I2練馬斉藤法律事務所

I2練馬斉藤法律事務所は練馬駅前に所在し、著作権を中心とした知的財産権やインターネット法、損害賠償や刑事弁護、一般民事などを広く取り扱っています。

国際航空運送を巡る事故などを巡る裁判例を中心とした法律問題を紹介しています。

弊所では、旅行やレジャーを巡って発生したトラブルの解決などの弁護士業務を取り扱っています。

ワルソー条約と損害賠償請求

国際運送を巡っては、ワルソー条約の適用が問題となります。

平成12年 9月25日東京地裁判決(平5(ワ)15476号 損害賠償請求事件)は、「A三一〇-三〇四、HSIFID旅客機(以下「本件事故機」という。)が、一九九二年(平成四年)七月三一日午前一〇時五五分(現地時間)、バンコク発カトマンズ行TG三一一便として、乗客九九名、乗務員一四名、合計一一三名を乗せてタイ国際空港を離陸した後、現地時間の同日午後一時一五分ころ(協定世界時の七時ころ)、カトマンズの北北東二三・三ノーティカル・マイル(一ノーティカル・マイルは一八五二メートル。)に位置する海抜一万六〇〇〇フィートのゴプテ山に激突して機体が大破し、乗客・乗務員全員が死亡し、手荷物等が滅失した事故(以下「本件事故」という。)について、乗客の…遺族…である原告が、被告に対し、一九二九年一〇日一二日にワルソーで署名された、「国際航空運送についてのある規則の統一に関する条約を改正する議定書」(昭和四二年条約第一一号。以下「ヘーグ議定書」という。)により改正された後の同条約(以下「ワルソー条約」という。)一七条、一八条の規定、又は不法行為(使用者責任。ただし、遺族である原告固有の損害についての請求。)に基づき、本件事故によって生じた損害(被害者…の損害及び相続人である原告固有の損害)の賠償を求めた事案」です。

ワルソー条約の適用

上記裁判例で裁判所は、「 航空機による有償の国際運送については、ワルソー条約が存在しているところ…我が国はヘーグ議定書による改正前のワルソー条約及びヘーグ議定書を批准しているから、右運送契約は、改正前ワルソー条約及びヘーグ議定書の締約国である日本国の領域にある地を出発地及び到着地とし、予定寄航地を他の国であるネパール国の領域にある地とする航空機による旅客の国際運送契約であることが明らかである」と述べて、「ワルソー条約が適用されることになる(ワルソー条約一条)」ことを指摘しています。

この様に、国際運送についてはワルソー条約が適用されるケースが多く存在します。

ワルソー条約に基づく乗客の損害賠償請求権

ワルソー条約は、その一七条において「運送人は、航空機上で生じた事故を原因とする旅客の死亡又は負傷その他の身体の障害の場合における損害について、その損害の原因となった事故が航空機上で生じ…たものであるときは、責任を負う。」と規定し、その一八条において「運送人は、託送手荷物又は貨物の破壊、滅失…の場合における損害について、その損害の原因となった事故が航空運送中に生じたものであるときは、責任を負う。」と規定してい」ます。

「他方では、その二〇条において、運送人側が「損害を防止するため必要なすべての措置を執ったこと又はその措置を執ることができなかったことを証明したときは責任を負わない。」と規定してい」ます。

上記裁判例で裁判所は、「国際航空運送において右の損害が発生した場合には、直接ワルソー条約一七条、一八条の規定に基づき損害の賠償を請求することができる(すなわち、右各条が損害賠償請求の責任原因になる)とともに、右各条に該当する損害については、右各条が優先して適用されるものと解するのが相当である(同条約二四条)」と判示しています。

遺族固有の損害とワルソー条約の準拠法

この様に乗客はワルソー条約に基づく損害賠償請求権を有するとして、遺族固有の損害についてこの賠償を認める日本法を準拠法とできるかが問題となりました。

上記裁判例で裁判所は、「本件のような国際航空運送契約に係るワルソー条約一七条に基づく請求については、法例における契約債権及び不法行債権に係る各抵触規則を類推適用することは妥当でなく、事件ごとに、訴訟当事者の国籍、住所、営業所、旅客の国籍、住所、その他事件に重要な関係を持つ諸要素を抽出し、当事者の衡平をも考慮して、条理によって準拠法を決定するのが妥当である」と判示しています。

その上で、本件においては、「原告及び旅客…の国籍、住所は日本国、被告の本店所在地はタイ国であるが、被告は日本国東京に営業所を有している上、本件運送契約が締結されたのも日本国であり、かつ、被告が原告に交付した旅客切符及び手荷物切符は日本国内において日本語を使用する旅客に対し交付するためのものであった(最後の事実は、乙二の1、三、四から認められる。)から、当事者の衡平の観点をも踏まえ、これらの事情を総合考慮すると、本件の準拠法は法廷地法である日本法とするのが妥当である」とし、「したがって、原告は、ワルソー条約一七条の規定に基づき、民法七〇九条、七一一条に規定される遺族固有の損害をも請求できると解するのが相当である」と判示しています。

手荷物延着事故と慰謝料

平成15年 2月25日 仙台地裁 判決(平13(ワ)310号 損害賠償請求事件)は、「国際線旅客機を利用して海外視察旅行に出かけた原告…が,被告が受託手荷物の同時運送義務を怠った結果…往路の空港で着替えが入った手荷物を受け取ることができず,私服での視察を余儀なくされて肩身の狭い思いをし,…復路の空港で手帳等が入った手荷物を受け取ることができず,帰国後の業務の予定を把握できないため支障を来すなどして,それぞれ精神的苦痛を被ったとして,被告に対し,その損害の賠償を求め」た事案です。

同事例で裁判所は、手荷物が延着した場合でも直ちに損害賠償責任を負うものではなく、客観的に相当な期間を超えて手荷物が延着した場合に初めて法的責任が発生すると判断しています。

相当期間経過の場合の法的責任

すなわち、上記裁判例で裁判所は、「旅客と手荷物の所在,両者の地理的関係,その地域における航空機の運航状況その他の交通事情,航空会社の運送処理体制等に照らして,旅客が運送された時から客観的に相当な期間を経過して手荷物が運送された場合には,被告は債務不履行責任を負うが,運送人が無過失であることを立証したときは責任を免れることになる。」と述べています。  

手荷物延着に故意・重過失がある場合

さらに、「もっとも,手荷物を預託した旅客は,当該手荷物が旅客と同時に運送されることを期待し,これを前提にして目的地到着後の行動を予定するのが通常であるから,同時に運送されなかったのが運送人の故意又は重過失による場合には,信義則上,客観的に相当な期間の経過の有無を問わず当該手荷物が旅客と同時に運送されなかったことによる損害について責任を負うと解するのが相当である」として、故意・重過失の場合は相当期間の経過が問題とならないことも指摘しています。

不法行為責任

上記事例で裁判所は手荷物の延着について不法行為責任を否定してます。

「手荷物の延着の場合に被告が負う責任は,本件各運送契約からはじめて発生するものであり,同契約を離れて,一般的に延着を生ぜしめてはならないという義務まで被告に認められるわけではない。本件では,被告従業員の何らかの違法行為によって手荷物…の延着が生じたという具体的事実の主張がない。したがって,被告は,手荷物…いずれの延着についても不法行為責任を負うものではない」。

改正ワルソー条約

上記裁判例では、「本件各運送契約は,いずれも出発地および到達地が2の締約国の領域にある航空機による受託手荷物の運送契約として改正ワルソー条約1条2項前段の国際運送に該当し,各契約の法律関係についてはそれぞれ改正ワルソー条約が適用される。そして,改正ワルソー条約が国際航空運送の条件を統一的に規制することを目的として規定されたものであり,同条約中には法廷地の法律に従って判断すべき場合があることを想定した規定があることを併せ考慮すると,改正ワルソー条約は同条約1条及び2条に該当する国際航空運送の法律関係について直接に適用されるものと解するのが相当である」として、改正ワルソー条約の適用が肯定されています。

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