iTやコンテンツの法律/知財問題を重視する弁護士です

今年の初めくらいから方々で話題にのぼり、もう、少し聞き飽きてしまった感のあるテーマですが、AIの創作する音楽、小説などがすでに実現段階に入っています。そこで、出てくるのが、AIの創作する作品は、現行法では保護されないのではないか、という話です。

この点は、現行の知的財産権法ではAIの創作(生成?)した作品を保護できない可能性が高いことは割と異論が少ない部分ではないかと思います。まず、AIは人ではありませんので、現行の著作権法のアプローチではAIの創作した作品の保護は難しいと思われます。

次に問題になるのが、特許法のアプローチです。特許法は、プログラムを物として保護しているため、AI自体を、小説や音楽を自動生成するプログラムの発明として保護するアプローチです。しかしこの場合も、小説や音楽を自動生成するAIのプログラム自体は保護できますが、プログラムの創作する作品は、保護の対象からすり抜けてしまうことになるでしょう。

AIを物(プログラム)の発明として捉えると、実施行為として専有される権利は、AIのプログラム自体を作成、頒布等する行為に限られます。では、方法の発明のアプローチはどうでしょうか。たとえば、ソフトウェアを利用した作品を創作する「方法の発明」と捉えても、方法の発明で保護されるのは、作品を創作する行為、つまり、AIを使用する行為だけになり、AIが作成した作品を第三者が複製、頒布する行為自体は、禁止の対象から外れてしまいます。結局、AIを使うことは制御できても、AIで作成された作品をだれでも自由に頒布、配信できるのであれば保護として不十分となり兼ねません。 一番期待できるのが、物をつくる方法の発明というアプローチです。しかし、このアプローチであっても、AIが創作する作品を「物」とは観念できない可能性が高いと考えられます。すなわち、物をつくる方法の発明における物には、プログラム等さえ含まれておらず、これに著作物に準ずる観念的なAIの創作(生成)した作品が含まれると解するのは相当難しいと考えられるからです。

個人的にはAIの作品には特許法のアプローチによる保護が適していると考えています。恐らく、AIの創作(生成)した作品も、物をつくる方法の発明にいう物に含めてしまい、その制作した物の頒布等の行為を実施の対象として第三者の行為を禁じてしまうのが、一番最小限の効率で適切に保護を及ぼせるのではないかと個人的には考えています。いずれにせよ、AIが作品をつくるという事態はこれまで想定されておらず、早急に対応が必要な分野の一つであると言えそうです。

やはり、AIの創作した小説・音楽などの作品と知的財産権法の保護という問題は、とても考えさせられる部分が多い問題です。

現行法において保護から完全にすり抜ける理由を考えていました。それはおそらく、著作物に相当する情報財を、人間以外がつくるという現象が想定されていなかったことに起因するのではないかと考えられます。

つまり、特許法において、物をつくる方法の発明という形で、あるいは、物の発明そのものとして、生成された財物を保護するアプローチはこれまでも採られてきました。

この特許法的なアプローチがAIの創作した小説や音楽などにおいて通用しないのは、AIというプログラムを通して生成されるのが、情報財である点に起因すると考えられます。つまり、成果物が有体物であればある意味で生成には特許法の保護下にある方法を使うことが不可欠でした。しかし、AIというプログラムが生成した著作物に相当する情報財は、情報財なので、一旦形成されてしまえばこれをコピーして頒布することが容易です。つまり、特許の範囲に含まれない方法で再製が容易に可能なのです。

おなじ情報財として保護される物の発明にプログラムの発明があります。プログラムも情報財であり、物の発明に含めるという法改正によって現在では保護されています。しかし、AIの生成という文脈に、プログラムをそのまま当てはめると、プログラムを生成するAIプログラムということになりますから、親のAIプログラムは物の発明として保護できたとしても、特許出願時点で生成されていない子たる生成されたプログラムは保護されないことになります。

このような、コピー可能な情報において財物性が認められるものは、著作物として把握され保護されてきました(プログラムも著作物に該当します。)。しかし、著作物に該当しえる価値をもつ情報財を、人間以外が生成するという状況は、これまで全く想定されてきませんでした。やはり、AIが著作物相当の財物を生成する状況というのは、これまで想定された現象の外にある現象であり、早急に法的手当が必要な部分であることは自明と思料されます。

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