インターネット法務とはどういった法分野を指すのでしょうか。端的に言えばインターネット法分野は,法分野を横割に区分したとき,その一定の法領域に渡って縦方向に分布する新たな法領域とらえられると考えられます。
インターネットは,社会的な情報インフラストラクチャーです。すなわち,法分野を民事法,刑事法,行政法分野などと横割りで考え,さらに民事法分野の中で知的財産権法務,損害賠償法務などと詳細に細分化したとします。ここにインターネットというインフラの出現により,インターネット法分野という横割りの新しい法分野が出現したというよりは,すべての法領域にまたがって新たにインターネット・インフラの上で発生する法務が出現したと言った方がインターネット法務を正確に把握しやすいものと思料されます。
たとえば、インターネット法務は,民事法上も,刑事法上も,行政法上も存在します。また,民事法上のなかでも,損害賠償法分野においても,知的財産権法分野においても,存在します。すなわち,インターネットは情報インフラであることから,たとえば民事・刑事双方で規制される名誉棄損,著作権侵害,商標権侵害など従来存在した法規制で規制された行動等のうち,情報の発信や授受のみで実現可能な行動等について存在することになります。
反対に,情報のやり取りだけで発生しない問題,例えば交通事故などのように,インターネット上で生じ得ない事象については,インターネット法務は存在しないことになります。