I2練馬斉藤法律事務所

I2練馬斉藤法律事務所は練馬駅前に所在し、著作権を中心とした知的財産権やインターネット法、損害賠償や刑事弁護、一般民事などを広く取り扱っています。

I2練馬斉藤法律事務所は、著作権侵害に基づく損害賠償請求と、交通事故被害者の損害賠償請求を比較的多く取り扱ってきた法律事務所です。交通事故と著作権侵害を共に比較的多く取り扱ってきた経験から、著作権侵害と交通事故被害による賠償実務の交差領域について言及したいと思います。

交通事故は、軽佻な事故まで含めると発生件数が多く、損害賠償実務の指標を形成してきました。入通院慰謝料や、後遺症など交通事故賠償実務で形成された賠償基準が他の事故類型に援用されることは少なくありません。

ところで、著作権侵害は形のない知的財産権侵害類型です。では、著作権侵害に基づく損害賠償請求において、交通事故訴訟が参考になる場面はあるのでしょうか。

著作権侵害の起算点の算定

まず、参考となるのが交通事故訴訟で確立された、事故時から遅延損害金を請求できるという法理です。では、交通事故賠償実務で確立された基準に従った場合、著作権侵害に基づく損害賠償請求権は、いつの時点で履行遅滞に陥るのでしょうか。

この点、著作権侵害に基づく損害賠償請求権も、交通事故被害に基づく損害賠償請求と同じく、その法的根拠は民法709条に基づく不法行為債権です(ただし、自賠法による請求などの場合もあります。)。

そして、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求を巡る遅延損害金の起算点については、交通事故事案において最高裁判所判例の蓄積があるところです。

つまり、平成 7年 7月14日最高裁第二小法廷判決 平成4年(オ)685号 損害賠償請求事件平成7年最高裁判決は「不法行為に基づく損害賠償債務は、損害の発生と同時に、なんらの催告を要することなく、遅滞に陥るものである(最高裁昭和三四年(オ)第一一七号同三七年九月四日第三小法廷判決・民集一六巻九号一八三四頁参照)。そして、同一事故により生じた同一の身体傷害を理由とする損害賠償債務は一個と解すべきであつて、一体として損害発生の時に遅滞に陥るものであり、個々の損害費目ごとに遅滞の時期が異なるものではないから(最高裁昭和五五年(オ)第一一一三号同五八年九月六日第三小法廷判決・民集三七巻七号九〇一頁参照)、同一の交通事故によつて生じた身体傷害を理由として損害賠償を請求する本件において、個々の遅延損害金の起算日の特定を問題にする余地はない。」と判示しており、この最高裁法理が著作権侵害へも適用されるものと考えられます。

すると、著作権侵害の損害賠償債務は、権利侵害の日から履行遅滞に陥り、遅延損害金の履行義務が生じるものと考えられます。

東京地方裁判所交通事故専門部と知的財産権法専門部

東京地方裁判所には、交通事故専門部(民事27部)と、知的財産権法専門部(民事29、40、46、47部)が存在します。交通事故専門部は賠償訴訟専門部であることは比較的自明ですが、知的財産権法専門部も、賠償訴訟の専門部ということができます。審決などの取消訴訟は、一審が知的財産高等裁判所であるため、東京地方裁判所の知的財産権法専門部では、民事における知的財産権侵害に基づく差し止めや、損害賠償請求が多数を占めることになります。

物的損害と人的損害の別

交通事故賠償では、物的損害(財産的損害)と人的損害を異なる訴訟物と捉えます。この考え方と並行するように、著作権侵害においても支分権侵害に基づく財産的損害と、著作者人格権侵害に基づく慰謝料などの請求を、分けて把握します。

保険制度の示唆

交通事故は、交通事故をめぐる賠償保険が一般的に普及しています。こうした賠償保険の充実は、あるべき著作権侵害の賠償法務の形について、示唆を与えます。すなわち、交通事故被害者と加害者は、一般的に普及した賠償保険制度によって交通事故の際に保護されます。保険加入者たる加害者が保護されることはもちろん、被害者も、加害者の無資力の危険から保護されている実態があります。

こうした賠償保険制度の充実は、国民総クリエイター時代の著作権保護法制や、著作権侵害賠償実務の在り方についても一定の示唆を与えてくれます。

現在、事業者向けの保険はありますが、個人向けの情報発信における過誤を保険する保険商品はまだ、一般的に普及しているとは言い難い状況です。しかし、保険制度の充実が齎す効果については、交通事故賠償実務が著作権侵害に対する賠償法務に大きな示唆を与えています。

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