I2練馬斉藤法律事務所

I2練馬斉藤法律事務所は練馬駅前に所在し、著作権を中心とした知的財産権やインターネット法、損害賠償や刑事弁護、一般民事などを広く取り扱っています。

2020年10月14日明治大学知的財産法政策研究所IP LP Iでリツイート事件のオンラインシンポジウムが開催されました。そこで、聴講しての私の個人的な感想など主観的な情報をメモも兼ねて記しておきたいと思います。

本当にあっという間に時間が過ぎて行きました。濃密な2時間半だったと感じました。

著作権法と憲法という視点

著作権法の側面はもちろんですが、木下先生が持ち込んでくださった憲法的な視点は議論をとても幅の広いものにし、また、個人的にとても刺激を受ける部分が多かったです。

というのも、プロバイダ責任制限法は憲法的な問題点を多く含んだ法律であり憲法的な理論武装というのは実務的にも重要だと考えているからです。

そういう視点から、著作権と憲法という議論には個人的に現在とても興味を持っています。

プロバイダ責任制限法を舞台にした対立利益である被害者の裁判を受ける権利や、人格権、そして『人権としての著作権』にも踏み込んだ議論が今後展開されることにも期待したいです。

個人的に気にいったのは、表現の自由のエンジンとしての著作権というフレーズでした。

著作権法上の議論について

個人的にはあの事件は判決文、特に氏名表示権侵害のところ(中でも当てはめの部分)つまり、『判示事項2』は、事例判断なのでそれほど気にしなくていい部分ではないかと考えています。

あの事件で重要なのは判断された部分では判事事項3が重要で、権利侵害の面では、判示されていない部分が重要だと考えています※。

もっと言えば、現状ではなぜ最高裁判所が同一性保持権侵害や、公衆送信権侵害の点に結論をだし、これを宣明することができなかったか、結論を出す障壁となっている部分はどういった点なのか、その分析をした上で、議論を構築していくことが重要ではないでしょうか。

この辺りは主張書面を公開できればまたあの事件への見え方は違ってくる可能性もあり、主張書面を公開できていない現状を個人的には残念に思っていますが、如何ともしがたいところもあるなとも思っています。

特に研究者の方さえわざわざ記録の閲覧に行っていただいている現状はどうにかならないかなあと思いながら、ただ、現状では色々と障碍も多く対応が難しいところもあります。

※もちろん判示事項1は、インターネット著作権法に留まらない著作権全体に影響する法解釈が示されたので規範的な意味では一番重要と捉えられますが結論には異論の少ないところのようです。

予選本選という捉え方への違和感

予選本選という言葉が出てきていました。しかし、インターネット上の著作権侵害訴訟において発信者情報開示請求訴訟も損害賠償請求訴訟も相当数担当していますが、それほど差があるかというと私は疑問というのが率直な感想です。

確かに、本選では損害論がありますが、その点以外侵害論でそれほど大きな判断の差を感じたことはありません。損害論の差は大きいです。著作権侵害訴訟ではここが肝であるとも言えるため、損害論があるという意味では確かに予選本選という区分けは意味がありそうですが、侵害論の判断にそれほど差はないと個人的には思います。

ただ、プロバイダ側が形式的にしか争わない事件と形式的にも実質的にも争う事件があり、全くの個人的感想ですが、前者と後者は刑事事件でいう認め事件と否認事件くらい差があります。プロバイダ側において形式的にしか争っていない事件(あるいは争点)については、予選本線の議論に近い状況があるのは事実だと思います。

また、本選は本選でいろいろと問題があり、本選だからまともな審理があるかというと現状はそうではなく、世界的なIT企業がふんだんに費用をかけて国内最高峰の法律事務所が代理する発信者情報開示ほど充実した審理が行われる例は損害額が低額にとどまるインターネット上の著作権侵害訴訟において本選ではおよそ存在しないというのが現状ではないかと思います。

私個人は本選に幻想があるように個人的には思いました。本選は少なくとも賠償額が高くないインターネット上の著作権侵害訴訟では、そんなに充実したものにはなっていないのが現状です。

おそらく判決の結論への違和感に対する分析から出てきた議論なのだと思いますが、あの事件で結論に違和感が出ているのは、別の理由だと私は思います。そして、その点からも氏名表示権侵害の特に当てはめ部分は事例における判断ではないかと思います。

最高裁判所の技術的な理解への誤解

最高裁判所は、インターネットに疎いような誤解があるように感じました。それは全くの誤解で、あの判決はインターネットというか、ウェブサイト、ブラウザに相当くわしくないと書けないと考えています。調査官レベルでは少なくとも、非常に理解した状態であの判決が書かれていると私は思っています。

その証左として、要旨が挙げられます。アップデートされた要旨はやはり、調査官が書かれているのではないかと思い、アップデート前のものは逆に調査官が書いたのではないような気もします。全くの主観です。

その他

原告が訴訟の追行を頑張ったから最高裁判決が出て、結果的に良いシンポジウムが開けてよかった的なことをシンポジウム終了後にまだ通信が切れていないタイミングで、高倉先生が何気なくおっしゃってくださって、嬉しかったです。

実際に原告は、5年間も辛抱強く事案を任せてくださいました。原告のご理解がなければ存在しなかった最高裁判決であることは間違いないと思います。

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