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リンクと不法行為、著作権侵害をめぐる諸問題について、発信者情報開示の点に絞って整理してみます。

まず、著作権侵害において、発信者情報開示の論拠とする支分権が、問題となります。リンクにおいて問題となりやすいのは、複製権、自動公衆送信権、送信可能化権などの支分権であるものと考えられます。

次に、リンクによる著作権侵害に基づいて発信者情報の開示を請求する権利侵害として、少なくとも3類型が考えられます。すなわち、著作権侵害、共同不法行為、幇助行為(間接侵害)の3類型です。このうち、幇助行為の類型については、発信者情報開示の対象となるのか、議論があります。反面、リンクにおいて最も成立しやすい違法類型は幇助行為であるため、発信者情報開示においては、悩ましい問題が形成されることになります。また、共同不法行為についても、共同行為の類型や支分権との関係では、発信者情報開示の対象となるのか問題となり得る場合があるものと考えられます。

リンクにおいて、複製権侵害を主張する場合、アップロード者のサーバーへの記録・保存行為は、基本的に問題となり得ません。複製後にリンク生成行為が行われるからです。

リンクにおいて、問題となるとすればクライアントコンピューターにおける著作物の生成です。この点、著作権法47条の8は、「電子計算機において、著作物を当該著作物の複製物を用いて利用する場合又は無線通信若しくは有線電気通信の送信がされる著作物を当該送信を受信して利用する場合(これらの利用又は当該複製物の使用が著作権を侵害しない場合に限る。)には、当該著作物は、これらの利用のための当該電子計算機による情報処理の過程において、当該情報処理を円滑かつ効率的に行うために必要と認められる限度で、当該電子計算機の記録媒体に記録することができる」と定めます。この規定の適用は、「利用又は当該複製物の使用が著作権を侵害しない場合に限ら」れることから、インラインリンクによる複製権侵害という主張も成り立ち得るところです。

問題となるのは、送信可能化権を侵害の基底に据えた場合です。この場合、送信可能化権侵害をカラオケ法理によりインラインリンク生成者に問責できるのか、送信可能化権侵害の共同不法行為責任を問えるのか、さらに事後的な関与となるため難しい側面がありますが幇助となり得るのか、という問題もあります。さらに、自動公衆送信権の侵害を基底に据える場合は、カラオケ法理による侵害主体論の修正が認められ得るのか、共同不法行為責任、幇助責任には問責できるのか、という問題があります。

この場合、共同不法行為、幇助責任においてさらに、情報の伝達に関与している者として、発信者情報開示の対象となるのか、という問題もあります。

 複製権侵害 送信可能化権侵害 自動公衆送信権侵害 公衆伝達権侵害
カラオケ法理 そもそも複製権侵害となるか。
侵害主体論。
侵害主体論。 侵害主体論。 そもそも公衆伝達権侵害となるか。
侵害主体論。
共同不法行為 そもそも複製権侵害となるか。
共同不法行為となるか。
発信者情報開示の対象となるか。
共同不法行為となるか。
発信者情報開示の対象となるか。
共同不法行為となるか。
発信者情報開示の対象となるか。
そもそも公衆伝達権侵害となるか。
共同不法行為となるか。
発信者情報開示の対象となるか。
幇助 そもそも複製権侵害となるか。
幇助行為となるか。
発信者情報開示の対象となるか。
幇助行為となるか。
発信者情報開示の対象となるか。
幇助行為となるか。
発信者情報開示の対象となるか。
そもそも公衆伝達権侵害となるか。
幇助行為となるか。
発信者情報開示の対象となるか。

 

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