著作物の私的使用
私的使用の範囲の複製・翻案
著作権の目的となっている著作物は、個人的な利用、家庭内での利用、その他これに準ずる範囲での利用においては、複製することができます(著作権法30条1項柱書)。また、個人的な利用、家庭内での利用、その他これに準ずる範囲での利用においては、翻訳、編曲、変形、翻案を行うことができます(著作権法43条1号)。
個人的な利用、家庭内での利用、その他これに準ずる範囲での利用を、私的使用と言います。
個人的な利用は、個人の部屋で自分のためだけに著作物を利用するような場合です。家庭内での利用というのは、自分の他に家族のために著作物を利用するような場合です。少しわかりにくいのが、「これに準ずる限られた範囲」が具体的にどの範囲を指すかです。この点は、人的繋がりが強く、かつ、小規模なグループに限られると考えられます。したがって、人的な繋がりが強くても、あまりに人数の多いグループになると、私的範囲とはとても言えないことになりますし、仮に小規模でも人的な繋がりが全くない人の集まりで著作物を複製・翻案することは出来ないことになります。
私的使用の3つの例外
1 私的使用の範囲であっても、複製を公衆使用に供するための自動複製機器を用いて複製することはできません(著作権法30条1項1号)。また、著作権法30条1項の適用がないため、著作権法43条1号の適用もなく翻訳、編曲、変形、翻案も禁じられます。
自動複製機器とは、少なくとも主要な部分において自動化されている、複製機能をもった機器類を言います。例えば、コピー機などです。コピー機も家庭用のものであれば、法30条1項1号には該当しません。同じコピー機でも、公衆の用に供されていることが必要になります。典型的にはコンビニエンスストアに設置されているコピー機などが公衆の使用に供することを目的とする自動複製機器に当たります。
2 技術的保護手段を回避することにより複製が可能になった場合、あるいは著作物の複製結果に生じる障害が除去されていた場合、技術的保護手段の回避が行われることを知って行う複製は、たとえ私的範囲での使用であっても許されません(著作権法30条1項2号)。また、著作権法30条1項の適用がないため、著作権法43条1号の適用もなく翻訳、編曲、変形、翻案も禁じられます。
3 故意に著作権を侵害して行われる自動公衆送信を媒介として受信した著作物を複製することは、たとえ私的使用の範囲であっても許可されません(著作権法30条1項3号)。また、著作権法30条1項の適用がないため、著作権法43条1号の適用もなく翻訳、編曲、変形、翻案も禁じられます。
この記事へのコメントはありません。