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退職金の法的性質

退職金は、就業規則にその支給条件が定められ、会社が当然に支払い義務を負う性質のものは、労働の対象として支払う「賃金」の後払い的性質を有するとされています。

つまり、会社と労働者で合意した「賃金」の一部と解釈されることになります。

もっとも、退職金と言ってもさまざまな性質のものがあり、慣行として支払われている場合や、特別の慰労の意味合いで支払われるものまですべてが上記のような賃金の後払いとしての性質を付与されるとまではいえません。退職金の発生根拠や、これまでの支払状況等種々の条件を勘案していく必要があります。

就業規則の不利益変更

就業規則を会社や経営者は一方的に不利益変更して退職金を得る権利を奪うことができるのでしょうか。

就業規則とは

就業規則は、単なる会社の約束事なのでしょうか。それとも、法律的にも意味のある規程なのでしょうか。

この点、最高裁判所大法廷判決昭和43年12月25日(民集 22巻13号3459頁等)は,「元来、「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである」(労働基準法二条一項)が、多数の労働者を使用する近代企業においては、労働条件は、経営上の要請に基づき、統一的かつ画一的に決定され、労働者は、経営主体で定める契約内容の定型に従つて、附随的に契約を締結せざるを得ない立場に立たされるのが実情であり、この労働条件を定型的に定めた就業規則は、一種の社会的規範としての性質を有するだけでなく、それが合理的な労働条件を定めているものであるかぎり、経営主体と労働者との間の労働条件は、その就業規則によるという事実たる慣習が成立しているものとして、その法的規範性が認められるに至つている(民法九二条参照)ものということができる」と判示し、就業規則の慣習法(類似)の法規範性を認めるに至っています。

そのうえで、「右に説示したように、就業規則は、当該事業場内での社会的規範たるにとどまらず、法的規範としての性質を認められるに至つているものと解すべきであるから、当該事業場の労働者は、就業規則の存在および内容を現実に知つていると否とにかかわらず、また、これに対して個別的に同意を与えたかどうかを問わず、当然に、その適用を受けるものというべきである」と述べて、就業規則の法規範性にが個々の労働者を拘束することを述べています。

就業規則の不利益変更

この点、最高裁判所大法廷は上記の昭和43年12月25日判決において「新たな就業規則の作成又は変更によつて、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として、許されないと解すべきであるが、労働条件の集合的処理、特にその統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいつて、当該規則条項が合理的なものであるかぎり、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されないと解すべきであり、これに対する不服は、団体交渉等の正当な手続による改善にまつほかはない。」と述べています。

つまり、不利益変更(後の就業規則の適用により既得の権利を奪い不利益な労働条件を一方的に課すこと)は原則として許されないとしながら、「合理性」が認められる限り個々の労働者は変更後の就業規則の適用を免れないとしました。

合理性の判断

合理性の判断は、個々の事案に応じて変更の経緯や会社の経営状況、代替手段の有無やその実効性を踏まえて判断されることになります。この点は、法律の専門家の判断を事案ごとに見ていくしかありません。第一次的には相律相談において弁護士が法的見解を示すことが可能です。もし、退職金規定など不利益な就業規則の変更について有効性を専門家に相談したい場合、お気軽にお申し付けください。

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