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本項では、著作権法上の変形行為を保護する変形権について概説します。

著作権法27条は「著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する」と定めます。

そして、著作権法2条1項1号は、「二次的著作物」を、「著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物をいう」と定義してます。また、著作権法28条は、「二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する」と定め、二次的著作物上に権利が派生することを明言しています。

このように、著作権法は支分権として変形権を認め、変形の結果生まれた二次的著作物に権利を派生させています。

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    平面キャラクター(イラスト)の立体化

    たいやきくん事件(昭和52年3月30日東京地方裁判所判決(昭和51年(ワ)3895号))

    本件縫いぐるみは、縫いぐるみ人形であって、数種の色彩、柄の布地を裁断して縫製し、その内部に綿類等の芯を詰め入れ、魚の顔、体を形成しているが、その形態、表情は、本件原画のそれと殆ど同一であることが認められ、他に右認定をくつがえすに足りる証拠はない。

    右認定の事実によれば、本件縫いぐるみは、本件原画に依拠して、これを変形して製造されたものと認めるのが相当である。

    キューピー人形事件(平成13年 5月30日東京高等裁判所判決(平成12年(ネ)7号))

    本件著作物は、これら先行著作物と異なり、キューピーイラストの表現上の特徴をすべて備えており、これを立体的に表現したという点においてのみ創作性を有すると認められることは上記のとおりであるから、本件著作物は、キューピーイラストを原著作物とし、これを変形して立体的に表現したという点においてのみ創作性を有する二次的著作物であるというべきであって、被控訴人主張の先行著作物の二次的著作物ということはできない。

    ガレージキット事件第一審(平成 9年 7月17日京都地方裁判所判決(平成7年(ワ)1371号))

     1 一般に、漫画等のキャラクターをプラモデルや人形等に立体化する際、その立体化の過程において創作性が認められない場合には、そのプラモデルや人形は、美術著作物である当該キャラクターが描かれた漫画又は当該キャラクターの複製(著作権法二条一項一五号)であり、プラモデルや人形自体に第二次著作物としての著作物性を認めることはできない。しかしながら、キャラクターを立体化する場合においても、その立体化の過程において創作性が認められる場合には、当該キャラクターの描かれた漫画又は当該キャラクターの変形、すなわち美術著作物の変形(同法二条一項一一号、一〇条一項四号)として、第二次著作物としての著作物性が認められると解すべきである。

      2 本件についてこれを見るに、ガレージキットと呼ばれる模型ジャンルは、漫画等のキャラクターを原画に忠実に立体化するという意味において、同一のキャラクターを立体化する限り、できあがったガレージキットの模型原型に大きな相違はないはずである。
      そして、検証の結果によれば…各商品は、その形状等が類似していることが認められる(なお、被告模型原型は原告模型原型を改変したものであると主張されているので、ここでは、被告模型原型は比較の対象としないこととする)。
      
      3 しかしながら、前記第二、二6の事実及び証拠(甲一四、二七、二八、三〇、三四、四四、四五、原告本人八回・三四~三七、四三~四八頁)によれば、次の事実が認められる。
      ガレージキット、特に、ロボット、人形などのキャラクター模型の場合、実物は存在しないので、造型の元となるのは、漫画、イラスト、アニメの画面等の平面であるところ、造型師は、それらの各資料の中から、自分の感性で、そのキャラクター性をもつとも生かせると思えるイメージや表現を考えながら、一つ一つの部品を造りあげていく。漫画等から必ずしも当該キャラクターの大きさが判明するものではないことから、同一メーカーの同一シリーズでもサイズは一定しないことが多い。また、漫画等に表現されていない箇所があることなどから、サイズのみならず、全体のバランスやフォルムについて、模型の原型制作者のセンスや独自の解釈が加わり、結果として数社が同一のキャラクターを立体化した場合でも、フォルム、バランス、サイズが微妙に異なる作品ができあがる。そして、同一キャラクターの商品が異なる造型師によって数社から発売されることがあるが、その制作者の解釈、表現等が着目されて、マニアの好みにより選択され、その商品の人気等に影響している。このように、ガレージキット業界は、キャラクターの立体化の過程における当該キャラクターの解釈や表現の差異を競う模型ジャンルであるといえ、その制作の過程において、制作者の思想・感情の表現が看られるといえる。

     4 これを前記2で対比した商品について具体的に検討すると、まず、前記2(一)のジョーカー(原告)、海洋堂製(佐藤直樹制作)レッドミラージュ及びワークショップ・キャスト製(原告制作)レッドミラージュについては、海洋堂製のレッドミラージュが最も小型に造られており肩高一五センチメートルであるが、これは、原作の設定にある「肩高一五メートル前後」という記述(甲四〇)に最も近く、他の二商品は、いずれも設定とは関係ないサイズで造られている。また、海洋堂製レッドミラージュは、胴体から脚部にかけては小さく造型しながらも、肩や楯は大きく、ボリュームをもたせてある。一方、ワークショップ・キャスト製レッドミラージュは、肩高二〇センチメートルと最も大きく、脚部の長さを強調して造られている(乙二二-資料2、検証調書・二丁表、裏、写真31~35)。
      次に、前記2(二)のウエーブ社製(佐藤直樹制作)レードミラージュとフル装備(原告)については、前者は後者に比べて、全体的にひとまわり小さく、腰部の長さや太さの違いにおいてバランスも異なり、また、前者は、背中のタンク、右手に持った火炎放射器も小型で短いなど、各部の造型上の解釈も相互に異なることが認められる(甲四の2、3、乙二三-資料2、3、検証調書・二丁表、写真21~25)。
      また、前記2(三)のウエーブ社製(新井智之制作)ジュノーン初期型は、ジュノーン初期型(原告)に比べ、全体に角張った解釈でまとめられ、スカートは長大で広がるように造られ、背面のブースターは幅広い。また、設定画のない脚部(脛、足首)は、ジュノーン初期型(原告)とウエーブ社製ジュノーン初期型とでは、形状、長さ、幅ともに独自の表現による違いが認められる(乙二四-資料2、検証調書・二丁裏~三丁表、写真36~40)。
      なお、前記2(四)のジュノーン後期型の三商品については、同(一)ないし(三)の各商品の比較におけるより類似性が高いと考えられるものの、肩部分、脚部分、スカート部分等にそれぞれ解釈の違いが認められる(検証調書写真26~30)。

     5 以上の検討によれば、ガレージキットは、実在する車、飛行機等を忠実に再現する一般のスケールモデルとは異なり、その立体化の過程において制作者の思想・感情の表現が看られるのであって、当該キャラクターが描かれた漫画又は当該キャラクターという美術著作物の変形として、第二次著作物としての著作物性を有すると認めるのが相当である。…したがって、本件模型原型の制作における立体化の過程に創作性がないことを理由として本件模型原型の著作物性を否定する被告らの主張は採用できない。

    ガレージキット事件控訴審(平成10年 7月31日大阪高等裁判所判決(平成9年(ネ)2769号 ・ 平成10年(ネ)205号))

    1 漫画のキャラクターは紙面に各コマ毎に平面的に表現され、それを読者が連続的に読み取ることによって一定の容姿・姿態・装備等を備えた個性あるものとして判断し理解するものであるから、原作者が当該キャラクターに対して有しているイメージの全体像が常にすべて紙面に表現されるとは限らず、その表現されない部分は読者が自由に想像することに委ねられている。
      したがって、右キャラクターを忠実に模型等の立体に制作しようとする場合には、制作者が、平面的かつ非連続的に表現された漫画の一コマ一コマから原作者の有するイメージに出来るだけ近いキャラクターの全体像を想像して把握し、かつ、紙面に表現されない部分についても表現された部分と齟齬のないよう想像力を働かせて把握することが要請されるから、右の作業は単に紙面に表現されたものをそのまま忠実に再現するのとは異なり、その平面に表現された内容から一定の想像力・理解力・感性を働かせて統一的な立体像を制作するという創造的作用を必然的に伴うものである。
      そして、原作者が右キャラクターのサイズやバランス等を具体的に指定していない以上、模型等の制作者が原画のイメージや読者の人気等をも考慮して独自の解釈の下にそのサイズやバランス等を新たに創造することとなるから、その点においても二次元から三次元に転換する模型等の制作には制作者の思想や感情を表現する創作としての一面があることは否定できない。
      2 本件についてこれをみるに、本件模型原型の制作が、同一の原画を立体化したものでありながら、他社製の模型原型と比較して独自の解釈や表現を有していることは、原判決三五頁三行目から同四〇頁七行目までに認定のとおりである。
      してみると、本件模型原型は、漫画の原画を忠実に再現した複製というに止まらず、原告の造型師としての感性や解釈に基づく独自の創作作用、すなわち、思想・感情の創作的表現としての一面を有する造形物というべきであって、二次的著作物に当たるものということができる。

    日野市壁画事件(昭和62年 9月18日東京地裁八王子支部判決(昭和56年(ワ)1881号))

    被告館林市昭和五五年頃現住所地に新市庁舎の建設を計画し、被告桂設計にその設計・監理を、本件共同企業体に建築工事を依頼し、その際本件展示場所に壁画を製作することを企図して、本件共同企業体及び被告桂設計にその旨指示したこと、本件共同企業体及び被告●設計は、被告●窯業を下請として、被告館林市の地名を焼き込んだ煉瓦タイルを製作してこれを組み合わせる手法により、本件展示場所に本件壁画を製作したこと、被告館林市が現在本件壁画を所有し、これを本件展示場所で展示公開していることは当事者間に争いがない。そして、日野市壁画の写真であることについては争いがなく、弁論の全趣旨により昭和五七年三月八日撮影したものと認められる乙第三号証の一ないし一九、本件壁画の写真であることについては争いがなく、弁論の全趣旨により昭和五七年二月二六日撮影したものと認められる乙第四号証の一ないし一〇並びに検証の結果(昭和五七年九月二七日、同年一一月二二日、昭和六一年八月二〇日施行)に基づき、日野市壁画と本件壁画を対比すると、日野市壁画も本件壁画も、その構成要素として、赤色系の特殊な大型煉瓦タイルを使用しており、本件壁画に使用された右大型煉瓦タイルのデザインは日野市壁画に使用されたデザイン七種のうち三種類を使用していること、両壁画ともタイル内に各市の地名を焼き込んでおり、また右大型タイルの地を構成する定型タイルも大型タイルと同色同系統のタイルを使用している点に類似性、共通性を有していることが認められ、他方、本件壁画の大型タイルの形状は日野市壁画のタイルとわずかに異なつており、またその組合わせの方法、配置及び数量が日野市壁画のそれと相違しているのは、別紙物件目録(一)添付の壁画図面(一)及び同(二)と別紙日野市壁画図面(一)ないし(四)とを対比して明らかであり、その他地を構成するタイルの組合わせ方法、文字の内容、字体、地タイルに文字を刻み込んでいるか等、被告らが請求原因に対する答弁4(三)で指摘する点において、両壁画間に多数の相違点を見出すことができる。
     右対比によると、本件壁画は、日野市壁画の複製物とまでは認められないけれども、しかし、全体的に両壁画を比較対照して観察すれば、右相違点よりも類似性の方が強く印象付けられることは否定しがたく、観る者をして、その表現形式上同一の創作発想に基づき、原著作物(日野市壁画)を土台としてこれを変形した作品(本件壁画)と認めしむるに十分であり、右両作品の客観的な比較に加え、後記六に認定の事情を総合考慮すれば、本件壁画は日野市壁画の変形物に該るものと断ぜざるを得ない。
     なお証人…の各証言によれば、本件壁画における地名を焼き込んだ大型タイルの配置は、被告館林市の地理的要素を考慮しており、この点に独自性を有していることが認められるけれども、美術の著作物としてその表現形式的評価に立つた場合には、右独自性の故に本件壁画が日野市壁画から全く独立した別個の著作物であると認めることはできない。

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