鯨(くじら)と法
漂着鯨類と法律
座礁鯨、鯨のストランディングは、たびたび発生しています。では、この漂着鯨類について法律上どの様に考えればいいのでしょうか。
シロナガスクジラの漂着
神奈川・由比ガ浜に漂着はシロナガスクジラ 「全国初」 https://t.co/RqaidkMh2O @Sankei_newsより
シロナガスクジラを撤去、生態調査へ 死後数週間以内か 鎌倉の海岸 https://t.co/QYlLAkuHGW @Sankei_newsより
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見に行きたい衝動に駆られもしましたが、なかなかそんな時間も取れず。
神奈川県由比ヶ浜に、日本で初めてシロナガスクジラが漂着し、平成30年8月6日午後に撤去収容されました。
漂着鯨類の法律上の取り扱い
こうした大型海生哺乳類の漂着は、法律上どのような取り扱いになるのでしょうか。
今回のケースのように明らかに所有者がいない動物の死体を発見した場合、動物の愛護及び管理に関する法律は動物の死体を発見した者は、速やかに都道府県知事等に通報するように努めなければならないと定めています。
通報をうけた、都道府県等は、動物の死体を収容しなければなりません。
(負傷動物等の発見者の通報措置)
動物の愛護及び管理に関する法律第36条1 道路、公園、広場その他の公共の場所において、疾病にかかり、若しくは負傷した犬、猫等の動物又は犬、猫等の動物の死体を発見した者は、速やかに、その所有者が判明しているときは所有者に、その所有者が判明しないときは都道府県知事等に通報するように努めなければならない。
2 都道府県等は、前項の規定による通報があつたときは、その動物又はその動物の死体を収容しなければならない。
3 前条第七項の規定は、前項の規定により動物を収容する場合に準用する。
動物の愛護及び管理に関する法律第35条7項
環境大臣は、関係行政機関の長と協議して、第一項本文の規定により引き取る場合の措置に関し必要な事項を定めることができる。
また廃棄物の処理及び清掃に関する法律は、動物の死体を「廃棄物」と規定しています。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律第2条1項
この法律において「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによつて汚染された物を除く。)をいう。
以上の規定から、基本的に漂着生物は、都道府県が収容し、廃棄物として処理しなければならいことになります。
ただし、今回のような漂着鯨類は研究価値、標本価値があります。そうすると、引き取りたいという人がいる場合、「不要物」という「廃棄物」の要件を満たさず「処理」の対象ともならないと思料されます。
実際にも、漂着したシロナガスクジラは、標本的価値、研究価値があり、国立の研究機関が引き取りを希望しました。
さらに、不要物であるか否かを問わず、民法上は漂着したシロナガスクジラは動産ということになります。民法85条は、「この法律において「物」とは、有体物をいう」と定め、民法86条1項は、「土地及びその定着物は、不動産とする」とし、同2項は、「不動産以外の物は、すべて動産とする」と定めます。
では、漂着したシロナガスクジラの所有権は誰に帰属するのでしょうか。
このとき、民法239条1項は、無主物の動産について、下記のとおり定めます。
民法第239条1項 所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する。
このように、無主物動産は、はじめて所有の意思をもって占有した者が所有権を取得します。
今回のケースでは研究価値を感じた国立科学博物館が初めて「所有の意思をもって」引き取り、占有を開始したことになるため同館が所有者となるものと思料されます。また、発見者や、都道府県は収容などに関係していて仮に占有をしていても「所有の意思」がないため、所有者にならず、初めて所有の意思を持って都道府県等から占有を移転され占有を開始した研究機関が原始的に所有権を取得するものと考えられます。
鯨(くじら)の水中観察
くじらの水中観察、自身の安全や鯨類の保護などに十分配慮しなければならいことは前提として、どうしてもあこがれてしまいます。
今現在、くじらの水中観察は可能なのでしょうか。 この点、法的にくじらとの遊泳を明確に禁止した法律は日本にはまだないようですが、各地の自主ルールでくじらとの遊泳を禁止するケースがあるようです。
各地の自主ルールでくじらとの遊泳を禁止するルールの趣旨は、遊泳者側の安全と、鯨類の保護の両面などの点にあるようです。こうした自主ルールのあるほか、鯨を観られる場所まで乗せてくれるガイドサービスを提供する企業の運営方針によって、遊泳を禁止する契約となっていれば、禁を破って遊泳すれば債務不履行となってしまうことなどが想定されます。
http://www.vill.zamami.okinawa.jp/whale/info_4.html
鯨との遊泳を禁止する自主ルールの一例。
ホエールスイムができるのは、まず、①日本の沖縄・奄美大島、②トンガ、③タヒチ、ルルツ島、④ドミニカ共和国シルバーバンクなど。世界でも限られた場所になっています。
まず、1,2,3月に沖縄などに来るザトウクジラについては、比較的遭遇可能性が高いようですし、危険性も少なく安全にクジラと一緒に泳げるようです。自主的なルールがない地域であれば、サービスとしてクジラの水中観察を提供するケースもあるようです。 http://www.mugamuga.com/kujira/index.html
インターネット上で情報が多いのは、沖永良部島や、奄美大島のようです。宮古島などにもザトウクジラは来るのですが、どちらかというと観光商材が少し劣る地域で積極的に情報を発信しているのかもしれません。特に沖永良部島はクジラを観光コンテンツの中心に据えているような印象さえ受けます。確か、小笠原の母島にもクジラ狙いのダイビングポイントがあったはずですが、当たり外れが大きく正式に観光の材料にはしていなかったかと思います。
夏季は、トンガなどでもクジラと一緒に泳げるようです。ただ、費用的には相当高額なので、注意が必要です。 http://takaji-ochi.com/special_trip/trip02.html
タヒチのルルツ島でも、ホエーススイムができるようです。また、ドミニカ共和国シルバーバンクでも催行がある模様です。
あとは、公式なものではなく、自主的な企画や、スキューバダイビング、フリーダイビング中に偶然、というケースが多いようです。
トンガのホエールスイム、今年実施の詳細なレポート記事が連載されていました。
2016年トンガホエールスイムスタート
Week1 Week2 Week3
記事を読む限り、想像以上の内容です。ほぼ毎日会えるようなので、これだけの内容、確実にクジラと泳ぐなら選択肢に入ってきますね。ここで紹介されているのは、こちらのサイトで主催しているオリジナルツアーのようです。
トンガまでの航空代金などは含まれないようです。直前の代金だと、東京(成田・羽田)―トンガタプ往復で18万円という航空券が見つかりました。トラベルコちゃんのツアーでもおおよそ20万円前後のお値段。やはり、50-60万円程度の費用ということになりそうです。
スポーツレジャー中の事故について法的なお悩みをお抱えの際はご相談ください。
環境法
鯨(くじら)を巡る法規制は、自然環境保護など環境法に属します。
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