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共同著作物において、著作権は共有されることになります(民法264条類推適用)。

民法上の規定により、共有関係においては、使用行為が持分に応じて許容されています(民法249条)。また、変更行為には全員の同意(民法251条)が、管理行為には過半数の同意(民法252条本文)が必要であり、保存行為は単独で行うことが出来ます(民法252条但し書き)。

ここで、変更行為とは、権利の処分などを指します。また、管理行為とは権利を利用して収益を得る行為などが含まれます。

そして、著作権の共有は原則的に民法の規定を準用し、民法上の共有関係に準じるのですが、著作権法は、民法上の原則的な共有関係の規律を、一部著作権法の特則で、変更しています。下記の条文をご覧ください。

著作権法第64条

1 共同著作物の著作者人格権は、著作者全員の合意によらなければ、行使することができない。

2 共同著作物の各著作者は、信義に反して前項の合意の成立を妨げることができない。

3 共同著作物の著作者は、そのうちからその著作者人格権を代表して行使する者を定めることができる。

4 前項の権利を代表して行使する者の代表権に加えられた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

著作権法第65条
1 共同著作物の著作権その他共有に係る著作権(以下この条において「共有著作権」という。)については、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡し、又は質権の目的とすることができない。

2 共有著作権は、その共有者全員の合意によらなければ、行使することができない。

3 前二項の場合において、各共有者は、正当な理由がない限り、第一項の同意を拒み、又は前項の合意の成立を妨げることができない。

4 前条第三項及び第四項の規定は、共有著作権の行使について準用する。

以上の著作権法上の特則により、本来管理行為として過半数の同意があれば可能であった著作物の利用行為(利用許諾、ライセンシングなど)も、共有者全員の同意がなければ、利用許諾出来ないことになっています。また、単純な複製や公衆送信などの著作物の共有者による使用も、全員の同意がなければ許諾されないことになります。持分に応じた使用が許されていた民法上の共有関係とは、大きく異なる点です。このように、著作権の行使は著作権法によって大きく制限されているために、著作権共有者は正当の理由がない限り、権利の行使を拒めない等(著作権法65条3項・著作権法64条2項)と定めることで、バランスを取っています。

では、著作物を無断使用するものに対して、差し止め請求や損害賠償請求をすることも、共有者全員の同意がなければ行えないのでしょうか。この点、著作権法上、下記のような条文があります。

 著作権法第117条
1 共同著作物の各著作者又は各著作権者は、他の著作者又は他の著作権者の同意を得ないで、第百十二条の規定による請求又はその著作権の侵害に係る自己の持分に対する損害の賠償の請求若しくは自己の持分に応じた不当利得の返還の請求をすることができる。

2 前項の規定は、共有に係る著作権又は著作隣接権の侵害について準用する。

上記、著作権法117条の規定により、共有著作物が第三者に無断使用されている場合、共有者単独で差止請求と、持分に応じた損害賠償請求を行なえることになります。以下、まとめておきます。

 著作物の複製・公衆送信など使用行為  著作権共有者全員の同意が必要(著作権法65条2項)
 著作権のライセンシングなど利用許諾行為  著作権共有者全員の同意が必要(著作権法65条2項)
 著作権の譲渡など、処分行為  著作権共有者全員の同意が必要(民法251条、著作権法65条1項)
 第三者の侵害に対する差止・持分の損害賠償  単独で可能(著作権法117条1項)

 

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