①無断転貸と解除権の制限:賃借人が目的物を無断転貸した場合、民法612条の文言からは、賃借人には解除権が発生し、いつでも解除できるのが原則です。もっとも、賃貸借関係を転貸がやむをえない場合にまで解除すれば、賃借人の地位が害されることになります。そこで、賃貸人にとっても契約を存続させても酷でない、信頼関係が破壊されていない場合にまで、賃貸人が解除権を行使することは、権利濫用として許されないと考えられます。
②賃借人の債務不履行に基づく解除に転借人への催告を要するか:賃借人の債務不履行に基づく解除をするために、転借人に賃借人の債務履行の機会を確保するための催告を要するとする見解があります。しかし、賃借人の債務不履行により信頼関係が破壊されている場合にまで、転借人への催告を要するとすることは、賃貸人の解除権を不当に制限することになります。したがって、転借人への催告までは不要と解されます。
③合意解除の対抗:転貸が有効に成立した場合に、賃貸借関係を合意解除しても、転借人には対抗できないと解されます。この点、判例(最判昭和38年2月21日)は、土地の賃貸借を合意解除しても、土地の賃借人所有の建物を賃借している建物賃借人に対して、第三者のためにする契約に関する538条および、抵当権設定者の権利放棄を制限した398条に照らし、合意解除を対抗できないとします。この趣旨から、転借人に対しても、合意解除は対抗できないものと解されます。なお、債務不履行解除は当然対抗できます。この場合、賃借人に対する催告が必要か問題となるが、不要と解されます。そして、対抗できない結果、賃借人は法律関係から排除され、賃貸人、転借人間に同内容の賃貸借関係が生じると解されます。