この記事は、前回に続いて、2019年著作権法学会研究大会のうち、個人的に実務上重要と感じた点や、その他考えた点を記した記事です。今回は個別報告第2部、権利制限規定の歴史的展開について、記載しています。
英国は、米国にいうフェアユースに相当する規定はないが、個別規定と一般的なフェアユース規定の中間として、目的の限定が厳格なフェアディーリング規定をもつとのことです。
アメリカやカナダは、アメリカ型の抽象的なフェアユース規定の導入には消極的な姿勢とのことです。
日本においては、現行著作権法や一般条項を活用すべきという見解があり、現に裁判所も積極的な法解釈を行っている可能性が示唆されました。
世界的には権利制限規定を単純化する方向とのことです。
感想
200年前のイギリスの判決において示された「窃取の意思」概念は、現代に至ってもなお問題の本質をついているのではないかと感じました。つまるところ、意味もなく他人の労力を盗むような利用なのか、真に文化の貢献のために避けられない利用であるのか、現代における著作権争訟においても、本質はそこにあるように感じます。
後は、一般的なフェアユース規定をおいて裁判所の事案ごとの判断を重視するのか、個別具体的な権利制限規定をおいて立法段階による利害調整を重視するのか、役割分担の問題と思われます。例えば、英国フェアディーリング規定は、米国フェアユースにおける第一要素を立法段階である程度厳格に規定しているということになるのではないかと思います。
確かに、裁判所の比重を増せば訴訟件数、深刻に争われる事案も当然増えると思われます。
日本版フェアユースともいわれる法改正も行われ、司法の役割が増したとも捉え得る著作権実務において、歴史的なフェアユースの発展の歴史から学ぶことは多いようです。