公衆送信などを利用して行う教育活動において問題となる著作権法条の留意点をご紹介します。
目次
学校その他の教育機関における複製等
著作権法35条1項は複製権の制限を定めるため対面授業においてはこの規定が広く利用されています。
これに対して著作権法35条2項は、公衆送信権の制限を定めますが、1項ほど範囲の広い権利制限規定とはなっていません。
公衆送信権の制限も広く認める権利制限規定の法改正がなされて公布されていますが、公布から3年後の令和3年5月 24 日までの施行とされており(著作権法附則(平成三〇年五月二五日法律第三〇号) 第1条1号)、現時点では未施行となっています。
そのため、現時点では授業を直接受ける者に対して著作物を提供もしくは提示する場合に、同時に公衆送信をするなどの場合に限り公衆送信が可能となっています。
そこで、文化庁は、「新型コロナウィルス感染症対策に伴う学校教育におけるICTを活用した著作物の円滑な利用について」と題する要請文を公表し著作権管理事業者に適切な対応を要請しています。
ただし、著作権法32条1項における引用利用など他の権利制限規定など適切な規定の利用をとおして遠隔授業などを実現することも、制限はどうしても出てきますが、不可能ではありません。
著作権法第35条
1 学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における使用に供することを目的とする場合には、必要と認められる限度において、公表された著作物を複製することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
2 公表された著作物については、前項の教育機関における授業の過程において、当該授業を直接受ける者に対して当該著作物をその原作品若しくは複製物を提供し、若しくは提示して利用する場合又は当該著作物を第三十八条第一項の規定により上演し、演奏し、上映し、若しくは口述して利用する場合には、当該授業が行われる場所以外の場所において当該授業を同時に受ける者に対して公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行うことができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該公衆送信の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
改正著作権法35条(本日時点で未施行)・学校その他の教育機関における複製等
1 学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているも のを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授 業の過程における利用に供することを目的とする場合には、その必要と 認められる限度において、公表された著作物を複製し、若しくは公衆送 信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。以下この条に おいて同じ。)を行い、又は公表された著作物であつて公衆送信される ものを受信装置を用いて公に伝達することができる。ただし、当該著作 物の種類及び用途並びに当該複製の部数及び当該複製、公衆送信又は伝 達の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、こ の限りでない。
2 前項の規定により公衆送信を行う場合には、同項の教育機関を設置す る者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。
3 前項の規定は、公表された著作物について、第一項の教育機関におけ る授業の過程において、当該授業を直接受ける者に対して当該著作物を その原作品若しくは複製物を提供し、若しくは提示して利用する場合又 は当該著作物を第三十八条第一項の規定により上演し、演奏し、上映し 、若しくは口述して利用する場合において、当該授業が行われる場所以 外の場所において当該授業を同時に受ける者に対して公衆送信を行うと きには、適用しない。
著作権法附則(平成三〇年五月二五日法律第三〇号) 第一条
この法律は、平成三十一年一月一日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一 第百十三条第四項の改正規定並びに附則第四条及び第七条から第十条までの規定 公布の日
二 目次の改正規定、第三十五条の改正規定、第四十八条第一項第三号の改正規定(「第三十五条」を「第三十五条第一項」に改める部分に限る。)、第八十六条第三項前段の改正規定(「第三十五条第二項」を「第三十五条第一項」に改める部分に限る。)、同項後段の改正規定(「第三十五条第二項」を「第三十五条第一項ただし書」に改める部分に限る。)及び第五章の改正規定 公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日
著作権法第38条1項
公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金(いずれの名義をもつてするかを問わず、著作物の提供又は提示につき受ける対価をいう。以下この条において同じ。)を受けない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述することができる。ただし、当該上演、演奏、上映又は口述について実演家又は口述を行う者に対し報酬が支払われる場合は、この限りでない。