認められています(特許法178条1項)。
②当事者適格
①原告適格
取消訴訟(行訴法9条1項)は、「取消を求めるにつき法律上の利益を有する者…に限り、提起…できる」と定められています。「法律上の利益を有する」とは、処分により法律上保護された利益を侵害され、侵害される恐れがあることをいいます。
「法律上の利益」は、処分の根拠法規が一般公益に吸収させることなく、個別的利益として保護するものでなければなりません。「法律上の利益」を有さないとして、原告適格を欠く場合、訴えは不適法であり、却下されることになります(行訴法7条、民訴法140条)。
後述するとおり工業所有権法上、『前項の訴えは、当事者、参加人又は当該特許異議の申立てについての審理、審判若しくは再審に参加を申請してその申請を拒否された者に限り、提起することができる』(特許法178条2項)等と規定され、当事者適格は予め法定されています。
②相手方以外の者
処分の「相手方以外の者」が、取消訴訟を提起する場合、行訴法9条2項が適用されることになります。
すなわち、裁判所は①-ⅰ.処分の根拠法令のみによることなく、関係法規も参酌しながら、①-ⅱ.形式的な文言によるのでなく、法令の趣旨目的を考慮し、また、②-ⅰ.処分において考慮されるべき利益の内容及び性質をも考慮し、②-ⅱ.処分が根拠法令に違反してなされたときに害される利益の内容、性質、侵害の態様及び程度をも勘案して、法律上の利益の有無を判断することになります。
特許法上の定め
特許法第百七十八条2項は、「前項の訴えは、当事者、参加人又は当該特許異議の申立てについての審理、審判若しくは再審に参加を申請してその申請を拒否された者に限り、提起することができる」と定めており、原告適格を例外的に定めています。
また、被告適格として特許法第百七十九条は、「前条第一項の訴えにおいては、特許庁長官を被告としなければならない。ただし、特許無効審判若しくは延長登録無効審判又はこれらの審判の確定審決に対する第百七十一条第一項の再審の審決に対するものにあつては、その審判又は再審の請求人又は被請求人を被告としなければならない」と定めます。
③訴えの利益
法令の解釈から一般的、抽象的に「法律上の利益」が肯定され、原告適格が認められた場合でも、原告の法的利益が客観的に回復可能でなければ訴えを提起する意味はなく、不適法却下(行訴法7条、民訴法140条)されることになります。
もっとも、処分、裁決に効果がなくなったことは、直ちに回復可能な法的利益が失われたことを意味するわけではありません(行訴法9条1項かっこ書)。
④出訴期間
取消訴訟は、「処分又は裁決があったことを知った日から六箇月」提起できる(行訴法14条1項反対解釈)ことになります。「知った」とは、現実に処分、裁決がなされたことを知った日をさします。継続的処分については、侵害認識時説と、侵害終了時説などがあります。侵害を認識したときと解するのが「知った」との文言に適合的であると考えられます。
工業所有権法の場合ー特許法が定める30日間の出訴期間の例外
特許法第百七十八条3項は、「第一項の訴えは、審決又は決定の謄本の送達があつた日から三十日を経過した後は、提起することができない」と定め、同4項は、「前項の期間は、不変期間とする」旨定めています。このように、6ヶ月の出訴期間が30日に大きく短縮されているため注意が必要です。
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