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二次的著作物のうえには、通常の著作権(著作権法17条)のほか、著作権法28条の権利が成立します。この二次的著作物上の著作権を巡っては、2つの最高裁判例が存在しています。奇しくも、両判例は共に漫画(マンガ)を巡って争われた事例です。そこで、本項ではマンガを例に二次的著作物と二次的著作物を客体に発生する著作権の関係をご説明していきたいと思います。

原著作物と二次的著作物の関係

二次的著作物とは、原著作物の本質的特徴を維持しながら、新たな創作性を付与された著作物を言います。

原著作物の例(マンガイラスト)

例えば原著作物としてイラストがあるとします。

二次的著作物の例

この原著作物をもとに衣装を変えて、目線も変更したイラストが作成されたとします。この2つめのイラストには、新たな創作性が付加されていると考えられますので、このイラストは二次的著作物となります。

二次的著作物と原著作物を切り分けられる場合と切り分けられない場合

このとき、実際には、原著作物の本質的特徴がそのまま読み取れる場合もあると考えられます。

例えばこの全身のイラストレーションにも、先ほどのイラストに新たに創作性が付加されていると考えられます。そうすると全身のイラストレーションも二次的著作物と評価し得ることになります。この場合、原著作物と新たに付加された創作性は比較的切り分けが容易です。

一方、二次的著作物に残存しているのは本質的特徴に過ぎず、二次的著作物に内包された原著作物は観念的な存在に過ぎないようなケースもあるものと捉えられます。

つまり、二次的著作物と原著作物の切り分けが困難な場合です。

二次的著作物上の著作権の保護客体(及び保護期間)

二次的著作物の上にも二次的著作物の著作者の著作権が成立します(著作権法17条)。また、これと同内容の原著作者の著作権が成立(著作権法28条)します。

では、二次的著作物上の著作権の保護客体は、二次的著作物の新たな創作部分なのでしょうか。あるいは、原著作物の創作部分も含めた二次的著作物全体なのでしょうか。

二次的著作物の保護客体については2つの考え方が成り立ち得ます。

一つは二次的著作物に現れた原著作物の本質的特徴を二次的著作物に現れた二次的創作部分と併せて、二次的著作物全体を新たに保護するという考え方です。

この場合、二次的著作物が成立した時点から原著作物の本質的特徴部分も含めた二次的著作物全体の上に成立する著作権の保護期間が進行開始することになります。

つまり、二次的著作物において、原著作物の本質的特徴が残存している以上、新たな創作部分に当該本質的特徴を加えた二次的著作物全体の上に、これを客体とする新たな著作権が及ぶという考え方です。

もう一つの考え方は、二次的著作物の上に成立する著作権は二次的著作物に付与された新たな創作性部分についてのみ生じ、原著作物の表現上の本質的特徴部分には新たな著作権は生じないという考え方です。

つまり、原著作物の本質的特徴部分と二次的著作物の付加された創作部分を切り分けて、個別に保護期間が進行するという考え方です。

漫画イラストによる例示

例えば、第1話で登場した女の子のキャラクターと第2話で登場した猫のキャラクターがいるとします。

1話と2話は分業制で担当した漫画家が異なり、さらに猫のキャラクターはキャラクター設定などの作業を経ておらず、ネームの段階で2話の担当者が始めて表現し、漫画作品と有機的に結合する形でこの世に産み出されたという設定とします。また、1話で登場した女の子のキャラクターは、主要キャラクターとして当然、2話にも登場しているものとします。

このように、2話では1話で登場した女の子に加えて新しく別の担当者が考案したネコのキャラクターが登場したとします。では、2話の上に成り立つ著作権は、ネコのキャラクターに対してだけ成立するのか、ネコと女の子のキャラクター両方に対して成り立つのか、が問題となります。ネコに加えて女の子のキャラクターにも新たに二次的著作物の上に成立する著作権が発生すれば、女の子のキャラクターイラストの保護期間も2話については2話が公表された時点から新たに進行を開始する、という考え方もできます。

継続的刊行物等の公表の時について定める著作権法56条1項は、公表の時は、「冊、号又は回を追つて公表する著作物については、毎冊、毎号又は毎回の公表の時によるものとし、一部分ずつを逐次公表して完成する著作物については、最終部分の公表の時によるものとする」と定めます。

この条文は、女の子キャラクターイラストについても、最終話が公表された時点を「公表の時」と考えて、保護期間の起算点を遅らせることを認めているようにも読めます。

平成 4年 5月14日東京高裁判決判時 1431号62頁(平2(ネ)734号 ・ 平2(ネ)2007号 )

この点について、平成4年5月14日東京高裁判決は、二次的著作物においてはその刊行の日が「公表の時」に当たると考えて、保護期間の進行は二次的著作物全体について、二次的著作物公表の時点から、独自に算定されるという考え方を採用しました。

そこで、右主張について検討するに、絵画と言語の組合せからなる漫画は、両者が不可分一体な有機的関係をもって結合した形態において、初めて著作者の特定の思想、感情を創作的に表現するところの一表現形式であり、このことは、本件漫画においても、前掲甲第一号証、同第二三号証並びに同検甲第一号証の一、二及び同検甲第二号証をみれば一見して明らかなところである。したがって、かかる絵画表現と言語表現が不可分の有機的結合関係にある漫画における著作権保護の対象は、両者の結合した有機的一体をなした表現形式としての個々具体的な漫画に求められるべきであり、控訴人主張のように、絵画と言語とが有機的結合関係にある漫画から、それぞれの表現手段を分離抽出して、著作権法における保護の対象を各表現手段毎に別々に論ずることはできないものというべきである。  確かに、控訴人主張に係るポパイの容貌、姿態における共有特徴なるものは、前掲甲第一号証によれば、既に控訴人指摘の漫画に現れているものということができるが、だからといって、かかる共有特徴を有する主人公ポパイが登場する右以外の漫画における言語と絵画との有機的結合に著作物性がないとすることはできない。  以上の見地からすると、本件漫画については、少なくとも、一連の完結形態を有するものとして発表された漫画毎に著作権が発生するものと解すべきであるから、その保護期間の起算日は、右一連の完結形態を有する漫画が発表された時が著作権法五六条一項の「公表の時」に当たるものと解し、右発表の時から起算すべきものとするのが相当であるところ、本件漫画が少なくとも一九八九年四月二八日の時点においても継続して著作、出版されていることは既に認定したとおりであるから、いまだ主人公ポパイの登場する本件漫画の著作権の保護期間が満了していないことは明らかというべきである。

漫画の例で言うと、2話でネコだけでなく女の子のキャラクターにも二次的著作物全体を客体とする著作権が新たに成立(著作権法17条(異種の権利が生じる場合はその部分について著作権法28条))し、ネコのキャラクター上の著作権(ネコのキャラクターの著作者について著作権法17条、女の子のキャラクターの著作権者において著作権法28条)についても、2話の公表時点から新たに保護期間が進行するという考え方です。

平成 9年 7月17日最高裁第一小法廷判決(平4(オ)1443号著作権侵害差止等請求事件〔ポパイ漫画事件・上告審〕)

これに対して、平成 9年 7月17日最高裁第一小法廷判決(平4(オ)1443号著作権侵害差止等請求事件〔ポパイ漫画事件・上告審〕)は、以下のようにのべて、後者のアプローチ、すなわち2次的著作物に現れている原著作物の本質的特徴を2次的創作部分とは別に新たな保護の対象とはしないことを宣明しました(黒字部分は弊所において強調)。そのうえで、著作権の保護期間は、原著作物の本質的特徴部分において原著作物の成立時点から個別に算定され、二次的著作物において新たに独自に起算するるという考え方を採らないことを明確にしました。

 1 著作権法上の著作物は、「思想又は感情を創作的に表現したもの」(同法二条一項一号)とされており、一定の名称、容貌、役割等の特徴を有する登場人物が反復して描かれている一話完結形式の連載漫画においては、当該登場人物が描かれた各回の漫画それぞれが著作物に当たり、具体的な漫画を離れ、右登場人物のいわゆるキャラクターをもって著作物ということはできない。けだし、キャラクターといわれるものは、漫画の具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念であって、具体的表現そのものではなく、それ自体が思想又は感情を創作的に表現したものということができないからである。したがって、一話完結形式の連載漫画においては、著作権の侵害は各完結した漫画それぞれについて成立し得るものであり、著作権の侵害があるというためには連載漫画中のどの回の漫画についていえるのかを検討しなければならない。
2 このような連載漫画においては、後続の漫画は、先行する漫画と基本的な発想、設定のほか、主人公を始めとする主要な登場人物の容貌、性格等の特徴を同じくし、これに新たな筋書を付するとともに、新たな登場人物を追加するなどして作成されるのが通常であって、このような場合には、後続の漫画は、先行する漫画を翻案したものということができるから、先行する漫画を原著作物とする二次的著作物と解される。そして、二次的著作物の著作権は、二次的著作物において新たに付与された創作的部分のみについて生じ、原著作物と共通しその実質を同じくする部分には生じないと解するのが相当である。けだし、二次的著作物が原著作物から独立した別個の著作物として著作権法上の保護を受けるのは、原著作物に新たな創作的要素が付与されているためであって(同法二条一項一一号参照)、二次的著作物のうち原著作物と共通する部分は、何ら新たな創作的要素を含むものではなく、別個の著作物として保護すべき理由がないからである。
3 そうすると、著作権の保護期間は、各著作物ごとにそれぞれ独立して進行するものではあるが、後続の漫画に登場する人物が、先行する漫画に登場する人物と同一と認められる限り、当該登場人物については、最初に掲載された漫画の著作権の保護期間によるべきものであって、その保護期間が満了して著作権が消滅した場合には、後続の漫画の著作権の保護期間がいまだ満了していないとしても、もはや著作権を主張することができないものといわざるを得ない。

このように、ポパイマンガ事件上告審は、二次的著作物のうち、原著作物と共通する部分には原著作物の著作権がダイレクトに及び、共通しない部分に対しては、著作権法28条の権利が及ぶと述べています。

最高裁判所は原著作物の表現の本質的特徴と、二次的著作物において付加された創作的表現の本質的特徴部分を基本的に分けたうえで、原著作物の本質的特徴部分については新たに保護客体としないことを明らかにしています。

このように、基本的に二次的著作物における保護は、原著作物の表現上の本質的特徴部分を除いた、二次的著作物独自の新たな創作的表現部分のみを客体とすることになります。

漫画の例で言うと、すでに1話に登場した女の子のキャラクターイラストの表現上の本質的特徴部分については1話創作の時点で著作権が成立(著作権法17条)し、2話の時点では女の子のキャラクターイラストを客体として新たに著作権は発生しないと言うことになります。したがって、女の子のキャラクターについては著作権の保護期間も1話の公表時点から進行すると言うことになります。

著作権法28条の内容

では、二次的著作物独自の新たな創作的表現部分を客体として成立する著作権法28条の権利はどのような内容なのでしょうか。

二次的著作物上の原著作物の本質的特徴部分には原著作物の成立時点で著作権法17条を介して原著作者の著作権が及んでいます。また、二次的著作物上の新たな創作表現部分にも著作権法17条を介して二次的著作物の著作者の著作権が成立することになります。

そして,著作権法11条は,「二次的著作物に対するこの法律による保護は、その原著作物の著作者の権利に影響を及ぼさない。」と定めます。

さらに、著作権法28条は,「二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。」と定めます。

この2つの規定の関係を含めて,二次的著作物の創作的表現部分を客体として成立する著作権をどのように考えていけばよいのでしょうか。

まず,原著作物については,原著作物成立の時点で著作権が発生し,二次的著作物が成立した前後で,原著作物の著作者が原著作物に対して有する著作権は何らの変動を受けないことになります(著作権法11条)。

したがって,二次的著作物成立後も,原著作物の侵害に対しては差し止めや損害賠償を請求できますし,原著作物の利用許諾契約などを締結することも当然自由です。

これに対して,二次的著作物においても,原著作物の著作者は,二次的著作物の権利者と同一の種類の権利を有することになります。

この同一の種類の権利を専有するという規定の意義については,2つの側面に分けて考える必要があります。2つの側面とは,「権利の種類」と「権利が及ぶ範囲」です。

権利の種類

「権利の種類」については,原著作物が小説であった場合に,小説にはたとえば,頒布権が認められません。著作権法26条1項が映画の著作物に限定して頒布権を定めているからです。

そこで,小説を原著作物とする映画の二次的著作物について,原著作者も本来原著作物上に専有しない頒布権を二次的著作物の上に専有することになります。

著作権法28条により原著作者の二次的著作物の上に成立する著作権の種類が拡張されていることになります。

権利が及ぶ範囲

次に,争いがあるのが,原著作者が二次的著作物に対して有する著作権法28条の「権利が及ぶ範囲」の問題です。

二次的著作物は原著作物に依拠してその本質的特徴を残していることになります。

このことから、二次的著作物から感得できる原著作物の本質的特徴部分についてのみ,著作権法28条の権利を専有しているという考え方があります。この場合、原著作者は二次的著作物上の原著作物の表現上の本質的特徴部分に対して、二次的著作物の著作者と同種類の権利を有します。しかし、二次的著作物に付加された新たな創作部分に対しては、権利が及ばないことになります。

例えば小説の原著作者は、二次的著作物である漫画の原画に対して本来有さない展示権を認められることになります。つまり、原著作者は二次的著作物に現れた原著作物の表現上の本質的特徴部分(例で言うと女の子のキャラクター)について、本来持たなかった種類の権利(例は双方マンガのキャラクターという設定なので、例の上では、この効果は発生しないことになります。)を拡張されます。

この限りで、著作権法28条の意味があるという考え方もできます。

これに対して、原著作物の本質的特徴をこえて,二次的著作物が新たに著作物に付与した創作性の部分(例で言うとネコのキャラクター)にも原著作者の有する著作権法28条の権利が及ぶという考え方があります。この考え方によれば、原著作者の二次的著作物に対する権利は、種類だけでなくその範囲についても拡張されていることになります。

そこで、どちらの考え方が適切であるか,問題となります。

この点が問題になったのが、キャンディキャンディ事件です。つまり原作者の小説形式の原作が、漫画家が造形をデザインした漫画キャラクターの原画イラストに及ぶかが問題となりました。

最高裁判所(最高裁判所判例平成13年10月25日キャンディキャンディ事件上告審)は,この点について,「本件連載漫画は、被上告人が各回ごとの具体的なストーリーを創作し、これを四〇〇字詰め原稿用紙三〇枚から五〇枚程度の小説形式の原稿にし、上告人において、漫画化に当たって使用できないと思われる部分を除き、おおむねその原稿に依拠して漫画を作成するという手順を繰り返すことにより制作されたというのである。この事実関係によれば、本件連載漫画は被上告人作成の原稿を原著作物とする二次的著作物であるということができるから、被上告人は、本件連載漫画について原著作者の権利を有するものというべきである。そして、二次的著作物である本件連載漫画の利用に関し、原著作物の著作者である被上告人は本件連載漫画の著作者である上告人が有するものと同一の種類の権利を専有し、上告人の権利と被上告人の権利とが併存することになるのであるから、上告人の権利は上告人と被上告人の合意によらなければ行使することができないと解される。したがって、被上告人は、上告人が本件連載漫画の主人公キャンディを描いた本件原画を合意によることなく作成し、複製し、又は配布することの差止めを求めることができるというべきである。」と述べています(ただし、黒字強調は弊所による。)。

このように,最高裁判所は,「二次的著作物である本件連載漫画の利用に関し、原著作物の著作者である被上告人は本件連載漫画の著作者である上告人が有するものと同一の種類の権利を専有し、上告人の権利と被上告人の権利とが併存することになる。」と述べています。

また,同事件控訴審(東京高裁判例平成12年3月30日)も,「原著作物の著作権者は,結果として,二次的著作物の利用に関して,二次的著作物の著作者と同じ内容の権利を有することになることが明らか。」と述べています。

したがって,判例は現在「同一の種類の権利を専有する」とは,二次的著作物の上に原著作物の著作権者の権利と,二次的著作物の著作権者の同一の内容の権利が二次的著作物上の新たな創作部分を客体として、併存するものと捉えていることになります。

このように判例の考え方によれば、二次的著作物の新たな創作的表現部分である猫のキャラクターには、二次的著作物の著作者のイラストの青色で示した権利(著作権法17条)と、原著作者の赤色で示した権利双方が及ぶことになります。判例はこの部分を捉えて「権利が併存する」と判示しているものと解されます。

反対に女の子のキャラクターには原著作者の権利しか及ばず、ケースによって原著作者が本来有さない異種の権利についても、著作権法28条によって拡張される場合がありますが、原著作者自身の権利は影響を受けない(著作権法11条)ことになります。

このように判例の捉え方によれば,著作権法28条によって,「権利の種類」のみならず「権利が及ぶ範囲」も二次的著作物の新たな創作部分に拡張(下図の青色の矢印)されていることになります。

反対に,原著作者が創作性を有しない二次的著作物のオリジナル部分にも,原著作者の権利が拡張されていることには,根強い反対論もあります。

反対論にしたがえば,二次的著作物のオリジナル部分には,原著作者の権利が及ばないことになります。

この場合,キャンディキャンディ事件における結論も真逆となる可能性もあります。