出版権の設定
複製権保有者、公衆送信権保有者(併せて複製権等保有者(著作権法79条1項))は、出版権を設定することができます(著作権法79条1項)。ただし、複製権、公衆送信権を客体とする質権設定者がいるときは、その承諾を得なければなりません(同条2項)。
出版権の内容
出版権は、頒布の目的をもって、著作物を原作のまま印刷、その他の方法で複製する権利及び、原作のまま公衆送信を行うことを専有する権利です(著作権法80条1項柱書、1号、2号)。複製権等保有者も、契約で特段の定めをしない限り、出版権に相当する行為を行うことは、以後、禁止されることになります。
このように出版権の設定は、特定の限定された複製権、公衆送信権の一部譲渡に近い性質を有する行為です。
2次的著作物の出版等について
出版権は、原作のまま行う特定の複製及び公衆送信を出版権者に専有させる権利です。この意味で、2次的著作物に対しては、出版権の効力が及ばないのでしょうか。
2次的著作物の上には、2次的著作物を創作した者に帰属する2次的著作物を客体とする著作権(21条~27条の権利)と、2次的著作物から直接感得できる原著作物を客体とする著作権(21条~27条の権利)及び、2次的著作物から直接感得できない部分にも及ぶ2次的著作物(の創作的表現部分)を客体とする原著作権者の権利(著作権法28条)が観念し得ます。このうち、2次的著作物の創作性の部分には、原著作物を客体とする複製権及び公衆送信権を基礎にする出版権は及ばないものとも考え得ます。
しかし、2次的著作物上に現れた原著作物(と表現の本質的特徴が共通する部分)については、原著作物の複製権、公衆送信権を基礎に置く原著作物の出版権が及ぶ可能性は十分に想定し得るところです。
その意味で、2次的著作物に出版権が及ぶ可能性、範囲については、ケースバイケースともいえ、今後の判断の集積が待たれる分野のひとつということができます。ただし、よほど特殊なケースでない限り、出版権の効力が及ぶ可能性を念頭において、出版権者の利用許諾も含めて得るなどすべきものと考えられます。