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肖像権の保護

「何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態(以下「容ぼう等」という。)を撮影されない自由を有する」として、個人の肖像が憲法上保障される人権であることを京都府学連事件で最高裁判所が宣明しています。

肖像権に関する裁判例

最高裁判所は、「人は,みだりに自己の容ぼう等を撮影され ないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有する(最高 裁昭和 40 年(あ)第 1187 号同 44 年 12 月 24 日大法廷判決・刑集 23 巻 12 号 1625 頁参照)と判示しています。

また,「人の容ぼう等の撮影が正当な取材行為等 として許されるべき場合もあるのであって,ある者の容ぼう等をその承諾 なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは,被撮影者の社会 的地位,撮影された被撮影者の活動内容,撮影の場所,撮影の目的,撮影 の態様,撮影の必要性等を総合考慮して,被撮影者の上記人格的利益の侵 害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決 すべきである」と判示しています(最高裁昭和 40 年(あ)第 1187 号同 44 年 12 月 24 日大法廷判決・刑集 23 巻 12 号 1625 頁)。

さらに、平成 18 年 5 月 23 日東京地裁判決判時 1961 号 72 頁(平16 (ワ)27003号損害賠償請求事件) は、「本人が一度その撮影及び公 表に同意した場合においても,本人の同意の範囲の判断に当たっては,慎 重に解釈すべきであり,その同意の範囲を超えたものについては,人格的 利益を侵害する違法な行為であると評価すべきである」と判示しています。

最高裁昭和40年(あ)第1187号同44年12月24日大法廷判決・刑集23巻12号1625頁

肖像権の保護

ところで、憲法一三条は、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と規定しているのであって、これは、国民の私生活上の自由が、警察権等の国家権力の行使に対しても保護されるべきことを規定しているものということができる。そして、個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態(以下「容ぼう等」という。)を撮影されない自由を有するものというべきである。これを肖像権と称するかどうかは別として、少なくとも、警察官が、正当な理由もないのに、個人の容ぼう等を撮影することは、憲法一三条の趣旨に反し、許されないものといわなければならない。

肖像権に対する制約が許容される場合

しかしながら、個人の有する右自由も、国家権力の行使から無制限に保護されるわけでなく、公共の福祉のため必要のある場合には相当の制限を受けることは同条の規定に照らして明らかである。そして、犯罪を捜査することは、公共の福祉のため警察に与えられた国家作用の一つであり、警察にはこれを遂行すべき責務があるのであるから(警察法二条一項参照)、警察官が犯罪捜査の必要上写真を撮影する際、その対象の中に犯人のみならず第三者である個人の容ぼう等が含まれても、これが許容される場合がありうるものといわなければならない。  そこで、その許容される限度について考察すると、身体の拘束を受けている被疑者の写真撮影を規定した刑訴法二一八条二項のような場合のほか、次ような場合には、撮影される本人の同意がなく、また裁判官の令状がなくても、警察官による個人の容ぼう等の撮影が許容されるものと解すべきである。すなわち、現に犯罪が行なわれもしくは行なわれたのち間がないと認められる場合であって、しかも証拠保全の必要性および緊急性があり、かつその撮影が一般的に許容される限度をこえない相当な方法をもって行なわれるときである。このような場合に行なわれる警察官による写真撮影は、その対象の中に、犯人の容ぼう等のほか、犯人の身辺または被写体とされた物件の近くにいたためこれを除外できない状況にある第三者である個人の容ぼう等を含むことになっても、憲法一三条、三五条に違反しないものと解すべきである。

平成17年11月10日最高裁第一小法廷判決民集 59巻9号2428頁(平15(受)281号 損害賠償請求事件 〔上告審〕)

上記最高裁判例は写真及びイラストにおける肖像の保護(権利侵害)について、それぞれ下記の通り判示して、その判断基準を示しています。

写真の肖像の保護

人は,みだりに自己の容ぼう等を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有する(最高裁昭和40年(あ)第1187号同44年12月24日大法廷判決・刑集23巻12号1625頁参照)。もっとも,人の容ぼう等の撮影が正当な取材行為等として許されるべき場合もあるのであって,ある者の容ぼう等をその承諾なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは,被撮影者の社会的地位,撮影された被撮影者の活動内容,撮影の場所,撮影の目的,撮影の態様,撮影の必要性等を総合考慮して,被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決すべきである。

イラストの場合

人は,自己の容ぼう等を描写したイラスト画についても,これをみだりに公表されない人格的利益を有すると解するのが相当である。しかしながら,人の容ぼう等を撮影した写真は,カメラのレンズがとらえた被撮影者の容ぼう等を化学的方法等により再現したものであり,それが公表された場合は,被撮影者の容ぼう等をありのままに示したものであることを前提とした受け取り方をされるものである。これに対し,人の容ぼう等を描写したイラスト画は,その描写に作者の主観や技術が反映するものであり,それが公表された場合も,作者の主観や技術を反映したものであることを前提とした受け取り方をされるものである。したがって,人の容ぼう等を描写したイラスト画を公表する行為が社会生活上受忍の限度を超えて不法行為法上違法と評価されるか否かの判断に当たっては,写真とは異なるイラスト画の上記特質が参酌されなければならない。

撮影や公表などの同意の範囲について

平成18年5月23日東京地裁判決判時 1961号72頁(平16(ワ)27003号損害賠償請求事件) は、「本人が一度その撮影及び公表に同意した場合においても,本人の同意の範囲の判断に当たっては,慎重に解釈すべきであり,その同意の範囲を超えたものについては,人格的利益を侵害する違法な行為であると評価すべきである」と判示しています。

そのうえで、「どの範囲で上記写真を再使用することを許諾していたかについては,これを明記した書面等の存在が認められない」ような場合、「当該使用が承諾の範囲内にあるか否かについては,その使用の形態,使用された媒体,使用された時期などを考慮しながら決するほかない」としています。

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