著作者及び実演家の名誉回復等の措置請求権
著作権法115条は、次のとおり定めます。
著作権法115条 著作者又は実演家は、故意又は過失によりその著作者人格権又は実演家人格権を侵害した者に対し、損害の賠償に代えて、又は損害の賠償とともに、著作者又は実演家であることを確保し、又は訂正その他著作者若しくは実演家の名誉若しくは声望を回復するために適当な措置を請求することができる。 |
ここにいう名誉声望は、社会的名誉声望を言い、名誉感情は含まないものと理解されています。
このように、著作者人格権、実演家人格権を侵害された著作者、実演家は、権利侵害によって低下した社会的名誉声望を回復させる措置を訴外ではもちろん、訴訟上請求していくことが出来ます。
昭和61年5月30日最高裁判所第二小法廷破棄差戻判決(昭和58年(オ)516号 パロディー事件第二次上告審) 抜粋
(旧著作権)「法三六条ノ二」(現著作権法115条)「は、著作者人格権の侵害をなした者に対して、著作者の声望名誉を回復するに適当なる処分を請求することができる旨規定するが、右規定にいう著作者の声望名誉とは、著作者がその品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価、すなわち社会的声望名誉を指すものであつて、人が自己自身の人格的価値について有する主観的な評価、すなわち名誉感情は含まれないものと解すべきである(最高裁昭和四三年(オ)第一三五七号同四五年一二月一八日第二小法廷判決・民集二四巻一三号二一五一頁参照)。これを本件についてみると、原審の適法に確定した事実関係中には、上告人の被上告人に対する本件著作者人格権侵害行為により、被上告人の社会的声望名誉が毀損された事実が存しないのみならず、右事実関係から被上告人の社会的声望名誉が毀損された事実を推認することもできないといわなければならない。そうすると、被上告人の著作者人格権に基づく謝罪広告請求を認容すべきものとした原判決は、経験則に反して被上告人の社会的声望名誉が毀損されたと認定したか、又は法三六条ノ二の解釈適用を誤つたものといわなければならず、右違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨は理由があり、原判決中著作者人格権に基づく謝罪広告請求に係る部分は破棄を免れない。そして、右部分について、右の観点に立つて更に事実関係について審理を尽くさせる必要がある。」 |
請求権者
原則、著作者、実演家ですが、著作者、実演家の死後においては、その遺族が名誉回復等の措置を請求できる場合があります。
著作権法116条 1項 著作者又は実演家の死後においては、その遺族(死亡した著作者又は実演家の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹をいう。以下この条において同じ。)は、当該著作者又は実演家について第六十条又は第百一条の三の規定に違反する行為をする者又はするおそれがある者に対し第百十二条の請求を、故意又は過失により著作者人格権又は実演家人格権を侵害する行為又は第六十条若しくは第百一条の三の規定に違反する行為をした者に対し前条の請求をすることができる。 2項 前項の請求をすることができる遺族の順位は、同項に規定する順序とする。ただし、著作者又は実演家が遺言によりその順位を別に定めた場合は、その順序とする。 3項 著作者又は実演家は、遺言により、遺族に代えて第一項の請求をすることができる者を指定することができる。この場合において、その指定を受けた者は、当該著作者又は実演家の死亡の日の属する年の翌年から起算して五十年を経過した後(その経過する時に遺族が存する場合にあつては、その存しなくなつた後)においては、その請求をすることができない。 |
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