Contents

Eicリーガルコンテンツ

 労働基準法37条1項は、「使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。」と定めます。

 そして、「第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合」というのは、労働基準法32条の労働時間を例外的に延長させた場合のことを指しています。労働基準法第32条第1項は「使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。」とさだめ、 第2項は、「使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。 」と定めます。

 また、「労働時間」とは、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まる」(平成12年 3月 9日最高裁第一小法廷判決)とされています。

平成12年 3月 9日最高裁第一小法廷判決

労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)三二条の労働時間(以下「労働基準法上の労働時間」という。)とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではないと解するのが相当である。そして、労働者が、就業を命じられた業務の準備行為等を事業所内において行うことを使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされたときは、当該行為を所定労働時間外において行うものとされている場合であっても、当該行為は、特段の事情のない限り、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ、当該行為に要した時間は、それが社会通念上必要と認められるものである限り、労働基準法の労働時間に該当すると解される。

 したがって、労働基準法「第三十三条又は前条第一項の規定により」労働基準法32条の労働時間を延長した場合でも、割増賃金支払請求義務が発生する(労働基準法第37条第1項「使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。」等参照)ため、労働基準法「第三十三条又は前条第一項の規定に」よらずに労働基準法32条の労働時間を延長した場合も、割増に関する内部規定がある場合は当然、そうでなくても同様の割増賃金を請求できると考えるべきです。

 さらに、労働基準法「第三十三条又は前条第一項の規定に」よらずに労働基準法32条の労働時間を延長した場合など、法律違反をした使用者に対して法は使用者に対する制裁と被用者に対する救済として、付加金の支払いを定めています(労働基準法第114条「裁判所は、第二十条、第二十六条若しくは第三十七条の規定に違反した使用者又は第三十九条第七項の規定による賃金を支払わなかつた使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあつた時から二年以内にしなければならない。」)。

 したがって、労働基準法「第三十三条又は前条第一項の規定に」よらずに労働基準法32条の労働時間を延長した場合など、使用者の法律違反により法律所定の労働時間を超える労働をした場合、割増賃金に加えて付加金の請求ができる場合があります。

  1. この記事へのコメントはありません。