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1 国家賠償法

国家賠償法1条1項は「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」と定めています。

これが、国家に対して賠償責任を追及していく根拠規定となります。

近代前の国家においては,国家の行為は違法ではあり得ないという,主権無答責の法理が通用していました。

しかし,近代国家においては,主権無答責などということはあり得ず,国の行動でも,違法な行動は,賠償責任の対象となり得ます。

憲法17条は,「何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。」と定め,「不法行為」という表現で,国の賠償責任を謳っています。

この憲法17条の規定を受け,国家賠償法が存在しています。

2 国家賠償責任の性質

国家賠償責任の性質については,「不法行為」をした公務員の代わりに国が責任を負うのか,「不法行為」を行ったのは国自身であるから,国が責任を負うのか争いがあります。

札幌高等裁判所昭和43年5月30日判決は判決文中で,「国家賠償法第一条による国又は公共団体の賠償責任が公務員の故意又は過失に基づく加害行為を前提としてその責任を代位するものであることは、上記条文からも明らかであって」と述べています。

このように,日本の裁判所は国が公務員個人の不法行為について,代位して責任を負うと考えていると言われます。

いずれにせよ,公務員自体は,国が代わりに責任を負ってくれることから,自らは直接責任を負わないと考えられています(最高裁判所も,昭和30年4月19日の判決文で,「損害賠償等を請求する訴について考えてみるに、右請求は、被上告人等の職務行為を理由とする国家賠償の請求と解すべきであるから、国または公共団体が賠償の責に任ずるのであつて、公務員が行政機関としての地位において賠償の責任を負うものではなく、また、公務員個人もその責任を負うものではない。」としています。)。

つまり,公務員の職務中の不法な行動によって損害を受けた場合,公務員に代わる国その他公共団体に責任を追及することは出来ますが,公務員個人に責任を追及することは認められていないのです。

国が賠償責任を負った後は,国と公務員の問題となっていきます(「公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。」(国家賠償法1条2項))。

 

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