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著作権、出版権、著作隣接権(以下「著作権等」と言います。)を侵害した場合、著作権等侵害者は、他人の権利を侵害したものとして、損害の賠償義務を負います(民法709条)。

損害額の認定

この賠償されるべき「損害」の「額」について、原則的に賠償を請求する当事者が立証責任を負います。しかし、民事訴訟法248条は、「損害が生じたことが認められる場合において、損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる」と定めます。さらに著作権法114条の5は、「著作権、出版権又は著作隣接権の侵害に係る訴訟において、損害が生じたことが認められる場合において、損害額を立証するために必要な事実を立証することが当該事実の性質上極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる」と定めます。このように、著作権等侵害においては、「損害額」について、「損害」の「性質」上立証が「極めて困難」な場合、立証がなくとも裁判所が損害額を認定することができるとされているに留まらず、「損害額を立証するために必要な事実」について、損害額立証に必要な「事実」の「性質」からその立証が「極めて困難」な場合にも、裁判所が損害額を認定することができるとされています。損害額の立証に必要な事実とは、例えば、著作権等侵害の回数や期間、地域などを指し、立証が極めて困難というのは、これらの事実(例えば侵害が行われていた期間や地域)を立証することが事実の性質上不可能な場合や莫大なコストがかかる等して極めて困難な場合などを言います。

損害額の推定等

著作権法第114条は、損害額の推定等について定めています。
第1項においては、「譲渡等数量」× 「侵害の行為がなければ販売することができた物(受信複製物を含む。)の単位数量当たりの利益の額」を損害額とできることを定めるとともに、「著作権者等の当該物に係る販売その他の行為を行う能力に応じた額を超えない限度」及び、「著作権者等が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量…控除」というリミットを設けてバランスをとっています。
第2項は、損害額の推定規定であり、「侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は…損害の額と推定する」と定めています。第2項は推定規定であり、侵害行為による利益が損害額と異なることを立証したときは、推定の効力は覆ることになります。
第3項、4項は、その著作権又は著作隣接権の行使につき「受けるべき金銭の額に相当する額」を損害金として損害賠償請求ができることと、その場合、損害額は、著作権又は著作隣接権の行使につき「受けるべき金銭の額に相当する額」に限定されないことなどを規定しています。

著作権法第114条
 第1項 著作権者、出版権者又は著作隣接権者(以下この項において「著作権者等」という。)が故意又は過失により自己の著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為によつて作成された物を譲渡し、又はその侵害の行為を組成する公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行つたときは、その譲渡した物の数量又はその公衆送信が公衆によつて受信されることにより作成された著作物若しくは実演等の複製物(以下この項において「受信複製物」という。)の数量(以下この項において「譲渡等数量」という。)に、著作権者等がその侵害の行為がなければ販売することができた物(受信複製物を含む。)の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額を、著作権者等の当該物に係る販売その他の行為を行う能力に応じた額を超えない限度において、著作権者等が受けた損害の額とすることができる。ただし、譲渡等数量の全部又は一部に相当する数量を著作権者等が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものとする。
 第2項 著作権者、出版権者又は著作隣接権者が故意又は過失によりその著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、当該著作権者、出版権者又は著作隣接権者が受けた損害の額と推定する。
 第3項 著作権者又は著作隣接権者は、故意又は過失によりその著作権又は著作隣接権を侵害した者に対し、その著作権又は著作隣接権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額を自己が受けた損害の額として、その賠償を請求することができる。
 第4項 前項の規定は、同項に規定する金額を超える損害の賠償の請求を妨げない。この場合において、著作権又は著作隣接権を侵害した者に故意又は重大な過失がなかつたときは、裁判所は、損害の賠償の額を定めるについて、これを参酌することができる。

 

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