I2練馬斉藤法律事務所

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雪は自動車の運転などを狂わせ易く、平時とは異なる賠償基準や法的評価が妥当する場合もあります。また、スキーやスノーボードなど雪上レジャーにおいても危険は避け難く存在し、死亡事故をはじめとする重大事故も発生しています。

雪に影響を受けた事故について、損害が発生した場合、法律専門家への相談もご検討ください。

雪上の事故

積雪時のノーマルタイヤと過失責任

令和元年 9月25日名古屋地裁判決(平29(ワ)2508号損害賠償請求事件)は、「名古屋市内では,本件事故の前日(平成29年1月14日)の正午前後から雪が降り,夜には一時雪がやんだものの,約1~3cm程度の積雪が観測されていた。本件事故当時,本件事故現場付近は雪が降っており,本件道路上には約2cmの雪が積もっていた。なお,本件事故当時,本件道路の路面が凍結していたかどうかは必ずしも明らかではない(実況見分調書の「路面の状況」欄…の「凍結」欄にはチェックがない。)が,名古屋市内の本件事故当時の気温が氷点下であったこと…からすると,本件道路の路面が凍結していた可能性は否定できない」という状況で起こった事故です。

このとき、裁判所は、「名古屋市の中心部においては,冬期であっても,積雪や路面の凍結によって路面が滑りやすい状況になることは稀であることから,本件事故当時のように,前日から雪が降ったり止んだりの天候で,路面の積雪が2cm程度の状況であれば,ノーマルタイヤで滑止めの措置を講じることなく一般道を走行する車両も少なくないといえる(公知の事実又は経験則上認められる事実)」としながら、「原告には,本件事故当時,雪が降っており,積雪により路面が滑りやすくなっている状態であったにもかかわらず,タイヤ・チェーンなど滑止め措置を講じることなく原告車を走行させた点に過失があったと認められる」と判示しています。このように、平時雪が降らない地方でも、積雪時にノーマルタイヤで走行していることは、過失原因となり得ます。

スキーと事故

スキーは、雪上を高速で滑り降りるスポーツ・レジャーという性質から、事故も避け難く発生します。

スキー場の事故におけるスキーヤー及びスノーボーダー(スキーヤー等)とスキー場経営者の危険分担

平成16年 7月12日長野地裁判決(平15(ワ)395号 損害賠償請求事件)は、下記のとおり、スキーヤー等とスキー場経営者の危険の分担について判示しています。

「スキー及びスノーボード(スキー等)は、雪崩、沢への転落、転倒及び立木、リフト支柱、他のスキーヤー等との衝突などの危険を内包している性質を有しているため、その行動のルールとして、国際スキー連盟(FIS)のルールである「安全と行動」(乙7の1)や国内スキー等安全基準(乙9)が定められている。また、スキー等は、山の自然の地勢を利用したスポーツであり、滑走面の状況、スキーヤー等の滑走技量ないし熟練度、滑走態様、滑走速度、気象条件等に応じてその危険の程度が様々であるとしても、その性質上、高度の危険を伴うスポーツであるため、スキー等において、どのような注意配分をし、滑走コースを選択し、速度を調節するかは、当該スキーヤー等の自由な判断に委ねられており、その判断に基づき、コース状況と自己の技量に応じて斜面を滑走することを本質とするものである。したがって、スキーヤー等はスキー等そのものに内在する危険を十分承知しているものと認められ、スキー等滑走に伴う具体的危険については、当該スキーヤー等自身の責任において危険を予見回避するなどの安全管理を行い、自己の技量に応じた滑走をすることに努めるべきである。
 他方、スキー場を経営し、あるいはスキー場のリフトを管理する者(スキー場経営者等)は、スキーヤー等を滑走に適した滑走斜面の上部に運送し、スキーヤー等を上記のとおり危険を内包する滑走面に誘導する以上、スキーヤー等が自身で甘受すべき程度を越えた危険に遭遇することの内容、現実のスキーヤー等の利用状況、積雪状況、滑走面の状況等を考慮の上、スキーヤー等の安全を確保すべき義務があるというべきである。したがって、スキー場経営者等が不注意によりその義務を尽くさず、スキーヤー等が自身において負担すべき程度を越えた危険に遭遇して死亡した場合には、スキー場経営者等は債務不履行ないし不法行為責任を負うものである。
 以上から、スキー等滑走時に当該スキーヤー等が本来的に甘受すべき危険の範囲か否かは、当該スキー等事故の態様、結果、当該スキー等事故がスキー等滑走時において通常伴う程度のものか否か、スキーヤー等についてスキー等滑走時に要求される一般的、原則的ルールの遵守の有無、程度、スキー場経営者等による当該事故現場の管理状況等を考慮して個別具体的に判断すべきである。」

そのうえで、同判例においては、スキー場経営者の責任が否定され、原告の請求が棄却されています。

また、平成 2年12月 6日横浜地裁川崎支部判決(昭63(ワ)96号 損害賠償請求事件)においても、「本件ゲレンデの上端には、本件事故当時、進入禁止ないし滑走注意を促す明白な標識がなかったものの、他のスキーヤーによる滑走もなされていなかったし、まず、本件ゲレンデの状態が、圧雪されないままブッシュ等もところどころ露出していて、仮に滑走したとしても、スキーを引っ掛けられ転倒する虞が十分にあったものであるから…被告において、当日、スキーヤーが、わざわざ右状態のゲレンデに進入し、しかも、右ゲレンデを、必ずしもスピードコントロールの技術が十分とはいえないスキーヤーが、ノンストップの直滑降で滑走し、下端の雪道をも突っ走り、崖状の斜面を飛び越える状態でスカイグラウンドの平面まで滑降するといったことまでも予想し、右のごときスキーヤーの生命身体の安全を確保し、危険の生ずることを防止するため、本件ゲレンデの上端に進入禁止措置を講ずべきであったと要求することは、無理を強いるものといわざるを得ない。したがって、被告につき、本件事故当時、本件ゲレンデへの進入禁止措置が講じられていなかったとしても、土地の工作物の設置、保存(管理)に瑕疵があった、あるいは、本件事故防止のための注意義務の懈怠があった、あるいは、契約上の安全配慮義務の不履行があったとまでは認めることができない。…そうすると、本件事故は、専らX自身の過失によって生じたものといわざるを得ない」と判断してスキー場経営者の責任を否定しています。

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