3分で振り返るリツイート事件
目次
争いになっている点(原告側と被告側で意見が対立している点)
リツイート事件は文字通り,リツイート者のリツイート行為が違法か適法かが、対立点になっています。
もともと、元ツイート者がインターネットで拾ったと思われる原告(プロ写真家)の写真を無断でツイートしました。
さらに別のアカウントが、元ツイートをリツイートしました。
無断で画像をツイートした元ツイートのアカウントが違法であることは,原告側と被告側で意見が一致しています。
原告側と被告側で意見が対立しているのは、元ツイートをリツイートしたリツイートのみを行ったアカウントが、違法となるかどうかです。
原告側が権利侵害を主張した7つの権利
原告側はリツイートだけしたアカウントも違法だと主張しています。被告側は、リツイートだけしたアカウントは違法ではないと主張しています。
原告がリツイート者の権利侵害を主張した権利は、①複製権、②送信可能化権、③公衆送信権、④公衆伝達権、⑤同一性保持権、⑥氏名表示権、⑦名誉声望保持権の7つの権利です。
原告側は、リツイート者がこの7つの権利全てを侵害していると主張しています。反対に、被告側は、リツイート者はこの7つの権利を全て侵害していないと主張しています。
裁判所の判断「7つの権利のうち侵害するものはどれか」
第一審
第一審は、①から⑦まで、7つ全ての権利をリツイート者は侵害していないのだと結論づけました。これは、被告側の主張を全面的に認めた形です。
控訴審
控訴審も、第一審と同様に、①から④(著作財産権)と、⑦名誉声望保持権(著作者人格権)の権利侵害は認めませんでした。
これに対して控訴審は、一審とは異なり、リツイート者に対して⑤同一性保持権と⑥氏名表示権という、2つの権利(著作者人格権)の権利侵害を認めました。
このように、第一審と控訴審で判断が異なるのは、リツイート者による⑤同一性保持権と、⑥氏名表示権の権利侵害を認めるか認めないかの点です。
⑤同一性保持権と⑥氏名表示権の権利侵害巡る対立点
⑤同一性保持権については、A.そもそもリツイートは新たに同一性保持権を侵害するのか、B.同一性保持権を侵害したのは元ツイート者か、リツイート者か、が争われています。
⑥氏名表示権についても同様に、A.リツイートは氏名表示権を侵害するのか、B.氏名表示権を侵害したのは、リツイート者か元ツイート者かが争われています。
一審は、両権利についてAの点及びBの点あるいは、少なくともBの点についてリツイート者によって⑤同一性保持権及び⑥氏名表示権のいずれについても権利侵害は生じていないと結論づけました。
これに対して控訴審は、Aの点について、リツイートにより新たな同一性保持権侵害及び氏名表示権侵害が生じ、Bの点について、その侵害主体はリツイート者であるとしました。
上告審
そこで、⑤と⑥の権利侵害を認めなかった第一審と違って、⑤と⑥の権利侵害を認めた控訴審に対して、判決を不服として、被告側が最高裁判所に上告(正確には上告受理申立)をしました。
令和2年7月21日言い渡されるのが、この点についての最高裁判所の判断です。
⑤と⑥の権利について、最高裁判所も権利侵害を認めるのか、あるいは、権利侵害を認めないのか、あるいは、一審とも控訴審とも異なる判断をするのか、来週に明らかになります。