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リーチサイト規制などを巡り、リンクを巡る著作権法の解釈が再度検討されるべき状況となっています。そこで、リンクを法的に禁圧するリーチサイト規制を念頭に現在のインラインリンクを巡る著作権法解釈の自身の最新の理解を簡単にご紹介しておきたいと思います。

一定の場合著作権を直接侵害するインラインリンクと著作権の幇助侵害を肯定し得る(インラインリンクを含めた)リンク一般

インラインリンクを、そもそもリンクの一内容として整理するかどうかは、大きな問題です。私見としては、インラインリンクはたまたまリンクを課題解決の手段として選択した、画像の埋め込み表示技術と捉えるべきと考えています。

そして、インラインリンクの画像の埋め込み統合の側面から、現行法でも著作権の保護が直接及ぶ一定の場合があるのではないかが議論の焦点ではないかと考えています。

さらに、インラインリンクについて著作権侵害が著作権法28条を介して直接成立するであろう場合について下記の記事で言及しました。

次に、インラインリンクのリンクとしての性質からは、インラインリンクを含めたリンク一般について、自動公衆送信権を片面的対向行為と捉える自説からは、ケースによってリンク全般に幇助侵害を認める場合がある、という結論になります。

この見解からは、リーチサイト規制は現行法でも幇助侵害が成立する行為のうち一定の悪質な幇助侵害をみなし侵害として直接の著作権侵害に昇格させる条項ということになります。

インラインリンクによって著作権が及ぶ可能性がある場面

以上に対して、インラインリンクに対して著作権が及ぶか明かでない場合として、リンク先ウェブページが被リンク著作物の2次的著作物とまで言えない、被リンク著作物とウェブページに、包含(収録)著作物、被包含(被収録)著作物の関係が成立する場面があります。

つまり、例えば映画の著作物に映り込んだ絵画や小道具などの美術品あるいは、映画音楽のバックミュージックなどは、映画の著作物と2次的著作物、原著作物の関係にないものの、映画の著作物に包含(収録)されるという関係に立ちます。

また、雑誌などの編集著作物と編集されたイラストや文章、写真などは一般的に2次的著作物と原著作物の関係とはならず、映画の場合と同様に編集著作物に包含(収録)される包含(収録)著作物と被包含(被収録)著作物の関係にある、と言えそうです。

同様の関係が、ウェブページと被インラインリンク著作物の間に成り立つ場合、包含(収録)著作物であるウェブページの公衆送信に、被インラインリンク著作物である各画像、文章、音楽などの公衆送信権が、被インラインリンク著作物単独の公衆送信権と別の公衆送信として観念される、という解釈の余地があるか否かが議論の中核とされるべきではないかと考えています。

つまり、ある著作物とある著作物が2次的著作物と原著作物の関係にない場合も、包含(収録)著作物(例えば映画)と、被包含(被収録)著作物(例えば映画に登場する美術品や映画のバッグミュージックなど)の関係を見出せる場合があると考えられます。

この場合、被包含(被収録)著作物単独の利用と、包含(収録)著作物に包含(収録)された被包含(被収録)著作物としての利用を別の利用と観念する余地があると考えています。

なぜなら、著作権法26条2項は、「著作者は、映画の著作物において複製されているその著作物を当該映画の著作物の複製物により頒布する権利を専有する」と定めて、被包含(被収録)著作物を単独で譲渡する場合は譲渡権を与えながら、包含(収録)著作物である映画を介して頒布する場合は譲渡権ではなく頒布権を与えているなど、被包含(被収録)著作物単体の譲渡と、被包含(被収録)著作物を包含(収録)した包含(収録)著作物の頒布(譲渡)を別の利用行為と観念していると解釈する余地があるからです。

加えてインラインリンクによって2次的著作物と原著作物の関係が成立する場合に著作権法28条を介して著作権が直接及ぶのに、包含(収録)著作物としての送信に対しては別個の公衆送信権が及ばないというのも著作権法26条2項との関係では不均衡とも言えそうです。

なぜなら、映画の著作物と原著作物2次的著作物の関係にある台本の著作者などには28条を介して頒布権が付与され、被包含(被収録)著作物と包含(収録)著作物の関係にある小道具などの美術品や音楽などの著作者には26条2項を介して頒布権が付与されることとパラレルに考えれば、リンク先ウェブページと原著作物2次的著作物の関係にある被リンク画像などの著作者には28条を介して公衆送信権が付与される以上、被包含(被収録)著作物と包含(収録)著作物の関係にある被リンク画像などの著作者には被包含(被収録)著作物単体の送信とは別に観念できる公衆送信として保護を及ぼさなければ均衡を欠くとも言い得るからです。

反面26条2項のような特殊な規定がない以上保護が及ばないという帰結もあり得るものと理解しています。

送信客体が異なること

加えてウェブページと被リンク画像の間に2次的著作物と原著作物の関係が見出せる場合、被リンク画像単独の送信と、28条を介して著作権が及ぶウェブページの送信については、送信客体として送信される情報が異なります。

自動公衆送信で送信される情報とは

そもそも、自動公衆送信において送信される客体としての情報とは何かが問題となります。

私見ではこれを、クライアントコンピューターが被送信著作物を再生し得る状態を獲得するための最後の情報と捉えています。

なぜなら、通常インターネットで著作物を送信するというとき、クライアントコンピューターに元々存在が予定されている情報と新たに送信された情報が組み合わさって、クライアントコンピューターに著作物を再生し得る状態が作出されるからです。

例えば単純な文字情報についても、通常フォントデータはクライアントコンピューターに存在しており、クライアントコンピューターに存在が予定されるフォントデータと結合して文字情報を再生し得る状態を作出する文字コードと呼ばれる情報だけが送信されることになります。

このように、インターネット通信においてはクライアントコンピューターに存在が予定されている情報があり、分析的に考えれば、当該情報と結合してクライアントコンピューターで著作物を再生できる状態を作出する行為を自動公衆送信と呼んでいると理解できることになります。

そうであれば、自動公衆送信によって送信される情報、送信可能化によって記録等される情報とは、クライアントコンピューターが送信されると評価される特定の著作物を再生し得る状態を獲得するために必要な最後の情報と解するべきと思料します。

このように解釈することが「最後の情報」が揃わなければクライアントコンピューターでまったく当該著作物は再生できないが、「最後の情報」がキーとなってクライアントコンピューターが一気に当該著作物を再生できる状態を獲得できるという実態と整合的だからです。また、このように理解することが、括弧書で送信可能化行為を「配線、自動公衆送信装置の始動、送受信用プログラムの起動その他の一連の行為により行われる場合には、当該一連の行為のうち最後のものをいう」と定める著作権法2条1項9の5号ロとも整合的だからです。

2次的著作物の場合の明かな送信客体の違い

以上の解釈を前提に被リンク著作物とリンク先ウェブページに原著作物と2次的著作物の関係が成立する場合を想定します。そうすると、原著作物である被リンク画像などを単独で再生し得る状態をクライアントコンピューターが獲得する場合に必要となる最後の情報と、2次的著作物たるリンク先ウェブページを再生し得る状態をクライアントコンピューターが獲得する場合に必要になる最後の情報は、明かに異なります。

前者は被リンク著作物の画像などの画像データ(JPEG、PNGなどの各種画像ファイル)です。これに対して後者は、HTMLデータです。

包含(収録)著作物関係への引き直し

この関係を包含(収録)著作物たるウェブページと、被包含(被収録)著作物たる各画像データなどに引き直しても同様です。

被包含(被収録)著作物たる各種画像データ単独の再生に必要な最後の情報は、画像ファイルです。

これに対して、被包含(被収録)著作物を包含した包含(収録)著作物たるウェブページを再生する状態をクライアントコンピューターが獲得するのに必要な最後の情報はHTMLデータです。

このように、包含(収録)著作物と被包含(被収録)著作物の間には、再生に必要となる最後の情報が明かに違うというリンク先ウェブページが2次的著作物として成立する場合の原著作物としての被リンク著作物と同様の関係が見出しえます。

議論の枢要

このように、インラインリンクの受信装置におけるデータ統合の側面からは、包含(収録)著作物と、被包含(被収録)著作物という、2つの著作物の関係性に関する論点が生じ得るものと理解しています。

この議論は、ハイパーリンクの場合には発生しない、インラインリンクの画像などのデータ統合技術としての性質から派生する論点と思料されます。

そして、2次的著作物と原著作物の関係が発生する場合は格別、インターネット上において包含被包含(収録被収録)という関係に立つ2つの著作物について、著作権法上どのように取り扱っていくかは、これまであまり議論がされておらず、今後議論が期待される部分だと思います。