I2練馬斉藤法律事務所

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事案の概要について

本件は,『第1審原告が第1審被告に対し,①かたばみ三橋俳句会(本件句 会)と三橋公民館は,本件句会が三橋公民館に提出した俳句を同公民館が発 行する本件たよりに掲載する合意をしたと主張し,同合意に基づき,第1審 原告が詠んだ俳句(本件俳句)を本件たよりに掲載することを求めるととも に,②三橋公民館(その職員ら)が,本件俳句を本件たよりに掲載しなかっ たことにより精神的苦痛を受けたと主張し,国家賠償法1条1項に基づき, 慰謝料200万円及びこれに対する加害行為後(本件俳句が掲載されなかっ た本件たよりの発行日)の平成26年7月1日から支払済みまで民法所定の 年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 原審は,第1審原告の請求のうち,5万円及びこれに対する遅延損害金の支 払請求の限度で認容した。これに対して,第1審原告及び第1審被告がそれ ぞれ控訴を提起した。なお,第1審原告は,当審において,第1審被告の職 員が第1審原告の名誉を毀損したと主張して, して,民法723条に基づく名誉回復措置の請求を追加した』事案でした(控訴審事案の概要より)。

第一審における人格的利益の侵害に基づく慰謝料5万円の認容について

平成29年10月13日東京地裁判決・裁判所ウェブサイト掲載は、俳句を掲載しなかったことに対して「三橋公民館及び桜木公民館の職員らが,原告の思想や信条を理由として,本件俳句を本件たよりに掲載しないという不公正な取扱いをしたことにより,法律上保護される利益である本件俳句が掲載されるとの原告の期待が侵害されたということができるから,三橋公民館が,本件俳句を本件たよりに掲載しなかったことは,国家賠償法上,違法というべきである」と判断され、人格権侵害を根拠に5万円の慰謝料が認められた事案です。

ただし、同裁判例は以下の通り述べて、表現の自由の侵害を認めませんでした。

本件俳句を不掲載としたことが,原告の表現の自由を侵害し,国 家賠償法上,違法であるか(争点6)

(1) 原告は,本件たよりは,本件句会が提出した秀句の発表の場としての性 格を有するものであること,表現の自由の優越的な地位が実現されるために は,表現が受け手に受領されるまでの一連の過程全体が保障されなければな らないことを理由として,公権力が発表の場として提供した場での表現活動 を制限することは,原則として表現の自由を侵害するものであるから,仮に,原告に本件俳句の掲載請求権がないとしても表現の自由が侵害され たということができる旨主張する。

しかし,原告は,本件たよりという特定の表現手段による表現を制限され たにすぎず,かたばみ等の同人誌やインターネット等による表現が制限され たわけではない上(認定事実(6)ア),特定の表現手段による表現の制限が, 表現者の表現の自由を侵害するものというためには,同人が,この表現手段 の利用権を有することが必要と解される(ある者が国営の新聞社に対し,投 書をしたところ,同社が同投書を投書欄に掲載しなかったからといって,こ れが,同人の表現の自由を侵害するということはできないことは明らかであ る。)から,本件においては,原告が,本件俳句を本件たよりに掲載するこ とを求めることができる掲載請求権を有することが必要となるところ,上記 2及び3のとおり,原告には,本件俳句の掲載請求権があるということはで きない。

したがって,原告の上記主張は,前提を欠き,採用することができない。

(2) 原告は,本件たよりは,パブリック・フォーラムであり,三橋公民館に よる本件俳句を本件たよりに掲載しないという制限が正当化されるのは,そ の目的がやむにやまれぬものであり,上記制限が目的達成のために必要最小 限度にとどまる場合であるところ,上記制限は,これらの要件を充足しない から,原告の表現の自由を侵害する旨主張する。

しかし,本件たよりがパブリック・フォーラムに該当するというためには, 原告が本件たよりというフォーラムに立ち入ることができる権利を有するこ とが必要と解すべきところ,原告は,本件俳句の掲載請求権を有しておらず (上記2及び3),また,公民館の利用権は,本件たよりへの掲載請求権と は異なるものであるから,原告が,フォーラムとしての本件たよりに立ち入 ることができる権利を有するということはできない。

したがって,原告の上記主張は,前提を欠き,採用することができない。

(3) 原告は,三橋公民館が,平成22年11月から平成26年6月までの3 年8か月の間,本件句会に対し,秀句を掲載する場として本件たよりのスペ ースを提供していたことを一種の助成措置であると捉え,三橋公民館が,本 件たよりのスペースを提供することを止めること(助成措置の撤回)に関す る裁量は制限される旨主張する。

しかし,原告の上記主張は,三橋公民館が,本件句会の会員らに対し,本 件たよりを表現の場として提供することにより,助成したことを前提とする ものであって,原告のパブリック・フォーラム論の主張とほぼ同一のものと 解されるところ,本件たよりが,本件句会の会員らに対し,表現の場として 提供されたものであると認めるに足りる証拠はないし,上記2,3及び(2) のとおり,原告は本件俳句の掲載請求権を有しておらず,また,フォーラム としての本件たよりに立ち入ることができる権利を有するということはでき ないから,原告の上記主張も,前提を欠き,採用することができない。

(4) したがって,原告の主張は,いずれも採用することができない。

控訴審における慰謝料の減額について

ただし、平成30年5月18日東京高等裁判所判決・裁判所ウェブサイト掲載は、以下のとおり述べて、50000円の慰謝料を5000円に減額しています。

前記認定事実における本件俳句の本件たよりへの掲載が拒否された経緯,第 1審原告の侵害された人格的利益は,住民の公民館の利用を通じた社会教育 活動の一環としてなされた学習成果の発表行為につき,公民館の職員から, その思想,信条を理由に他の住民と比較して不公正な取扱いを受けないとい う観点から法的保護に値するものであること,その他本件に顕れた一切の事 情を総合勘案すると,第1審原告の人格的利益が侵害されたことによる慰謝 料額は,5000円とするのが相当である。

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